匠道場*1の第ニ部は「二元論」で匠Methodを説明するというテーマでした。
第一部はこちらです。
萩本順三さんの資料は以下です。
二元論
世界や事物の根本的な原理を背反する2つの概念で説明する。
1. 表現(Design)-活動(Action)
暗黙知
意志
当事者たちの想い、自信と誇り、語りの力、生きがい・やりがい・社会的責任
形式知
人の考えはカタチにしなければ伝わらない。
表現
(匠Method:ステークホルダ、価値デザイン、価値分析):デザイン思考
活動
(匠Method:要求分析ツリー、ビジネスコンテキストフロー、ゴール記述モデル):システム思考
参考情報
表現/活動のデザインの説明は、BizZineの連載「意志をブランドにして伝えるArchBRANDING」の第二回『「企業意志」を起点に魅力的なブランドを作る「ArchBRANDING」』のP3に説明がある(翔泳社IDの登録必要あり)。
個人的メモ
プロジェクトが目指す方向について、ビジョンをつくる「ビジョン構築力」がこれからの時代は求められる。なぜなら、AIやデータを使って何をしたら1から10、1から100にすることは効率的にできるかもしれない。しかし自分たちの感性を活かしながら何を目指していくかを考えたり、0から1を生み出すのはAIの仕事ではなく、人の主な仕事になるからである。(キャッチコピーをつくるのはAI化されるかもしれない:電通のAIコピーライター「AICO」、その実力はいかに?:1度に2万案のクリエイティブを作成。キャッチコピー案をAIがつくり、ABテストが自動で実施されキャッチコピーが決定される。)
- プロジェクトの関係者間の認知はずれていることがしばしばある。言葉やモデルで認知を明示することにより、認知のずれを防ぎ、最短距離で目指す方向に向かうことができる。これは仕事の効率化をはかろうとするなかで最も重要なことである。(第1部の「構造主義」)を参照のこと)
- 参考:ビジョンの考え方:良いビジョンとは
情報が溢れるなかで、自分たちの活動のコアを把握し、短時間(20秒など)で説明できるスキルが求められる
2. ニーズ思考-シーズ思考
ニーズ思考
- 何を必要とされているか
シーズ思考
- 自ら突き上げる価値観
ニーズだけ捉えても、何も生み出せない(アンケート結果をもとに活動を決めるなど)
- 要求分析ツリーでニーズとシーズを結合させる。結合させないとバランスが崩れる
個人的メモ
- なぜ自分たちがその仕事に取り組む必要があるのか?が問われる時代(シーズ思考)
- 「シーズからニーズを描く」
3. 価値ストーリー-プロジェクト目的
価値をデザインする(価値ストーリー:価値記述)→ブランディング
↓(価値を目的につなげる)
↑(目的の価値を検証する)
プロジェクト目的(下心)をデザインする
ニーズとプロジェクト目的(潜在的シーズ)のマッチング(ニーズとシーズの最初のマッチング)
個人的メモ
- 要求分析ツリーで、価値デザインモデルのシーズと、プロジェクト目的(潜在的シーズ)をマッチさせる。目的を潜在的シーズと考えておくと、マッチさせるときのコンフリクトが少なくて済む
- 価値分析モデルで目的を抽出/設定するのはファシリテーターのスキルが求められる場面なので、目的を潜在的シーズと捉えると考えやすい。
4. 現在価値-未来価値
現在価値
- いま現場で問題・課題となっていることを達成しようという認識
未来の価値
- 中長期的に獲得すべき価値を目指す意識
個人的メモ
- 「育てながら勝つ」思考
5. 現意識と新意識
- 未来は2つの観点で思考する
現意識
- 現在の延長で考えた未来価値
新意識
- 新たにビジネスを変える・変わることを前提で考えた未来価値
どのような比率でどのタイミングで新意識を入れ込むか
2〜3割がた新意識を入れる
未来を考える時に、現意識になっていないかを問う
個人的メモ
- 「新意識」はシフトする思考が必要
シフトするには、リニア思考、線形バイアス(現状のまま、未来も進むであろうと予想する人の特性)を排除し、[ブレークした姿をイメージする]
6.7.8 戦略(What)-実現(How)
- 戦略と実現をセットで考えることを基本とする。実現を戦略から切り離して放置しない
- 「戦略と実現の線上にしか価値は存在しない」(匠Think)
WhatとHow:すべてをWhatとHowで説明する(シンプルに考えるため)
- シンプルにするため、Why,Whoは意図的に入れていない
How指向
- 戦略指向:Howの手探り
- How指向:Howからの突き上げ(イノベーション)
- Howのチューニング:業務レベル、ITレベルでHowを試行錯誤する→価値を生み出す
- 手段は貴重。人は手段からスタートしている。それが本質→ Howへのこだわり(エンジニア思考)
個人的メモ
- 最上位のWhat(ビジョン)の中にWhyの要素は包含される
- Whoはステークホルダーモデル、Whom(誰にどのような価値)は価値分析モデル
- エンジニアはHowの専門家。価値を実現するHowを常にウォッチし、活用するスキルを身につけることで価値創造につなげるのがエンジニアの役割
9. 外の価値-内なる活動
Drop
- 外:コンポーネント活用の視点(使う人)
- 内:コンポーネント提供の視点(作る人)
二元論の考え方はオブジェクト指向方法論Dropから始まった。
# (1)ビジネスの視点で開発プロダクトの作業を叩き洗練可
- 外の価値:ビジネス価値・戦略、オペレーション
内なる活動:IT要求、開発
- 要求開発四象限
- 企業デザイン(NDS:要求開発宣言→ArchBrandingにもつながっている)
- 外に宣言する→行動のプレッシャーになる→早く実現する
# (2)見える技から身についている技を叩き洗練化する
外の価値:見せる技→内なる活動:身についている技
- 実装に困っている→ずっとやっている
- 最初に本を書いた時に感じたこと→印象が悪かった→優秀だと思われた(見せかけの印象)
見せる技とはなにか?
- すこしだけToBe寄りの見せる技(今できていないことも含めて書く)
- 身についた技を捨てる(洗練化)
- 内(具体的な技)は流れが変化が速い。外(見せる技)は、流れがゆっくりしている
- ゆっくりな流れのなかで洗練していく(一流に向けて変えていく)
- 自分をブランディングする
# (3)その手段のどんな価値が誰に必要とされているものなのか?
- 外の価値:価値
- 内なる活動:要求、実現
個人的メモ
活動は、人に届いてはじめて価値になる。
- 情報過多の時代にはシンプルな外の価値を明示し、拡げていくマーケティング力は必須である
外の価値は、継続的な内なる活動から溢れ出るものによって形成する
10. ミクロ(自分)-マクロ(社会)
- 「ミクロ・マクロ同一活用の原則」:匠Methodのフィロソフィー
- ミクロもマクロも匠Methodの知識体系のもとに、同じ方法で思考することができる
- プロジェクトデザイン(マクロ)→プロダクトデザイン(ミクロ)
葛飾北斎:円だけでフラクタルに絵を描く→世界の本質を表現
- ミクロ、マクロの原則も同じ
オブジェクト指向のMVCモデルを知った時は本物と感じた(大きいものも小さいものも同じ方法で考えることができる)
キャリアは社会視点をもってデザインするべき
- 志を高めることにより、自分をレベルアップする
- 社会に自分をつなげることによって、自分が引き上がる
- 自分をブランド化する
- 社会視点でビジョンを描く
- 自分、組織、顧客、社会を串刺しにする視点
自分と社会を行ったり来たりする
- AIがつくりあげた社会で良いのか
- 社会を考える時に、自分が問われる
- 相反するものをつなげて、バランスを取る
個人的メモ
- キャリアを描く時に必要な視点:エンジニアのキャリアのその先
参加者からの質問
価値を描いた時に、優先すべきもの、やるべきものがぶつかることがあると思う。そこはどのように考えたら良いか
萩本さんの回答
ファシリテーターの力が問われる
- その場の合意感、納得感を以下につくりだすか
- コタツモデル(ビジネスオーナー、現場担当者、システム開発の立場がお互いに膝を突き合わせて話し合う)がそのためにある
私なりの回答
コタツモデル、その場の合意感、納得感に加えて、以下のように考える。
ステップ1. ステークホルダーへの共感(ステークホルダーの痛み、ステークホルダーの嬉しいこと)をイメージ・把握する
ステップ2. 三方良し、四方良し、五方良しの施策を考える
ステップ3. 各施策の連携で、全体として価値のバランスを取る(全体最適)
ステップ4. 『制御可能で制御価値のあるものから手を付ける』(匠Think)
7つの習慣の関心の輪、影響の輪で考える
- 自分たちが影響を及ぼせて価値を最も生み出せるものから進めていく
- 影響の輪を徐々に拡げていく
戦略思考で考える
- 全てを一度に実現するのではなく、順番に実現していく
例:利益アップを最終的に実現したい場合に、コスト削減をまず実現し、次に売上をアップするというように進める(コスト削減→売上げアップの順が正しいということではない。これは会社の特性による)
コスト削減と売上げアップの両方を同時に狙う「全てが重要」という思考は戦略ではない
全体の感想
書籍のビジョナリー・カンパニーで「ORの抑圧をはねのけ、ANDの才能を活かす」という挿話がある。
「一流の知性と言えるかどうかは、二つの相反する考え方を同時に受け入れながら、それぞれの機能を発揮させる能力があるかどうかで判断される」とし、ビジョナリー・カンパニーは、このANDの才能を持っている企業であると述べられている。
上記のように、匠Methodは、二つの相反する考え方を成り立たせる仕組みが組み込まれているので、匠Methodで思考すれば自然にANDの才能を発揮できるようになるでしょう。
匠Methodについて書かれた書籍はこちら
匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜
- 作者: 萩本順三
- 出版社/メーカー: 匠BusinessPlace出版
- 発売日: 2016/12/24
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