2017年11月9日(木)に匠塾*1に参加してきました*2。
私は「良いビジョンとは?」というテーマのチーム(通称ヘンタイチーム*3)に参加しました。
テーマの背景・目的
匠Methodの価値デザインモデルでは、プロジェクトのビジョンを設定します。
「ビジョン」は抽象的な概念で、かつ似たような言葉(ミッション、理念、コンセプト、目標、目的 etc..)も多いため、人によって「ビジョン」という言葉に対するイメージが異なることがあります。
そこで「ビジョン」について、ある一定の指針をもっておくことで、匠Methodのセッションで議論をしやすくすることを目的としました。
よいビジョンとは
最終的に上記の図にまとまりました。
話のなかで「ビジョンは社会(おおやけ)への視点を持たせることが重要」ということになりました。
そのときは皆納得という雰囲気だったので理由については話しませんでしたが、あとで私なりに理由を考えてみました。
ビジョンに社会への視点を持たせる理由
何らかのサービスや価値を提供し、売上や報酬などの対価が返ってくるのは社会からである。
→ 売上や報酬を得たかったら、対価が返ってくる対象である社会に対する視点をもてば提供する価値を効果的に定めることができる→提供する価値を的確に定められれば、そこへ向けて邁進しやすくなり実現しやすくなる
社会への大義を掲げると、応援者、支援者、仲間などの同志が集まりやすくなり、実現しやすくなる
社会に提供する価値とそれによってもたらされる世界は「なぜそれをするのか?(Why)」への明快な回答になる。人はまず感情をもとに直感的に決断し、そのあとに合理的に納得する。大義をもとにしたWhyは人の感情に訴え、What(製品の機能、スペック)は、合理性に訴える。人はWhatを買うのではなく、Whyを買う。Whyを明快にした製品やサービスは人々から支持を得て購入してもらいやすくなる(参考書籍: WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う)
- 人は社会への大義や大志をもつと、気力が生まれ、行動力が増す。行動力が増した結果、成功する可能性が高まる
「社会のため」という視点をもつのは、青くさい、照れくさいと感じる人もいると思います。自分に大それたことができるのかという謙遜の気持ちもあると思います。また、自分のことで精一杯、社会のことを考える余裕はないという人もいるでしょう。
しかし、社会のためという視点を持つことは、上記の太字に示したように、結果としてサービスや製品を買ってくれる人が多くなるなど、自分たちの成功の可能性を高めることにつながります。
「100%社会のため」と本気で思える人はそれで良いと思いますが、そうではない人は「社会のため」を51「自分のため」49くらいの気持ちを持つくらいのほうが、バランスが良いかもしれません(匠Methodでは「価値のバランス」といいます)*4。社会に目を向けながらも、自分たちのためにもなるように考えられる強かさ(したたかさ)は仕事やビジネスの場面では持ち合わせてもよいでしょう。ただし50%を超えて「自分・自分たち」となると急に鬱陶しく感じられますので注意しましょう。バランスが重要です。
良いビジョンとは(チェックポイント)
上記の図から導き出したビジョンのチェックポイントは以下のとおりです。
- 社会(おおやけ)に視点があるか?
- 対象のドメインが明確か?
- 価値の提供の手段が明確か?
- 提供した価値によって、ドメインが価値を得る状態になっているか?
*5。
参考資料
高崎さんのスライド
上記の図では織田信長を例としていますが、これは匠塾長の高崎さんが以前発表した資料を参考にしました。
価値デザインモデルについてとても分かりやすく説明されてますので、掲載しておきます*6。
マインドマップ
上記の図は、当初マインドマップで議論していたものを図にまとめたものです。図に掲載されていない要素がマインドマップにあります。後で役立つかもしれないので、掲載しておきます。
他チームからの学び
他の3チームは「12月の匠塾LT大会の企画」というテーマに取り組みました。
アイデアがどのようなことをきっかけに広がっていったかという共有が参考になりました。
- LTで話す人、LTを聞く人というステークホルダー以外にも、運営者やSNSで告知を見ている人(参加者以外)という他のステークホルダーを考えることで、視野が広がった
- 「嬉しい」が少ないステークホルダーが出てきた時に「せっかくだから全員にとって良いことをしたい」「全員にとって良い状態とは?」と考えたら、頭が切り替わり、アイデアが広がっていった
- 「全員にとって良い」という切り口のもと「ワールドカフェ形式」というアイデア(How)が出た。そこからアイデアが広がった(Howからの突き上げ)
匠Methodのセッションの序盤ではアイデアがなかなか出ないことはしばしばあります。
それが、あることをきっかけにアイデアが広がっていく瞬間があります。
そのような呼び水となる考え方や問いかけ、アイデアが広がり始めた瞬間の雰囲気を経験しておくことは、実践の場面でとても役立ちます。
自分と社会という2つの視点を持つ
今回の「良いビジョンとは?」というテーマ設定は、匠Business Placeの萩本さん、田中さんと話していたときに生まれました。
萩本さんが「自分への視点、社会への視点という2つの視点を行ったり来たりしながら同時に持つ必要がある」という話をしていたときに、田中さんが「そう考えると"社会人"というのはできた言葉ですね」と言い出したのがきっかけでした。
「自分だけに視点があるのではなく、社会に対して視点をもってこそ社会人ですね」などと話しながら、WikiPediaで、社会人を調べたところ、以下のように書かれていました。
社会人(しゃかいじん)は、社会に参加し、その中で自身の役割を担い生きる人のことである。 一般的には学生は除外される。 ただし一部の学生も社会人と呼ばれる場合がある。 日本語以外の諸外国語では日本で言うところの『社会人』をさす言葉はほとんど見られない。 たとえば英語ではworker(労働者)やadult(成人)、citizen(市民)という単語はあるが、日本語の『社会人』にあたる単語・表現はなく、最も近い言語では『participant in civil society』。
なんと「社会人」という言葉は、日本語特有ということでした。
"『社会に目を向けた人=社会人』とは素晴らしいね、日本特有の概念として広げられないか"という話になり、そのようなことは匠Methodの価値デザインモデル のビジョンに記述することだろうということで、今回の匠塾のテーマになりました。
最後に
「人は自分がおもったような人物になる」といわれます。人だけではなく、チームや製品、サービスも掲げたビジョンの方向に知らぬうちに向かっていきます。日々は選択の連続なので、ビジョンの方向に向かうよう選択を繰り返した結果そのようになるのでしょう。
匠Methodを使い、社会への視点を踏まえた魅力的なビジョンを持つ人や製品・サービス(=ビジョナリーな人、製品・サービス)が増えれば、それだけ社会も良い方向に変化していくのではないでしょうか。
※匠塾は招待制の勉強会です。匠Methodに興味があり、匠塾に参加してみたい人は、私にFBメッセージでお声がけください。
匠Methodについて書かれた書籍はこちら
匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜
- 作者: 萩本順三
- 出版社/メーカー: 匠BusinessPlace出版
- 発売日: 2016/12/24
- メディア: Kindle版
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*1:毎月開催されている招待制の匠メソッドを学ぶ会です。株式会社アクティアCOO 高崎健太郎さんを塾長とする有志によって開催されています
*2:会場は前回に引き続き、NTTコムウェアさん(品川)でした。
*3:固定的にテーマを構えるのではなく、議論したいテーマを自由に見つけて、それに応じて態を変えるという意味で「ヘンタイ」。異常という意味の「変態」ではない
*4:社会を51、自分を49なのは、自分が51以上になると知らぬうちに私利私欲に走ってしまう可能性があり、50:50では判断がブレる可能性があるからです
*5:ザ・ビジョン 進むべき道は見えているかという書籍にもチェックポイントが掲載されていたので、参考のために掲載しておきます。
- そのビジョンは、自分たちの使命をはっきりさせてくれるか
- そのビジョンは、日々の決断を正しく行なっていくための指針になりうるか
- そのビジョンは、めざすべき未来を目に見えるような形で描いているか
- そのビジョンには永続性があるか
- そのビジョンには、ライバルに勝つというだけではない、何か崇高なものがあるか
*6:2017年11月12日現在、「価値デザインモデル」で、Google のSEOランキング1位です。