本記事は、匠塾 Advent Calendar 2021の12/23の記事です。
プロジェクト(仕事)の目的は、価値を届けること
2021年8月にPMBOK(Project Management Body of Knowledge)の第7版がリリースされました。第6版までは「成果物を届けること」が主目的であったのに対し、第7版は「価値を届けること」が主目的になりました。
この変更は、予測型(PMBOKでは第6版まで)から適応型(同第7版)への変化とも言われています。
「予測型」は、「あらかじめ決められたとおり(予測したとおり)に仕事をしていれば価値が生まれる」という前提に立っています。予測型の開発では、その前提のもとに「決められたことを、しっかりやり遂げること=成果物を届けること」にフォーカスします。
「適応型」は、「あらかじめ決められたとおり(予測したとおり)に仕事をしても価値が生まれない」という前提に立っています。適応型の開発では、その前提のもとに「状況に適応して行動し、価値を生み出すこと」にフォーカスします。
ソフトウェアエンジニアの仕事で言えば「ソフトウェアを作ることが仕事」から「価値を創ることが仕事」になったといえるでしょう。
PMBOKの第7版の変更点については、以下の記事が参考になります。
note.com
「価値」を明確化する匠Method
「価値を届けること」を目指して皆で仕事をするときに、目指す対象が曖昧であれば、開発プロジェクトは迷走してしまいます。目指す対象とは価値のことです。
一方で価値を明確にしておけば、その実現のために各自で考え動き出すことができます。
価値を表現し明確化する方法として有効なのが、匠Methodです。*1
匠Methodでは、価値を表層的価値と深層的価値という2つの価値で表現します。
表層的価値とは、製品やサービスを使うことによって得られる機能性やデザイン性などの価値です。価値といわれて思い浮かべるのは、この価値でしょう。
深層的価値とは、自分たちの内面にもつ価値です。一般的にストーリーとして表現され、ビジョン、意志、価値観などで表されます。
匠Methodでは、表層的価値を価値分析モデル、深層的価値を価値デザインモデルという図で表現することで、価値をカタチにします。
※各モデルについては以下のスライドを参照してください。(価値分析モデルは、P36、価値デザインモデルはP39)
speakerdeck.com
匠Methodの価値のモデル(価値分析モデル、価値デザインモデル)を、開発のスタート時点でつくることで、目指すべきものが明確化されます。
もちろん、プロジェクトのスタート時点でつくった価値のモデルも仮説でしかありません。
ソフトウェアをリリースし、使用されることで新たな価値が見えてきます。
ソフトウェアを使用した学びの中から、価値のモデルを洗練させていくことが必要です。
ビジネスでの開発に求められる仮説検証サイクル
ビジネスでの開発では、仮説検証のサイクルが求められます。*2
開発のスタート地点で、このようなものをつくればうまくいくという仮説をカタチにして人に見せる必要があります。
なぜなら、仮説も無しに企業が人員をアサインすることはほぼ無いからです。「未知のジャンルなので、とにかくやってみよう」という場面でも、最低限の仮説は求められるでしょう。
仮説を立てるときの注意点としては、頭でっかちにならないことです。
頭でっかちにならないためには、仮説をスピーディーにつくることです。
匠Methodの価値のモデルはシンプルなので、慣れれば数時間で価値の仮説を作成できます。
価値のモデルがうまくつくれないのであれば、そのアイデアで進めても、価値は生まれないかもしれません。
まとめ
「価値を届けること」を目指して皆で仕事をするときに、匠Methodで「価値」を明確化することが有効です。
また、ビジネスでの開発では仮説検証のサイクルが求められるので、匠Methodで価値の仮説をつくってみるとよいでしょう。
匠Methodについて知りたい方は、以下の書籍を読んでみてください。