2018年2月2日(金) に開催された「匠の冬祭り2018 in 関西」に東京からサテライト枠で参加しました。
第ニ部は、三菱電機の細谷さん、権藤さんの「開発現場を漸進的に改善する」がテーマでした。 (その1はこちら)
以下はまとめです。
改善活動の悩み
- 現場が協力してくれない、メンバー乗り気ではない、否定的。
- 活動が定着しない、元のやり方にすぐに戻る
- やめることができずに仕方なくやっている
など
チェンジマネジメント
そんなときは、チェンジマネジメントを学ぶ
変化への恐れ
変化に恐れを抱くのはなぜか?
変化はバランスを崩す要因となり得る→バランスが崩れるのが怖くなる
変化の恐れをコントロールする
- 変化への恐れに着目しコントロールすることが重要
- Fearless Change:アイデアを広める方法をパタン・ランゲージとしてまとめた書籍
Fearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターン
- 作者: Mary Lynn Manns,Linda Rising,川口恭伸,木村卓央,高江洲睦,高橋一貴,中込大祐,安井力,山口鉄平,角征典
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2014/01/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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改善活動の形態
- チームの一員:自分の作業を改善、自分の所属するチームを改善(ボトムアップ)
- リーダー・マネージャー:自分の組織を改善するトップダウン
- 組織外の支援者:他の組織の改善を支援するトップダウン(不安定)
チームの一員としての改善
試行錯誤の回転を早く、最初から大きく実施しない。うまくいってる感を出す
進め方
※()内の番号:Fearless Changeのパターン番号
- 1.やってみる(17)
- 2.ステップバイステップ(3)
- 3.小さな成功(2)
- 4.振返りの時間(5)
仲間を巻き込む
- 雑談等の会話で反応を見る
- 興味を持ったらデモしてみせる
- 反応があったら一緒にやってみる
進め方
- 1.エバンジェリスト(1)
- 2.イノベータ(16)
- 3.個人的接触(20)
- 4.やってみる(17)
2,3人を巻き込めたらチームに広げるチャンス
変化への恐れへの壁
- 変化の恐れを克服するには、効果を出すだけでは充分ではない
効果を出すだけではなく取り組みについて組織でアピールする
- チーム内外に対して効果を様々な機会でアピールする
- 定例会のような場で取り組みを何度も報告
- チーム外の報告会で発表する
アピールの進め方その1
- 1.勉強会(25)
- 2.体験談の共有(32)
- 3.種を撒く(22)
- 4.達人のレビュー
アピールの進め方その2
- 1.身近な支援者(35)
- 2.定期的な連絡(24)
- 3.便乗(21)
- 4.成功の匂い(40)
アピールの進め方その3
- 1.著名人を招く(27)
- 2.外部のお墨付き(12)
- 3.正式な推進担当者(29)
- 4.感謝を伝える(18)
リーダー・マネージャ:組織を改善する(トップダウン)
基本的な考え方は、チームの一員としての実施と同じ
- 0.予備調査
- 1.やってみる(17)、ステップバイステップ(3)、小さな成功(2)、イノベータ(16)
- 2.振返りの時間(5)
- 3.アーリーアダプター(11)
組織の壁にぶつかる
そんなやり方は認められない→(ここを超えるのが最も難しい)→実績が出ているので良い方法だけど導入は難しい→段階的に導入
組織の壁を超えるのに大事なこと
- 取り組みのアピール
- 信頼貯金
- 相手が信頼している人からのポジティブな評価
組織の壁を超える進め方その1
- 1.個人的な接触(20)
- 2.恐れは無用(46)
- 3.懐疑派代表(44)
組織の壁を超える進め方その2
- 1.便乗(21)
- 2.外部のお墨付き(12)
- 3.達人を味方に(14)
組織外の支援者
支援先が抱える問題や原因を共有しないまま新しい方法を導入してもうまくいかないことが多い
- 目的を共有するために、匠Methodを使っている
- 目的を共有したら手段を提案していく
※使うパターンは、リーダー・マネージャと同じ
事例1:テストプロセスの導入
テストプロセス手法構築時
大学との共同研究として実施
- 著名人を招く(27):
- イノベータ(16)
現場の第一線のメンバーが検討メンバーとして参画
- 正式な推進担当者(29)
手法適用初期段階
テストスキルが高くモチベーションが高いメンバーを支援して適用開始
アーリーアダプタ(11)
成果を社内で定期的に開催される発表会で発表
- 便乗(21)
社外発表(JsSST)
- 外部のお墨付き(12)
手法適用拡大段階
段階的な適用を支援
- ステップバイステップ(3)
エントリ層の適用支援
- 小さな成功(2)
組織の従来からある改善活動目標への取込
- 便乗(21)
事例2:スクラムによる業務改善
施策開始の前段階
- 作業の見える化をテーマ
- 物理的なカンバンを使用
- 三菱社内のカンバンは、教育が行き届いていて、マネージャーが一番上、年次ごとに上からメンバーが順に並ぶ
# パターン
- ステップバイステップ(3)
- 小さな成功(2)
- 便乗(21)
- ふりかえりの時間(5)
施策開始時
- スクラムの研修:社外講師招聘
- スクラムマスタ任命
- 小集団活動のテーマとして継続実施
# パターン
- 著名人を招く(27)
- 正式な推進担当者(29)
- 便乗(21)
- グループのアイデンティティ(13)
施策実施時(当初)
- 小さな成功(2)
- 場所重要(36)
- 空間を演出する
施策実施時(停滞期)
- 身近な支援者(35)
- 正式な推進担当者(29)
施策実施時(停滞期からの脱出)
- 身近な支援者(35)
- 正式な推進担当者(29)
- 協力を求める(6)
外部のお墨付き(12)
- やってみる(17)
施策実施時(定着へ)
- やってみる(17)
- ステップバイステップ(3)
- 小さな成功(2)
- アーリーアダプタ(11)
- 感情を伝える(18)
- 個人的な接触(20)
事例
問題点
組織の支援活動で、原因を共有しないまま、新しい方法を導入しようとして、うまくいかないことが多く発生していた
課題
- 匠Methodによって、支援活動の目的を共有する
- 目的を共有した上で活動内容を具体化・実施→Win-Winの関係を築く
取り組み
ステークホルダー、価値分析モデルを関係者で、それ以外のモデル(価値デザインモデル、要求分析ツリー)は自部門のみで実施(全てをやるのは時間がかかる)
- 関係者全員で支援活動に対する要求の合意ができて、手戻りを削減できた
依頼元の要求の全体像が明確になり、新たな支援活動につなげることができた
課題
- 自部門でモデル作成→依頼元レビュー→修正 に時間がかかった
それぞれがもっている技術領域が異なる
- グループとして期待されていることを、何をするべきかを合意する
- モチベーション向上
感想
なにか新しいものを組織に導入するときには、3つの障害があります。
それは「選べない」「使いこなせない」「維持できない」の3つです。これらの障害があるために、人はその場にとどまり続け、少し変わったとしても元に戻ってしまいます。
今回の発表では、Fearless Change のパターンをもとに、改善活動をどのように組織に導入し、維持していくかという話でした。
話の中でも、組織の従来からある活動に便乗したり、外部のお墨付きを得たり、著名人を招いたりして「出来ている感」を徐々に社内外にアピールし、使いこなせている感を出し、モチベーションを上げ、浸透させ維持していくところが特に参考になりました。
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匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜
- 作者: 萩本順三
- 出版社/メーカー: 匠BusinessPlace出版
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