2017年9月14日(木)に匠塾*1に参加してきました*2。
私は「匠Methodと他の方法論」というテーマのチーム(通称ヘンタイチーム*3)に参加しました。
Photo by 【静岡県 駿河湾】、経済産業省、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示4.0 国際
匠Method以外の方法論
匠Method以外の方法論として、以下を検討しました。
- カスタマー・ジャーニー・マップ
- ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)
- ピクト図解
下図に、検討した内容の全体像を示します。
カスタマージャーニーマップ
カスタマージャーニーマップとは、顧客がサイトなどで商品やサービスを購入・使用するプロセスの各フェーズにおける、行動、思考、感情などを時系列に沿って視覚的に表現する方法です。
匠Methodとカスタマージャーニーマップの連携
チームでは、匠Methodと一緒に使う場合、Howの手探りで使えるのではという話になりました。
Howの手探りとは、アイデアの実現手段を具体的にイメージすることで、描いた価値の実現性を検証することです。
匠Methodの価値分析モデルや価値デザインモデルでは、どちらかというと感性で価値を描きます。
R&D的な要素の大きいプロジェクトほど想像と現実が乖離してしまい、実現性が乏しくなりがちです。
カスタマージャーニーマップで、価値が実現される手段や利用シーンを具体的にイメージすることで、描いた価値が絵に描いた餅になるリスクを軽減することができます。
(参考)カスタマージャーニーマップの事例
参考までに、カスタマージャーニーマップを使っている事例として、書籍『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』を紹介します。
第2部「デジタル経済におけるマーケティングの新しいフレームワーク」第5章「新しいカスタマージャーニー」で、デジタルメディアで顧客が購入に到るまでのプロセス(5A:認知・訴求、調査、行動、推奨)や、ブランディング、KPIやデジタルメディアのカスタマージャーニーの類型化など、デジタルマーケティングのスキルを磨くのに役立つ理論が説明されています。
ビジネス・モデル・キャンパス(BMC)
ビジネス・モデル・キャンパス(以下BMC)とは書籍『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』で紹介された、ビジネスモデルを図式化するためのフレームワークです。
BMCは下図のように、9つのブロックから構成されます。
それぞれのブロックについての説明は下図か、書籍『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』を参照してください。
またBMCと併用する「バリュー・プロポジション・キャンバス(VPC)」は、顧客の仕事やペイン、ゲインをリストアップし、価値提案(Value Proposition)と対象顧客を導き出す方法論ですが、詳細な説明は今回は省略します。興味のある方は、以下の書籍を参照してください。
匠MethodとBMCの連携
チームでは、匠MethodとBMCを一緒に使う場合、以下の2点で連携できるのではないかという話になりました。
- 匠Methodで描いたプロジェクトが、ビジネスとして成り立つかを検証する
- BMC上でさらなるイノベーションを検討し、匠Methodのモデルにアイデアを反映する
# ビジネスとして成り立つかを検証
匠MethodのモデルからBMCの各ブロックに該当する内容を記載し、アイデアを検証します。
匠Methodでは、価値提案、パートナー、顧客セグメントは重点的に練られる傾向にあります。
主要活動、リソース、顧客との関係、チャネル、コスト構造、収入の流れを見直してみると良いでしょう*4。
# BMC上でさらなるイノベーションを検討し、匠Methodのモデルにアイデアを反映する
書籍『ビジネスモデル・ジェネレーション』では「イノベーションの震源地」といって、下図のように9つの各ブロックを起点として、イノベーションを起こす考え方を紹介しています。
匠MethodのアイデアをBMCに落としこみ、「イノベーションの震源地」で得たアイデアを匠Methodのモデルに反映すると良いでしょう。
それぞれの詳しい内容は、書籍『ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書』を参照してください。
イノベーションの震源地と類似する内容としては、書籍『ビジネスモデル・イノベーション ブレークスルーを起こすフレームワーク10』も参考になります。
利益モデル、ネットワーク、組織構造、プロセス、製品性能、製品システム、サービス、チャネル、ブランド、顧客エンゲージメントの10のタイプのイノベーションやその事例について説明されています。
ピクト図解
ピクト図解は、ビジネスモデルを見える化する手法です。
ビジネスを「モノとカネの交換」と割り切り、ビジネスの骨格を成す要素の3W1H(Who「誰が」、Whom「誰に」、What「何を」、How Much「いくらで」)を、簡単なシンボル記号(ピクトグラム)を用いて、関係性を描きます。
詳細は、ピクト図解考案者板橋悟さんによるWeb記事や、以下の書籍を参照してください。
匠Methodとピクト図解の連携
チームでは、匠Methodとピクト図解を一緒に使う場合、以下の2点で連携できるのではないかという話になりました。
# 価値交換の検証
ピクト図解では、製品・サービスとお金の交換を明示的に見える化します。
見える化することにより、提供する製品・サービスの価値がお金に交換されるキャッシュポイントを確認し、収益が上がるかどうかを検討しやすくなります。
# ビジネス戦略の展開
ピクト使いではタイムラインという概念があり、顧客をどのように拡げ、ビジネスをどのように展開していくかを見える化できます。
見える化することにより、ビジネスをどこにどのような順番で展開していくかというビジネス戦略を検討しやすくなります。
こだわるよりも融合する
今回、匠Methodと他の方法論について考えてみました。
チームでは、1つの方法論にこだわるよりも、融合して適材適所で使ったほうが、さまざまな視点が得られ、さらに発想が広がるという話になりました。
適材適所で「今回はこの方法でやってみよう」などとやってみるのが良いでしょう。
匠塾での気づき(各チーム)
各チームの振り返り発表や、懇親会でうまれたトピックをまとめておきます。
アイデアのもとをぶち込む力
特に議論の序盤で話が膠着しているときに、チームの発想が広がったり、場が活性化する呼び水となる話を提供できる力。テーマに関連する事例などを伝えることにより、チームに事例への共感が生まれると、新しいアイデアが生まれ、話がスムーズに進むことがある。(事例→共感→アイデア)
未来のステークホルダーと未来の価値を考える
アイデアがいまいち新意識にシフトできないときは、価値分析モデルで、未来のステークホルダーと未来の価値を考えると、ジャンプした新しい発想が生まれることがある
価値分析モデルの「目的」はアクセルとブレーキのバランスが必要
たとえば、アクセルは「新機能開発」、ブレーキは「品質向上への取り組み」など
価値分析モデルの「目的」(下心のレイヤー)は論理的である
- 世の中の構造・流れには必ず弱点がある。完璧なものはない
- 弱点があるところに匠Methodを使うと効果的
- 人間=進歩しない動物。必ず弱点がある。モノは進化しているが、人そのものは変化していない
最後に
ビジネスの方法論は、世の中にさまざま存在します。
匠Method開発者の萩本順三さんは「他の方法論は見ない(ちら見程度)」とおっしゃってますが、それは自分の方法論やメソッドをつくりだすときの話です。
他の方法論に触れることにより、自分自身の感覚が研ぎ澄まされず、ありふれたものになってしまうことがあるからです。
基本的には、書籍などで多くの知識にふれ、さまざまな方法論を知識として身につけることで、以下のようなメリットが得られます。
- ものごとを捉える「視点」を、複数得ることができる
- 複数学ぶことにより、多角的な視点でものごとを見られるようになる
- 結果、ものごとをみるための引き出しが増える
しかし一方で、方法論ばかり議論し、実践しないと「学問のための知識」になり、いざという時に役立ちません。
実践することで学んだことは「行動のための知識」になります。
さらに知識に経験が加わることによって、「一般的な知識」はその人の「センス」に変化します。
そういった意味で、匠塾は匠Methodの実践を気軽に疑似体験できる絶好の場です。
実践の場でいきなり匠Methodを使う前に、匠塾に何回か参加することをおすすめします。
※匠塾は招待制の勉強会です。匠Methodに興味があり、匠塾に参加してみたい人は、私にFBメッセージでお声がけください。
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