「見える化」「モデリング」などシステム開発の現場でも図式化の重要性が認識されるようになってきました。
しかし、まだまだエンジニアは図式化に対して苦手意識を持っている人も多いようです(そもそもドキュメント作成が苦手な人が割合的に多いので)。
図式化の良さの一つとして、ぱっと一目でその全体像を確認できることがあげられます。文章(自然言語)で設計内容が記述されている場合、文章を書いた以外の人は、全てを読まないと内容を把握できないという問題があります。(自然言語でも書かないよりはまったくましです)
私がシステム開発のプロジェクトでUMLを使用するようになったのは、2000年頃からです。まずは、自分が勉強したUMLを実際のプロジェクトに適用してみたいと思い、開発中のシステムで自分が把握したことを「UMLで表現するにはどのように記述したら良いか」というアプローチで取り組んで行きました。
最初は苦労しましたが、自分が図に落とし込んだシステムの知識を、同じプロジェクトの方々が「よくまとまっている」と喜んでくれたのを思い出します。また、打ち合わせで皆で眺めているうちに、問題点が早いタイミングで明らかになり、認識も共有できるなど、図式化することの効果を肌で実感したのもこの頃です。図をドキュメントに積極的に組み込むことによって、プロジェクトの叩き台となるドキュメントを作成できたと思います。
まずは、自分の知識を図に落としてみる。落とせないようであれば理解が足りないので調べる。情報が足されたら図にも追加する。そのようにして、情報の漏れ、抜けがなくなり、情報の質があがっていくのだと思います。
また、図をドキュメントに入れる時は、文に図をつけるというよりは、図に文章をつけるという考え方のほうがうまく行くようです。
「図で考える人は仕事ができる(久恒 啓一 著/日本経済新聞社)」に、図解のメリットがうまく表現されているので紹介します。
目の前の文章やデータ、資料などを図にしようと取り組んでいると、バラバラの知識の断片が立ち上がってきて立体的に関係づけられていく。そして1つの体系に昇華していく過程を経験する。それが他の人にもわかるように表現できたとき、知識が本当に自分の身についたと実感できる。
また、自分の知識理解の手段という以外にも、さきほどのプロジェクトでの認識共有のように、他の人との知識共有という面でも図解は役に立ちます。次の文も上記著書からの引用です。
「理解」「思考」→「伝達」つまり理解力が高まり、幅広い教養が身に付く→それをもとに、より豊かな知的価値を創造する→さらにその価値を多くの人と共有し深めていく。そんな幸福なサイクルの原動力に図解コミュニケーションはなり得る。
まとめると図解のメリットは3点。
・ぱっと一目で全体を把握できる
・図にすることによって、自分の知識をまとめ、発展させることができる
・他の人と知識を共有できる
となります。
プロジェクトメンバーのそれぞれの力もさることながら、メンバー間の知識の共有、認識の一致が、プロジェクト成功の大きな要因になることは、異論は挟む余地はないと思います。そのような状況で、図式化が苦手なエンジニアは、是非、図式化のスキルを身につけることにトライしてみてはいかがでしょうか。