界隈で話題の「カイゼン・ジャーニー」を読みました。
カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで
- 作者: 市谷聡啓,新井剛
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2018/02/15
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
書籍の概要(ストーリー)
「カイゼン・ジャーニー」の主人公は、江島という20代の若手エンジニア。
忙しく混乱した日々の仕事を懸命にこなす毎日。
そんな開発現場や会社の体制に不満を抱えてはいるものの、状況を変える何かを自分でできているわけではない。
そのような日常から話(ジャーニー:比較的長めの旅行)はスタートします。
社外勉強会での出会いをきっかけに、主人公が行動を起こしていくストーリーです。
おすすめしたい人
- 仕事で成長したいエンジニア
- いまどきのアジャイル開発を学びたい人
- アジャイル開発導入を検討している/取り組んでいる開発プロジェクトのリーダー
- エンジニアの気持ちを知りたい人
- 自社の勉強会を開催している人/開催を検討している人
本書の特徴
「カイゼン・ジャーニー」を読んで感じた特徴を紹介します。
現場あるあるが面白い
プロダクトの開発や受託開発に限らず、システム開発の現場では日々さまざまな問題や事件が起こります。
そのような現場で良く起こることを、飲み会のネタで話したりします。
本書ではそのような既視感のある場面が次々と登場し「あー、あるある」と思いながら読み進めました。
そのような開発現場で発生する問題を主人公の江島がどのように解決していくのか。
それが本書の見どころの一つです。
こういう人いるいるが面白い
本書はストーリー仕立てなので、さまざまな登場人物が登場します。
開発現場にもさまざまな職種な人がいますし、人のタイプや特徴もさまざまです。
本書では「あー、こういう人いるいる」と思えるような人たちが登場します。
自分だったらこのような人たちとどのようにコミュニケーションするだろうとイメージしながら読みました。
アジャイル開発、チーム開発のさまざまなプラクティスを学べる
本書ではアジャイル開発、チーム開発、リーダーシップに必要な手法や考え方がストーリーの中に散りばめられています。
タスクボード、朝会、KPT、事実・意見・対策、重要と緊急のマトリックス、WIP制限(緊急割り込みレーン)、素朴理論と建設的相互作用、学習する組織(氷山モデル)、スクラム、スプリントプランニング、スプリントボード、インセプションデッキ、ゴールデンサークル、組織の成功循環モデル、Working Agreement、ドラッカー風エクササイズ、ファイブフィンガー、スプリントレビュー、クネビンフレームワーク、リファインメント、狩野モデル、むきなおり、星取表(スキルマップ)、モブプログラミング、モブワーク、バリューストリームマッピング、ECRS、カンバン、ポストモーテム、タイムラインふりかえり、感謝のアクティビティ、タックマンモデル、リーダーズインテグレーション、モダンアジャイル、アジャイルな見積もりと計画づくり、プランニングポーカー、リリースプランニング、パーキンソンの法則、CCPM(Critical Chain Project Management)、YWT、スクラム・オブ・スクラム、アーキテクチャーと組織構造(コンウェイの法則)、デイリーカクテルパーティー、ユーザーストーリー、ギャレットの5段階、仮説キャンバス、ユーザーストーリーマッピング、MVP(Minimum Viable Product)、ユーザーインタビュー、SL理論、ハンガーフライト
いまどきのアジャイル開発の考え方、手法、そして現場で役立つ理論が並んでいて、眺めるだけでもワクワクするようなキーワードが並んでいます。
自分の状況と照らしあわせて使えそうな手法や理論をさらに深掘りして調べてみると、いま自分が抱えている問題を解決する糸口になるかもしれません。
上記のプラクティスをストーリーの中で学べるので、活用場面のイメージがつきやすいのも本書の特徴です。
貫かれている価値観:越境
仕事の目的は価値を実現することです。
アジャイル開発もユーザー価値の実現が目的です。
しかしユーザー価値を実現するためにプロジェクトやをスタートしても、目の前の仕事に取り組んでいくと仕事を遂行することに必死になり、視野が狭くなります。
視野が狭くなると、仕事自体が目的化します。
プログラマーでいうと目の前のプログラミングタスクを完遂していれば、自分の仕事はこなしているというように考えることです。
プログラマーの仕事はプログラミングすることではなく、ユーザー価値を実現することです。
価値を実現しないプログラムをいくらつくっても、その仕事には意味がありません。
人の性質として、自分の安全な領域「コンフォートゾーン」をつくり留まろうとします。
コンフォートゾーンの周りには「境界」がうまれます。
この境界内に留まると視野が狭くなり、ユーザー価値を実現する行動から遠のいていきます。
本書のストーリーでは、この「境界」を「越境」するという考え方が貫かれています。
越境するには勇気が必要です。
越境すると一時的な混乱が生まれ、失敗のリスクも高まります。
仕事では一度境界を越境しても、また新たな境界が生まれその境界をまた越境するということの繰り返しです。
主人公の江島が「越境」を繰り返し成長していく姿を、ハラハラしながら読みました。
最後に
3月で仕事が山積みです(今も)。
しかし本書を読み始めるとすぐに次が読みたくなり、一気に読み終わりました。
本書はシステム開発の現場の情景がリアルに描かれていて、かつ最新のアジャイル開発のプラクティスが学べます。
カイゼン・ジャーニーは、エンジニアに限らず、IT、システム開発に関わる人すべてにおすすめの書籍です。