プロ野球2010年のシーズン、中日ドラゴンズの落合監督(当時)は荒木をセカンドからショートに、井端をショートからセカンドにコンバートした。荒木は2004年から6年続けてゴールデングラブ賞を獲得、井端も同じく獲得している。
普通のチームでは、6年も連続で賞をとっている選手を入れ替えることはしないだろう。うまくいかないリスクをわざわざ抱えることになるからである。実際、荒木はショートで20失策。その守備を一部マスコミで酷評された。
それにも関わらずポジションを入れ替えた。
最近、新聞などにコンバートの理由が出ていたが「体でボールで追っていたのが、目で追うようになっていた」からだという。
落合氏の著書「采配」によると、チームの2、3年後の将来、そして荒木、井端の次なる成長への糧のためにコンバートを実施したという。
落合氏も「慣れている安定感を前面に出すか、慣れによる停滞を取り除くか」のどちらをとるで、なかなか踏み切れなかったと話している。
書籍「究極の鍛錬」には、このような配置転換について、「ストレッチジョブ(自己の能力の限界に挑戦することが求められる仕事のこと)への人事ローテーション」として書かれていて、組織に置ける「究極の鍛錬」の方法の一つとして説明している。
一部を抜粋する。
組織は人材がそれまで得意だった部分を生かして人事ローテーションを行い、能力開発を目的に人材配置などはしない。企業は激しい競争にさらされているので、現在卓越した業績をあげている人材をその部門から引き上げ、本人が苦労するかもしれない部門に投入することはなかなかできない。
経営を学び、経営者としての自己の開発能力が求められるストレッチジョブへマネージャを意図的に配置するのは、成功している多くの企業が採用する人材開発手法だ。
普通の企業では余裕がなくて、能力開発のための人事ローテーションはなかなかできないが、GEなどは、能力開発のために、あえて本人が苦労する仕事に配置するという。企業自体も配置転換による業績悪化というリスクを負うことになるにも関わらずである。
現状の安定感を大事にするか、組織、個人の未来の成長のために思い切って安定を捨て、配置を入れ替えるか。
普通に考えると安定感の方をとってしまうが、将来を長い目で見据えて判断し、リスクをとり人材配置を考えられるような判断力を身につけたいとおもう。
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