粉飾決算、インサイダー取引など一連の企業不祥事で、逮捕された某H氏、某M氏の主張はそんなようなものだったと思います。
まず、お金を出している株主ありき。そのような考えに、多くの人はなにか違和感を感じたのではないでしょうか。
では「会社は従業員のもの」か。
それも、私の感覚とは少しずれています。
私は「会社は社会のもの」だと思います。
では、社会とは何か。人のネットワークだと思います。
会社を中心としたネットワーク。つまり、日頃、会社を動かしている従業員が一番会社に近いところにいて、そして顧客がいて、株主がいる。私は、ネットワークの中心に近いところから順番に幸せにし、社会に貢献していく。それが正しい順番であり、一番うまく行く方法だと思っています。
そのためには、世の中でかっこいいと思われている(であろう)「ベンチャーキャピタルに、大量の資金を出資してもらい、一発当てる」といった思想では危険だと考えています。
なぜか。それは、株主(お金を出している人)に経営者の顔が向き、幸せにする順番が入れ替わるからです。
ベンチャーキャピタルは、ある一定期間で、投資回収に入ります。
金は出すが、口は出さないということはビジネス上まずありえないでしょう。そして経営者は、その期待に応えるための戦略を考え、短期的な策を打つことになります。
顔はますます株主に向いていきます。短期で利益を出すために、従業員は二の次。しばらくたつと、従業員に不和が生まれ、離れていくものも出てきます。
これ以外にも、重大なデメリットも生まれ、なおさらことはうまくいかなくなります。
それは「不利な時には時期を待つ」「長い視点で物事を考える」「タイミングを捉える」といった経営で重要なタイミングに対する直感が鈍ってしまうこと。
少し前に読んだ、松下幸之助さんの本「経営心得帖(PHP文庫)」に以下のようなことが書いてありました。少し長いですが引用します。
「これからは借金をせずして、蓄積した資金、自己資金の範囲で商売を行い、会社を経営していくように切り替えてなくてはならないと思います。
〜中略
そうすると、結局、いろいろ工夫、努力して原価を引き下げる、あるいはきめ細かいサービスでお客様に奉仕する。そういうことに成功するより仕方がありません。それに成功するならば、お客様に喜んでいただきつつ、自分も適性に儲け、そして経営の体質も改善されてくるでしょう。自己資金での経営に徹するという決心があれば、それは必ず可能だと思うのです」
この本は昭和49年7月1日に書かれた本なのですが、戦後からこの時代にも、多くの会社が多額の出資、融資の後、倒産する傾向が顕著になっているというのです。時代は繰り返すといいますが、まさに今、それを繰り返しているのではないでしょうか。
自己資金だけでは、事業に大切なスピードが損なわれるのではないか、そのような心配もあると思います。しかしそこに大きな落とし穴があると私は考えます。(しかし、スピードが大事ではないとは言っていません)
これらのことを踏まえ、これからの時代の、会社のありかたについて、考えていければと思っています。
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