「部下を定時に帰らせて、かつ成果は出さないといけない。どうしたらいいのかな。」
大企業に勤めている高校時代の友人から先日相談されました。
働き方改革の流れで、日本は働く時間を少なくする方向に向かっています。
無意味な残業、もしくは深夜残業や休日出勤をしてまで成果を上げる。
これらが常態化するよりは、働き方改革の流れは望ましいと思います。
一方で、仕事の時間を減らしながら、成果は今までどおりに上げるというような、一見矛盾したことを求められ、皆が悪戦苦闘しているのが、いまの日本の世の中でしょう。
そのような人たち(私も含めて)におすすめしたい書籍が出版されました。
ソニックガーデン社の倉貫義人さんが書いた「管理ゼロで成果は上がる〜見直す・なくす・やめるで組織を変えよう」です。
管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう
- 作者: 倉貫義人
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2019/01/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書をおすすめしたい人
本書は、以下のような人たちにおすすめします。
- 仕事の効率が悪い、時間がかかってしまう人
- 会社から余計な仕事を撲滅したい人
- 自分の会社ならではのビジネスモデルをみつけたい人
- 大きな会社のリーダー、中間管理職
- 中小企業、スタートアップの経営者
- 価値を創り出し、成果を生み出す組織論に関心がある人
このようなひとたちにとって、この書籍で述べられているソニックガーデン社の考え方、経験、取り組みは大きな気づきを得られるでしょう。
※著者の「倉貫さんの」と書かずに「ソニックガーデンの」と書いたのは、ソニックガーデンの皆さんの考え方を倉貫さんが代表して書いているように感じたからです。以降も「ソニックガーデンの」と記載します。
ソニックガーデンがどのようなことに取り組んできたか。
私なりの視点で以下の2点から書きたいとおもいます。
- 捨てる勇気を持ち、時間を手に入れる
- 自分たちらしさを追求し、仕事のパフォーマンスを上げる
捨てる勇気を持ち、時間を手に入れる
「何かを手に入れるためには、何かを捨てなければならない」
昔からいわれる原理原則です。
野球に例えると、元横浜ベイスターズのハマの大魔神こと佐々木主浩投手*1の攻略方法に似ています。
佐々木投手のストレートとフォークボールはどちらも超一級品。
ストレートを狙ってフォークボールが来たら、タイミングを合わせて打てるような球ではありません。
攻略の答えはフォークボールを狙い、ストレートは捨てること(もしくはその逆)。
狙った球種と違うほうが来たら、見逃し三振でごめんなさいする。
それくらいの勇気と割り切りをベンチと選手が持つことで、超一流の投手を攻略できたと、落合博満氏*2が引退後に語っていました。
話は戻り、ソニックガーデンが捨てたもの。
それは、人の管理、組織の階層、人の評価、事業の数字、組織の壁、人材の急募、教育、制度(ルール)、通勤(そしてオフィスまでも捨てた!)などです。
これだけのものを捨てて、ソニックガーデンが手に入れたものは何でしょうか。
それは「価値」を創り出すために使う時間です。
「価値」を創り出すこと以外のムダを捨てた結果、時間を創り出すことに成功したのです。
会社は時間が経つにつれ、価値を創り出すために役立たない仕事、不要な制度などが贅肉のように残り、組織の動きを遅くしてしまいます。
時代の変化は速く、静かに進行します。
そのため長期的に見ると動きが遅い組織は時代の変化についていけず衰退していきます。
そのようなときに「贅肉も役立つことがある」などと言っている場合ではないでしょう。
贅肉のない、筋肉質で俊敏な組織をつくりたいひとにとって、ソニックガーデンの事例、考え方は参考になることでしょう。
自分たちらしさを追求し、仕事のパフォーマンスを上げる
人がパフォーマンスを発揮し、成果を上げる起点は何でしょうか。
それは「自分らしくあること」、そして「人らしくあること」です。
人は自分らしくあること、人らしくあることで、その人本来の能力が発揮できます。
企業は「法人」というように、人格を持ちます。
会社の人格は、そこに集まった人たちによって形成されます。
自分たちの得意なこと、不得意なことは何なのか?
自分たちが大事にしたい価値観は何なのか?
ソニックガーデンでは、創業時に自分たちの価値観を明確にしホームページに掲載したそうです。
その価値観をもとに、以下のように事業を組み立てていきました。
- システムを開発・納品してお金をもらうビジネスモデル(常識)→さまざまな軋轢を生み、積極的に仕事ができない→納品のない受託開発
- 積極的に営業して仕事はとってくるもの(常識・慣習)→自分たちは営業は苦手→顧客を説得する営業をやめる(インバウンドマーケティング)
- 社員数が多い、売上が大きい経済効果が高い会社はすごいという常識→ソニックガーデンで働く人を幸せにすることを優先*3→規模の追求をやめる
人は知らず知らずのうちに他の誰かが考えた、誰かが期待した価値観、常識、慣習に従ってしまうものです。
それに気づかずいると自分らしさを失い、能力や才能を発揮できなくなっていきます。
「自分たちらしさ」を追求したソニックガーデンの考え方は、自分たちがやりたいことはなにか、どのように仕事をしていきたいかを考えたい人たちとって、大いに参考になることでしょう。
最後に:大きな会社にも適用できる考え方、実例なのか
この書籍を読んだ人は「小さい会社だからできるのだろう」と考える人もいるかもしれません。
それはある一面ではたしかです。なぜなら小さい会社は判断を早くしどんどん決断し、変えていけるからです。
しかし、小さい会社でも旧態依然とし、変われない会社はたくさんあります。
本当に大事なことは、組織の大小よりも「変える覚悟があるかどうか」だと思います。
変える覚悟を持てない人は、変えられない言い訳をいくらでも探します。
そのような人にこの書籍は役に立たないでしょう。
しかし、変える覚悟を持てたひとたちにとって、ソニックガーデンが試行錯誤し変化していった様は、参考になるはずです。
- 捨てる勇気を持ち、時間を手に入れる
- 自分たちらしさを追求し、仕事のパフォーマンスを上げる
組織を変えていきたい、みんなが長く幸せに働ける良い組織をつくりたい、自分たちらしく仕事をしたいというひとに、ヒントが満載の書籍です。
ぜひ、手にとってお読みください。