四谷三丁目の交差点近くにあぶさんという居酒屋があります。
店内には、プロ野球選手が来店した時の写真、ポスター、ユニフォーム、バットなどのお宝グッズが、店内のいたるところの壁や机に所狭しと並べられています。
店内のテレビでは、主に80年代、90年代のオールスターや、好プレイ珍プレイ番組のビデオが流れていて、山本浩二、田淵、江川、原、篠塚、中畑、落合、ゲーリー、宇野、小松辰雄、清原、秋山、石毛、デストラーデ、渡辺久、工藤、ブライアント、古田、高津、池山、石井一、イチロー、金本、江藤、松井秀喜、仁志、二岡、桑田、斎藤、槙原、松坂… など、錚々たる選手の現役映像をみることができます。
そのようなあぶさんの空間では、マスターが長い時間をかけて積み重ねてきた野球への愛着や、プロ野球の長い歴史に囲まれ「あの頃どうしていたっけ?」などと、懐かしい記憶を追想しながら食事やお酒を楽しむことができ、自然と話にも花が咲いていきます。
もし野球ブームが到来したとして、どこかの企業がベースボール居酒屋をつくったとしても、ひとつひとつ創りあげてきたあぶさんのような空間はできあがらないだろうとおもいます。
お金では、あぶさんのまねはできないし、追いつくこともできないということです。
話はかわりますが、私は2003年に個人事業主として独立した頃から、どうしたら社会の中で生きていけて、価値を発揮できるかということを考えるようになりました。
そのために私は「その他大勢」から抜け出そうと決意しました。
「その他大勢」のひとりでは、代わりはいくらでもいますし、価値も下がっていくからです。
その他大勢から抜け出すためには、個人でも会社でも差別化をはかることでしょう。
しかし、一時的に差別化できたとしても、マネをされてしまったら元の木阿弥となります。
差別化をはかり、その優位性を持続していくには、いろいろ考え方や方法があるかとおもいます。
わたしはそのなかでも「時間をかける」ということをあげたいとおもいます。
時間をかけて築いてきたものには、以下のような特徴があります。
- 成果同士が掛け算となり成果が大きくなる
- 成果と経験と時間が重なり、奥行き、深みが出る
- 次第にブランドが認知され、定着する。権威づけされる(ブランドは広告などで一気につくれるものではない)
このような特徴をもっていたら、簡単にマネをし、追いつくことはできないでしょう。
好きなことを仕事にしろという人がいます。
その理由として、好きなことは楽しく取り組める、夢中になれて、その結果幸せ度があがるということがあるかと思います。
加えて、差別化という観点からいうと、ひとは好きなことには自然に時間をかけるので、他がマネできない差別化要因がつくられる。その結果、社会の中での価値が自然にあがり、うまくいくということではないかとおもいます。
1度はじめたものを、ある一定の成果がでるとすぐにやめてしまう人や、違う方法や道を探すひとが多いように思います。
時間をかけてやってきたことは、その人の資産です。
貴重な人生の時間をムダにしないためには、その資産を有効活用することです。
高度な知識やスキルほど、学んでもすぐに使えるわけではありません。
本などで学習し、学んだことを実践し、本当に自分の中で使えるようになる(内在化する)には、私の感覚ですと2、3年はかかります。
そのため、知識やスキルを身につける努力も継続していく必要があり、それを続けるか続けないかで、自然と差が出てきます。
裏返すと、努力をやめた2、3年後には、そのひとの伸びしろはなくなるということになるとおもいます。そうならないためには、たえず努力をつづけていくことです。
「ナレッジワーカー(知識労働者)の時代」といわれることも多いですが、ナレッジワーカーにとって「継続力」というものがより必要になる時代ではないでしょうか。
・・・ というようなことを、考えさせてくれる空間が、四谷三丁目のあぶさんです。月1回通ってます。