2017年6月8日(木)に匠塾*1に参加しました。
7月の開催のまとめと前後してますが、内容をまとめました。
テーマ
私は、匠メソッドの知見・暗黙知をまとめて形式知にするチーム(通称ヘンタイチーム)に参加しました。
価値デザインモデルのビジョン、コンセプトの導き出し方というテーマに取り組みました。
匠メソッドのビジョン、コンセプトとは
ビジョン
将来の目指す姿、ありたい姿を文章、言葉で表現したもの
コンセプト
ビジョンを実現するための構想。3つあげる
必要なスキル
プロジェクトのビジョン、コンセプトを導き出すには、以下のようなスキルが必要です。
想像力
- プロジェクトメンバーが納得して目指したいと思えるような未来をイメージする力
言葉づくり
- 目指すビジョン・コンセプトを抽象的過ぎず、具体的過ぎず的確に言葉で表現する力
バランス感のあるコンセプトづくり
- 施策・手段検討につながるバランスの良い3つのコンセプトにまとめる力
これらのスキルはファシリテーター・リーダーだけが必要なものではなく、チームで持つべきスキルです。属人性が高く、暗黙知が大きい領域です。
As-Isの把握
ステークホルダーモデルで、ステークホルダーの洗い出し、各ステークホルダーが抱えている問題点をあげていくことによって、現状を把握します。これが最初のステップです。
未来を描くうえで、現状をしっかりと把握しておくことは重要です。
現状を的確に把握しておかないと、いかに理想的な未来を描いたとしても、ふわっとした絵に描いた餅となってしまう可能性があります。
現状を把握せずに、理想的な未来について話しているリーダーを想像してみてください(よほどのカリスマ型リーダーなら別ですが)。
価値デザインモデルまでの進め方
ステークホルダーモデルで現状(AsIs)を把握したあと、価値デザインモデルを作成するまでの進め方は、以下の2パターンがあります。
- (1)価値分析モデル→価値デザインモデル
- (2)価値デザインモデル→価値分析モデル
それぞれの進め方のメリット、デメリットを以下にまとめます。
(1)価値分析モデル→価値デザインモデル
まずは価値分析モデルから始めるパターンです。
メリット
- 施策・手段のアイデアがある程度出ているので、プロジェクト実現のイメージがつきやすい
- 価値分析モデルは手をつけやすいので、話を進めやすい
デメリット
- テーマ・ドメインが大きい場合、ステークホルダーがつかみづらい。スコープが広がりすぎた価値分析モデルになりやすい
(2)価値デザインモデル→価値分析モデル
次に価値デザインモデルから始めるパターンです。
メリット
- 明確な未来像を既にもっている場合や、長い間構想してきたプロジェクトの場合は、ビジョン、コンセプトがまとまりやすい
デメリット
- 詳しくないテーマ・ドメインの場合や、未来のイメージが湧いていない場合は話が停滞しやすい
2つの進め方の共通課題
ビジョン、コンセプトを導き出すには、上記で書いたように「想像力」「言葉づくり」「バランス感のあるコンセプトづくり」というスキルが必要なので、議論が停滞したり迷走する可能性を秘めています。
具体的施策を段階的に抽象化し、 ビジョン・コンセプトを導き出すファシリテーション
ヘンタイチームでは議論の停滞・迷走をなるべく防ぐために進め方をまとめました。
下図は全体像です。
ステップ1 Asisの把握
Asisの把握は上記と同じです。
ステップ2 具体的施策のアイデア出し
現状を把握した上で「やりたいこと、やったほうがよいと思うことは?」という問いで、施策・手段のアイデアをブレストします。
いきなりビジョンやコンセプトを考えるよりも、具体的施策ならアイデアを出しやすいものです。
施策・手段のアイデアを以下の3つの視点で分類すると、さまざまな立場の視座を持てるようになり意外なアイデアが出るかもしれません。
- (1)すぐにやれそうなこと(現場担当者の視点)
- (2)少し頑張ればやれそうなこと(現場リーダーの視点)
- (3)遠い未来にやれそうなこと(経営者の視点)
ここでの施策・手段のアイデアは、後のプロセスの価値分析モデルの手段、要求分析ツリーの業務要求、IT要求、解決策につながってきます。
この段階でアイデアをじっくり出しておくことで、後のプロセスのスピードアップにもつながるという効果もあります。
ステップ3 グループ化、抽象化
ステップ2 で出たアイデアをグループ化したり、グループ間を関連付けたりします。 その上で各グループにタイトル・見出しをつけていきます(言葉づくり)。ステップ2の発散から収束していく段階に入りますが、グループ化、抽象化することで全体が見えてくると新しいアイデアが生まれてくるものです。新しいアイデアが出たら、それも追加していきましょう。
ビジョンやコンセプトの言葉づくりをいきなり始めるよりも、具体的な施策・手段をもとにしているので、言葉づくりの難易度が下がるというメリットがあります。
ステップ4 コンセプト・ビジョンの導出
ステップ3 で徐々に抽象化したものを「やりたいこと・実現したいことはどういうこと?」という問いのもと、ビジョン、コンセプトの言葉づくりをします。
すぐ下の抽象度まで言葉づくりが出来ていれば、ビジョン、コンセプトの言葉づくりもやりやすいのではないでしょうか。
ショック療法(新意識へのシフト)
目の前の問題から見えている施策・手段を抽象化し、そこからビジョンを描いても、現在の延長線上にあるビジョンになってしまう可能性があります。
思考をジャンプし、新意識にシフトしたビジョンを打ち出すには、上記のステップ2、ステップ3、ステップ4 のそれぞれで、新意識へシフトするためのショック療法を施すのが良いでしょう。
たとえば、以下のような問いを発してみると良いでしょう。
- 技術ドリブンで、Howからの突き上げはできないか?
- 現意識の延長で考えていないか?
- 自分たちの強み・パーソナリティと社会的な機会を活かせているか
- やろうとしていることは他社にとって模倣しにくいか?
うまくいかないファシリテーション
最後に、うまくいかないファシリテーションについて、2つのパターンをあげておきます。
強引な(専制的)ファシリテーション
- ファシリテーターが「結果イメージの予測」をした方向に議論を強引に持っていってしまう
- メンバーのアイデアをファシリテーターの判断のもとに切り捨ててしまう
このファシリテーションでは、メンバーが置いてきぼりになり、納得感がない得られないことがしばしばあります。
ファシリテーターは、結果を出そうと力んだり、急いだりするよりも、より良いものが創造される場づくりを重視すると良いでしょう。
問題点→解決策実行の進め方
このファシリテーションは、以下のように進めていきます。
- (1)現状の問題点を把握
- (2)問題点を解消するための施策をブレスト
- (3)施策に優先度をつける
- (4)優先度の高いものから実行
この進めかたでは、問題点を解消したとしても、根本的な状況は変わらないことが多いでしょう。
それは、目の前のひとつひとつの問題に小手先で対応したとしても、部分最適にしかならず、全体最適につながらないことが多いからです。
全体最適につなげるには、新意識にシフトしたビジョンを描き、それに基いて行動することです。
まとめ
今回書いた、ビジョン、コンセプトを導き出すまでのファシリーテションに正解はありません。
対象ドメインやプロジェクトメンバーによって、変わってくることでしょう。
今回メインに書いた「具体的施策を段階的に抽象化し、 ビジョン・コンセプトを導き出すファシリテーション」は、匠道場*2の課題での経験をもとに、ヘンタイチームで議論された内容が書かれていますが、これはファシリーテートの1パターンでしかありません。
課題の実例については、いずれ書きたいと思います。
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