匠Methodの書籍の第2弾となるビジネス価値を創出する「匠Method」活用法が2018年4月20日に発売されました。
- 作者: 萩本順三
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2018/04/20
- メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
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本書の構成
本書は以下の構成です。
1章:匠Methodを生み出す過程
匠Methodの開発者である萩本順三さんが匠Methodにたどり着くまでにどのように過程を歩んできたのかが語られている
2〜4章:匠Methodの基本的説明
モデルのサンプルを用いながら匠Methodの基本について説明
5〜8章:匠Methodを拡張したArchBRANDINGというブランディングアプローチの説明
2016年12月に出版された匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜との主な構成の違いは、匠Methodに至るまでの過程と、ブランディングについて重点的に説明されていることです。
2〜4章で匠Methodの基本モデルについて分かりやすく説明されていますが、匠Methodについてさらに知りたい人は、前著の匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜を読まれることをおすすめします。
匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜
- 作者: 萩本順三
- 出版社/メーカー: 匠BusinessPlace出版
- 発売日: 2017/01/20
- メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
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匠Methodに至るまでの道
萩本さんは27歳でソフトウェアエンジニアのキャリアをスタートし「複雑多様化した社会やビジネスをまとめてより良い方向へ導くための手法をつくるべきである」という使命を持ち、そのための方法論(メソッド)をつくりあげてきました。
萩本さんはソフトウェア工学を学ぶ中でオブジェクト指向に出会いました。そしてオブジェクト指向をベースに人の認知・心、戦略、価値を見える化しカタチにする方向へと方法論(メソッド)を発展させていきます。その取り組みは20年以上の実践や研究の歳月を経て進化し、匠Methodとして実を結んでいます。
このような匠Methodの成り立ちや背景を知ることで、匠Methodを構成する要素を表面的ではなく立体的に理解し、活用できるようになるでしょう。
ArchBRANDINGというブランディング手法
本書の特徴の2つ目は匠Methodを拡張したArchBRANDINGというブランディング・アプローチの説明に重点が置かれている点です。
ブランドを高めるメリット
製品や会社、そして個人にもブランドがあったほうが何かとメリットがあることはぼんやりと分かっていることでしょう。ブランドを高めるメリットは何でしょうか。
まず、ブランド力がない場合が以下の図です。
ブランドがないので、外向きに力を使い働きかける必要があり、活動に必要な、人、モノ、カネ、情報を得るためにお金をかけたり、時間を使わざるを得ない状況です。また価格も下げざるを得ないかもしれません。
この状態で活動を続けていくと、いつかは力尽きてしまうかもしれません。
一方、以下の図はブランド力が高い場合です。
活動に必要な、人、モノ、カネ、情報が自然と集まってくる状態です。自然に集まってくるので内部にお金や時間を使うことができます。
このような状態で、お金やリソースをかけて外にアプローチしていくと相乗効果でブランドが広がっていくことでしょう。
ブランドをつくるには
上記のような状態が組織や製品・サービス、そして個人にとって理想的ですが、どのようにしてブランドをつくりあげればよいのでしょうか。
まずはホームページやランディングページをつくったり、ブランドのロゴをつくるかもしれません。
また、日々の開発やマーケティング、カスタマーサポートなどの活動はブランド力を高めることに直結しているでしょうか。
このようにブランドをつくるといっても、なかなか方法が思い浮かびません。
匠Methodを拡張したArchBRANDINGは、ブランディングのためのプロセスを提示しています。
ArchBRANDINGでは、ブランディングに必要な要素として、以下の3つを上げています。
Concept(意志):脳
企業や組織の関係者で共有化されて、文章や体系として「見える化」されている考え
Design(表現):顔
ブランドの価値を示す言葉や形状、表出された具体的な考え
Action(活動):手足
ブランド戦略や企業戦略を「見える化」していく具体的な活動
そしてこれらをつなぐのが、ArchBRANDING:神経・血管です。
本書では、1つの人格をもったヒトのように一貫したブランディング戦略を進めるための考え方とプロセスを説明しています。
意志のあるブランドの威力
本書では「プロダクトのブランディングサイクル」として、以下の3つをあげています。
- 宣言型ブランディング(自分たちの意志をブランディング:企画・開発期)
- ユーザー体験型ブランディング(ユーザー体験をストーリーとしてブランディング:発展期)
- 活動蓄積型ブランディング(自分たちの強みとする活動をブランディング:成熟期)
書籍「リーンブランディング」の著者は、多くの優れたスタートアップがブランディングできずに世の中に知られず廃れていったのと同時に「単純なMVP(実用最小限の製品)しかなくても深い意味の込められたブランド」をもったスタートアップが注目を集め、事業を軌道に乗せて成功した事例を数多く見たといいます。
「単純なMVP(実用最小限の製品)しかなくても深い意味の込められたブランド」をもったスタートアップとは、ここでいう「宣言型ブランディング」をしたスタートアップであるといえるでしょう*1。
本書では、自動車業界のコンセプトカーの事例をもとに「宣言型ブランディング」の重要性について説明しています。
「匠Method活用法」とあわせて読みたい
リーンブランディング ―リーンスタートアップによるブランド構築 (THE LEAN SERIES)
- 作者: ローラ・ブッシェ,堤孝志,飯野将人,エリック・リース,児島修
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2016/08/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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私の匠Method活用について
私はconnpassやPyQなどの製品開発や、受託開発の企画フェーズ、そして自身のキャリアデザインに匠Methodを活用しています。
匠Methodを学び始めたきっかけは、2012年4月27日のBPStudy#57で著者の萩本順三さんにお話いただいたとき*2に、匠Methodを知ったことです。
いままで製品企画についてさまざまな手法を調べましたが、匠Methodはアイデアをカタチにするという点で唯一無二の手法であると確信しています。
場合に応じて他の手法*3も使いますがそれは部分的な使い方であり、プロジェクトのアーキテクチャー、羅針盤として機能しているのは匠Methodで作成したモデルです。
匠Methodを学ぶ場である匠道場*4には、2013年1月から毎月参加し、継続して匠Methodを学んでいます。
私は匠道場が2018年4月までに64回されたうち、63回参加しています*5。
この参加率の高さから、私の匠Methodへの確信は伝わると思います。
また、カタチにするという点での手法の確かさは、オブジェクト指向をベースにシステム開発から発展してきた匠Methodの起源に由来するものだと思います。
まとめ
よい製品やサービスをつくっただけでは世の中に広まりません。それは会社などの組織や人においても同様です。
良いものをつくった人、そしてチームにはその価値を世の中に広く伝え、その価値で良い方向に世界を変えていく使命があります。
そのときに核となるのがブランディングです。
匠Methodでは「内の価値と外の価値の両立が重要」という考え方があります。
よいものをつくった段階は「内の価値」ができた段階です。
匠Method(ArchBRANDING)によって「外の価値=見せる価値」を見える化し、活動までつなげていくことで「価値を世の中に広め、良い方向に世界を変えていく」使命を果たせるようになるのではないでしょうか。
そのようなブランディングをしたいチーム、組織、個人に本書をおすすめします。
- 作者: 萩本順三
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2018/04/20
- メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
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あわせて読みたい
匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜
- 作者: 萩本順三
- 出版社/メーカー: 匠BusinessPlace出版
- 発売日: 2017/01/20
- メディア: オンデマンド (ペーパーバック)
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*1:「宣言」するタイミングですが、MVP(実用最小限の製品)が出来たくらいのタイミングが良いでしょう。それより早いとまだ方向性も定まっていないことも多いからです。
*2:直接の知り合いではありませんでしたが、浅見智晴さんにご紹介いただき、お話いただきました。依頼させていただいたのは、Publickeyに掲載された記事「Top DevOps / アジャイル開発 特許庁の基幹システムはなぜ失敗したのか。元内閣官房GPMO補佐官、萩本順三氏の述懐」を読んだのがきっかけです。
*3:ビジネスモデルキャンバス、バリュープロポジションデザイン、カスタマージャーニー、UXブループリントなど
*4:匠道場とは、匠Methodのライセンスを購入している企業の社員が参加できる匠Methodを学ぶ場。2013年1月から毎月1回開催されている
*5:不参加は2013年3月の第3回開催のみ