「カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで」の著者、市谷聡啓さんが2019年6月に出版した「正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について」を拝読しました。
本書をおすすめしたい人
- プロダクト開発において、アジャイル開発での進めかたを知りたい人
- アジャイル開発チームのプロダクトオーナー(ビジネスサイド、企画者)
- プロダクト開発チームが所属している会社の経営者
- アジャイル開発を新たに学びたい人
- アジャイル開発をひととおり知っているが、あらためて学びたい人
「正しいものを正しくつくる」という中心理念
本書のAmazonレビューを見ていたところ、星1つのレビューを見つけました。
エンジニアの傲慢さが詰まった本
「正しい」という言葉を使うエンジニア、同じエンジニアとして非常に恥ずかしい思いです。 「正しいもの」など誰がわかるのでしょう?わかるのなら皆誰も失敗などしないでしょう。
書籍のタイトルだけを見たら、このように考えるのもおかしくはありません。
必ず成果が出る「正しい」要求や仕様をビジネスサイドから提供されれば、それにもとづいて作りますというエンジニアも世の中には存在するからです。
しかし、本書に描かれているアジャイル開発チームの考え方は、真逆です。
プロダクト開発のプロジェクトは「不確実性*1」と常に背中合わせです。
その状況のなかで「正しいものとは何か?」という問いを立て、仮説検証しながらつくるべきものを探り、開発においては「正しくつくれているか?」を日々確かめる、謙虚で思慮深いアジャイル開発チームの姿を本書からはイメージすることができます。
プロダクト開発において「正しさ」はプロジェクトが続く限り、追い求めていくものであり、問い続けていくものです。
「正しいものを正しくつくる」という言葉は、本書の内容を読めば、いうまでもなくエンジニアの傲慢ではないことがわかります。
「正しいものを正しくつくる」とは、「正しいものとは何か?」「つくっているものは正しいといえるか?」「正しくつくれているか?」と問い続けるチームをつくるための中心理念であるといえるでしょう。
チームが不確実性と戦っていくための戦略の書
本書の第4章「アジャイル開発は2度失敗する」で、アジャイル開発チームは2つの壁につきあたると説明されています。
アジャイルに作ることによる困難の壁
- アジャイル開発を習得することそのものの難しさによる困難
プロダクトの成果が上がらないという壁
- プロダクトをリリースしたが売上が伸びない、使われない
本書は、これらの壁をアジャイル開発チームが乗り越え、成長し、成果を出すための考え方と取り組みを順を追って説明しています。
その説明の深さと内容は、アジャイル開発チームが不確実性と戦っていくための戦略の書であるといえます。
アジャイル開発の基本を学べる
本書はアジャイル開発そのものについても、ボリュームを割いて丁寧に説明しています。
アジャイル開発の一般的な説明というよりも、プロダクト開発という文脈を起点にアジャイル開発を説明しているので、より実践的な説明であるといえるでしょう。
そのため、アジャイル開発について入門したいという人から、アジャイル開発をあらためて学びたいという人にもおすすめです。
最後に:著者のプロジェクト経験から学ぶ
アジャイル開発に関する書籍では「アジャイルで開発すればうまくいく」という内容になりがちです。
しかし、本書ではアジャイルに開発するだけではうまくいかないことにしっかりと目を向けています。
本書は、チームがアジャイル開発における失敗から学び、成長していく過程を追体験できる構成です。
「愚者は(自分の)経験に学び、賢者は歴史(他人の失敗)に学ぶ」*2といいます。
プロジェクトのチームに与えられる時間も、人生の時間も限りがあります。
アジャイル開発でプロダクト開発に取り組む方々は、自らの経験と失敗の中から学ぶのもよいですが、本書の著者の失敗と経験の中から得た知見から学ぶのはいかがでしょうか*3。
正しいものを正しくつくる プロダクトをつくるとはどういうことなのか、あるいはアジャイルのその先について
- 作者: 市谷聡啓
- 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
- 発売日: 2019/06/14
- メディア: 単行本
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P.S
私は自分の血肉になりそうな書籍は、図にまとめて理解を深め、ことあるごとに参照するようにしています。
「正しいものを正しくつくる」を拝読させていただき、今後何度も読み返す書籍であると思い、図にまとめました*4。
本書のさらなる内容紹介になれば幸いです。