ビープラウド社長のブログ

株式会社ビープラウドの社長が、日々の思いなどを綴っていきます。

PyCon mini Hiroshima 2018に基調講演で登壇しました

2018年10月6日(土) に開催された「PyCon mini Hiroshima 2018」に基調講演で登壇しました。

※この記事は BeProud Advent Calendar 2018 5日目の記事です。

hiroshima.pycon.jp

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以下は、カンファレンス全体のTwitterのまとめです。 togetter.com

以下は、私のスライドです。

今年の5月にPyCon mini Hiroshima 運営の西本さんから登壇のお話を頂きました。

イベントで基調講演を担当させて頂くのは、PyCon JP 2015 以来です。

shacho.beproud.jp

登壇までに考えたことを書いてみようと思います。

話すテーマの選択

PyCon mini Hiroshima 2018のテーマが「すごい Python 広島で流行らせよう!」です。

ここ1、2年でPythonが人気プログラミング言語になりました。

それにつれ、新たにPythonを始める人も増えたので、その人たちにとって参考になるテーマは何かと考えました。

考えた結果、2008年からビープラウドとしてPythonに10年以上取り組み、経験したことをもとに話そうと思い「Pythonの10年と今、これから」というテーマに決めました。

発表にあたり気をつけたこと

スライドは28スライド目までの内容が、自己紹介と自社の活動です。

88スライド中28スライドは多めといえます。

多めにした理由は、私の担当が基調講演だからです。

基調講演なので「カンファレンス全体に共通なテーマ」についてのバックグランドが必要です。

一方で、カンファレンスに参加する方々は、私のことを知らない人がほとんどです。

そのような中で、運営の方々がテーマに合ったバックグランドの人を選んでいるということを参加者に認識してもらう必要があります。

そのために会社のいままでの活動内容をやや長目(といっても数分程度)に話しました。

通常の勉強会やパネルディスカッションでは、自己紹介は短めが良いとおもっています。

なぜなら、参加者が聞きたいのは本題の話だからです。

そのことも留意しながらお話しました。

話した内容

話したテーマは「Pythonの10年と今、これから」です。

「Pythonの過去10年と今」については「なぜPythonなの?」と言われていた頃から「Pythonでやりたい!」と言われるようになるまでについて私の観測範囲における変化をお話しました。

「これから」については、未来予測をしても当たらないので「技術の選球眼」というテーマで、キャリアについて話をしました。

ひとことでいうと、「いま必要な技術」+「なりたい自分になるための技術」という2つ視点で自分が取り組む技術を選択するという話です(詳しくはスライドを参照してください)。

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技術に限らず何かを世の中に広げ、流行らせるにはコミュニティが重要な役割を担います。

なぜなら、コミュニティの中でお互いに教え合うことでお互いのレベルが上がり、仕事などで実践され成果が生まれるようになるからです。

成果が生まれれば、さらに技術を使う人が増え、広がっていきます。

私がIT勉強会のBPStudyというコミュニティを2007年から開催し、他にもコミュニティに参加してきた経験から、コミュニティ活動についてもお話させていただきました。

まとめ

スタッフの方々、参加者の方々、温かく迎えて頂きありがとうございました。

とても楽しい、思い出深い経験となりました。

また広島に行きたいです(人生4度目の広島でした)。

自分中心の起業、事業を開発する〜「自分中心設計:Self-centered Design」の勉強会に参加しました

2018年7月18日に起業をテーマにした勉強会に参加しました。

peatix.com

参加のきっかけと動機

  • 日頃懇意にして頂いているアクティア高崎さんの三大師匠の一人が主催の和波さんとのこと(BPStudyでの資料)。高崎さんがFacebookでシェアしたイベントページの内容を読み、自分にとって参考になりそうと感じた。

  • 主催の和波さんが著した書籍「ビジネスモデル症候群」を2017年に読み、感銘を受けていた。

    • 特に「ビジネスモデル症候群の典型的な5つの症状」の「経営破綻」について。(この点はいずれブログに書きたいと思います。)

ビジネスモデル症候群 ~なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?

ビジネスモデル症候群 ~なぜ、スタートアップの失敗は繰り返されるのか?

  • 自分中心のビジネス設計というキーワードが、日頃自分が考えていることとマッチしていたので内容を聞きたかった

  • 「起業=会社をつくること(=自分で会社をつくるか否か)」という観点ではなく「起業=事""を""こす」という観点から参考にしたいと思った。

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内容メモ

和波さんの話

  • メインテーマ

    • 起業を加速する「自分中心設計」のススメ
    • ビジネスモデルは自分中心で
  • 和波さんの取り組み

    • 起業のプロセスを支援
    • 事業のインキュベーターはやらない
    • 起業家のヒトという面を支援

      • つかの間のハッピーを楽しむよりは、起業家の考え方を習得したほうが起業家が幸せ→ビジネス設計のアドバイスをしなくなった
  • ビジネスモデル症候群

    • ビジネスのアイデアを持っている人の方が失敗する
    • アイデアを専有していると、自分のアイデアの成功ばかりに目が行ってしまい、不都合な真実からは目をそらす
    • 人には見たくないものは見ないという習性があるため
    • あの成功しそうな人は、なぜ次から次へと失敗するのかという疑問があった
  • 自分中心設計

    • マーケットに近づくほど成功するというのが現在のパラダイム
    • マーケットに近づいた結果、ビジネスモデル症候群にかかった起業家たちがたくさんいる
    • 自分を中心に置いたほうが起業はうまくいく
    • 働くということは人生の大きなファクター
    • ジョナサン・ハイト(心理学者)

    • 自分と人生の大きなファクターである仕事との「あいだ」に良い関係性が構築できているか。「あいだ」から幸福が訪れるか

  • アイデンティティ

    • アイデンティティ=同一性という意味(個性ではない)

      • 人格における存在証明または同一性
      • ある人が一個の人格として時間的・空間的に一貫して存在している認識を持ち、それが他者や共同体からも認められていること。自己同一性。
      • 意識(self consciousness) - 接点(contact) - 評価(evaluation)
        • 社会からは接点で評価される
        • 接点と本人が頭に抱えているもの(意識)は似て非なるものである
        • 起業家の場合、接点は仕事である。自分(意識)-仕事-評価
        • 本人の意識 --- 評価

          • 正しくない関係→起業家のアイデンティティ・クライシス
    • 起業とは、自己と職業の同一性を主体的に確立する行為

      • 「新しい事業を起こすこと=事業を起こす人たち自身と職業の同一性を主体的に確立する行為」と定義したい(haruメモ)
    • 起業によるアイデンティティ確立パターン

      • 外部評価優先型

        • ビジネスモデル(成功しそうな)
        • (1)創業→(2)評価→(3)経営者としての自覚が生まれてくる(アイデンティティ確立)
      • 自分中心設計型

        • (1)自分→(2)創業→(3)評価(アイデンティティ確立)
        • 自分が喜ぶ仕事をつくったほうが手っ取り早い(自分中心設計型)

Heart Quake 千葉さんの話

  • 自分中心起業の秀逸な事例(和波さんより)
  • Heart Quake 千葉順さん

  • 3つの制約から自由になりたい

    • お金
    • 時間
    • 場所
  • 研修事業を選んだ訳

  • 半年働いて半年休む

    • 休み期間は、純粋な休み&研究開発

* less is moreの考え方

Q&Aから生まれた話、最後に和波さんの締めの話

  • 仕事などの経験がないと、いきなり自分中心設計の判断をするのは難しい(和波さん)
  • 仕組みをつくるのは仕事(明日の自分を楽にする)。仕事を進める=作業(労働)

    • 商品をつくる
    • ブログを書く(検索エンジン経由でのコンテンツマーケティング)

      • ブログは継続的に書いている
      • リサーチする日+書く日
  • 本気で働きたくないと思っている(千葉さん)

    • 働かないためには働く必要があるとは千葉さんは分かっている(和波さん)
  • したくないことから考える

    • 「好きなことを見つけよう」ではなかった
    • ビジネスはなんでもよかった

      • そのために、さまざまなことに手数を打っている
      • 事業についてはニーズ100%
      • 事業を選んだ基準

        • ほとんど労働無く月5万円稼げるか
        • 民泊は業者に頼んで運用を自動化していた
    • 組織運営は、自分中心100%

      • 「なんでも良いです」というひとを採用している
  • 先を見据えて、今日を行動する

    • 大学卒業後を選んで、大学を選んだ(研究室を選んだ)
    • NG:今良いものをやっていれば、その先もよくなるだろう(先は考えていない)
    • 起業の奥を見据えて起業する
  • 起きたことは全て自分の責任という発想をもつ

    • 他人事だとおもっていると、そこで終わる(和波さん)
    • 自己決定権が親から与えられていた(親もわからないので自分で決めろという感じだった)
  • イヤなもの(ストレス、摩擦)を取り除く

  • 職業同一性障害について(和波さん)

    • 職業同一性障害=自分に対する認知と職業が一致していないこと
    • ビジネスで成功する≠職業同一性障害が解消する
  • 起業を目的としている人と、手段にしている人が明確に分かれる(和波さん)

    • 外部評価優先(起業が目的)(和波さん)

      • 外部評価を優先する人ほど、流行りのビジネスを継ぎ合わせてビッグ・ピクチャーを持ってくる
      • より大きな目標が成長を加速させるという側面もある

        • 実際はどちらが良いかわからない
        • 外部からの評価を得て一気に成長するということも否定しない
    • 自分中心設計(起業が手段)

*「良い家」とは「豪華な家」ではなく「住むひとが快適な家」である(和波さん)

私の気づき

「自分中心起業」というテーマの会に参加して、以下の3点について考える機会になりました。

  • ストレス、摩擦を取り除くことと仕事、人生の関係
  • 自分中心起業とFounder Problem fit
  • 真似されにくい事業をつくるための自分中心設計

それぞれ、以下にまとめます。

ストレス、摩擦を取り除くことと仕事、人生の関係

千葉さんの起業は「自分は働きたくない」と考えることからスタートしました。

「働くこと=ストレス」と捉え「ではなるべく働かないためにはどうしたらよいか」と発想し、自分の人生を自分の責任のもとにつくっています。

そのように人生からストレスを取り除いていく話を伺い、私は「ゲームニクス理論」を思い出しました。

www.gentosha.jp

ビジネスを変える「ゲームニクス」

ビジネスを変える「ゲームニクス」

ゲームニクス理論は、ヒットするゲーム制作のノウハウを体系化した理論で、以下の4原則から成り立っています(引用元)。

  • 第一原則 直感的なユーザー・インターフェイス(=使いやすさの追求)
  • 第二原則 マニュアルなしでルールを理解してもらう(=何をすればいいのか迷わない仕組み)
  • 第三原則 はまる演出と段階的な学習効果(=熱中させる工夫)
  • 第四原則 ゲームの外部化(=現実とリンクさせて、リアルに感じさせる)

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ゲームの構造は建物の1階と2階に例えることが出来ます。

1階は操作性(UI)(ゲームニクス第一原則)とゲームルール(ゲームニクス第二原則)で、ゲームの土台にあたります。

操作性がスムーズで、ゲームルールが理解しやすいと、プレイヤーはスムーズにゲームの世界に入っていけます。

しかし操作性が悪かったりルールの理解しずらいと、ゲームの設計がいくらよくてもプレイヤーはストレスからプレーをやめてしまいます。

したがって、まずは操作性(UI)とゲームルールの理解に関して、ストレスを極力排除することが、面白いゲームの最初の分岐点となります。

2階はゲームそのものの設計に該当します。

面白いゲームは、ストレス(障害の発生)と快感(障害のクリア)を繰り返す演出により、プレイヤーが熱中し、ハマるように設計しています(ゲームニクス第三原則)。

ゲームを仕事に置き換えると

ゲームを仕事に置き換えたのが以下の図です。

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仕事の土台(1階)は、会社などの組織や仕事環境にあたるでしょう。

2階は価値を生み出す仕事そのものです。

ゲームになぞらえると、仕事に夢中になりハマるためには、土台となる組織や仕事環境から不要なストレスを取り除くことが大前提になります。

組織や仕事環境から取り除くべきストレスには、さまざまなものが思い当たります。

  • 人を縛る余計なルール
  • さまざまな手続き
  • 不要な会議
  • ムダな通勤(通勤することそのものが目的となっている通勤)
  • 社内政治
  • 悪い人間関係
  • 作業しにくい環境

etc...

これらのストレスを取り除いた組織をつくることが、働く人のモチベーションを自然に生み出すといえるのではないでしょうか。

ゲームを人生に置き換えると

人生はドラゴンクエストなどのロールプレイングゲーム(RPG)に例えられることもありますが、上記の「ゲーム」を「人生」に置き換えたのが以下の図です。

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ストレスは2種類あります。

  • 乗り越えることで快感(達成感)を得られるストレス(良いストレス)
  • 乗り越えても快感(達成感)を得られない、乗り越えることでやっと行動のスタート地点に立てるストレス(悪いストレス)

ストレスは一括りで悪いものと捉えられがちですが、自分にとって何が良いストレスで、何が悪いストレスなのかを見極めることが大事です。

ゲームや仕事と違い、自分の人生は自分以外の誰も設計してくれません。

自分にとって悪いストレスは人生から取り除き、良いストレスは乗り越えようとすることで、生きることそのものに夢中になり*1、生きがい(快感・達成感)を得ることができるでしょう。

自分中心設計とFounder Problem fit

「自分中心設計」というキーワードから連想したのは「Founder Problem fit」という言葉です。「Founder Problem fit」とは、書籍 起業の科学 スタートアップサイエンスに登場し、起業の創業メンバーと解決に取り組む課題がフィットしているかを示す言葉です。

起業の科学 スタートアップサイエンスは、起業家が取り組むべき課題を検証し、事業化していくステップが説明されている書籍です。

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「起業の科学」で説明されている検証のステップは大きく以下の4つです。

  • (1)Founder Problem Fit

    起業家(Founder)と取り組むべき問題がフィットしているかを検証

  • (2)Customer Problem Fit

    顧客が解決するべき切実な問題を持っているかを検証

  • (3)Problem Solution Fit 提供しようとしているソリューションが課題を解決するかを検証

  • (4)Product Market Fit 製品が市場に受け入れらているかを検証

事業の起点・中心になるのは起業家の人生

4つの検証ステップのスタートが「Founder Problem Fit」です。

解決しようとしている問題が、その事業を起ち上げるひとたちが取り組むべき問題なのかを考えることは重要な分岐点です。

なぜなら事業をつくるためには年単位の時間を投資することになるからです。

儲かりそうという理由だけで自分と合っていない仕事に取り組んでも、いつかは自己矛盾を起こし長続きはしません。

以下のようなことを確認し、時間をかけて取り組むべきかを判断する必要があるでしょう。

  • 自分がどのように生きたいのか
  • 自分がどのように仕事をしたいのか
  • 今までの経験や、人生の背景
  • 自分の得意分野
  • 自分の興味

匠Methodにも「シーズからニーズを描く」という言葉がありますが、シーズを描くためにも、まずは自分のモチベーションの源が何かを見極め、確認しておく必要があります。

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真似されにくい事業をつくるための自分中心設計

書籍「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)」では、事業が競合から市場で持続的優位を築くための「競争優位の階層」を提示しています。

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競争優位の階層は6つ階層から構成されます。

  • レベル0:外部環境の追い風

時代の背景、世の中の流れ・流行、法律、規制など

  • レベル1:業界の競争構造

業界にどのようなプレーヤーがいるか、市場規模、商習慣など

  • レベル2:ポジショニング(SP: Strategic Positioning)

市場での立ち位置。活動の選択(やることとやらないことを決める)。外に見えやすい手足のようなもの

  • レベル3:組織能力(OC: Organizational Capability)

他社と違った独自の強みを持つ。組織能力、社内プロセス、外には見えにくい筋肉のようなもの

  • レベル4:戦略ストーリー

それぞれの打ち手のつながりや交互効果、一貫性(打ち手同士の因果論理)

  • レベル5:クリティカルコア

    戦略ストーリーの一貫性の基盤となり、持続的な競争優位の源泉となる中核的な構成要素。他の様々な構成要素と深い関わりを持ち、一石で何鳥にもなる打ち手

書籍「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)」では、これらの階層を構築していくことで、持続性のある競争優位を築くことができるとしています。

組織能力(OC: Organizational Capability) を築く

競争優位の階層のレベル3は 組織能力(OC)です。

組織能力(OC)は、日々の取り組みであり、組織の習慣や考え方、価値観などから導き出されます。

ゆえに他社からは見えにくく、また真似されにくい製品・サービスを構成する要素のひとつとなります。

社内プロセスは、日常繰り返す活動となるので、繰り返すにあたり苦痛がないことが前提条件です。

したがって社内プロセスをつくるときは起業家自身の価値観を見つめ直し、苦痛にならないプロセスを構築する必要があるでしょう。

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最後に

12年前にビープラウドを創業し、活動してきました。

その中でさまざまな価値観を身に付けてきましたが、整理できていないことも多々あります。

今回の参加を機に、自分自身のモチベーションの源泉(=自分の中心)をもう一度見直したいと思います。

またアイデンティティ確立が、起業家自身の幸せにつながるという発想も自分にはないものでした。

自身のアイデンティティについても考える良いきっかけにしたいと思います。

*1:フロー状態ともいいます

2018年1〜6月発表まとめ

2018年1月〜6月の登壇資料をまとめます(全7回)。

自分で主催しているBPStudyのLT大会にエントリーし、場数を踏むことができたのは収穫でした。

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オンラインPython学習サービスPyQの価格決め

BPStudy#125(2018年1月30日)

PyQのサービスリリース時、価格を決める必要がありました。価格決めは製品の重要事項です。そこでチームで読書会を開催し、価格についての知識を学習したあとに価格を決定しました。その時の読書会の手法や書籍、検討した内容などを紹介しました。

良いルール・悪いルール

BPStudy#126(2018年2月28日)

組織では、多種多様な人たちが仕事をします。多様な個人それぞれが気持ちよく働き、価値を創り出すためには、ルールが必要になります。これからの時代の組織がルールをつくるときの考え方を説明しました。

松坂大輔物語

Baseball Play Study 2018 春 NPB開幕スペシャル(2018年3月29日)

2015年に日本球界に復帰するも2017年までの3年間で1試合登板(1イニング5失点)に終わった平成の怪物、松坂大輔。その後2018年に中日ドラゴンズに入団。平成の怪物も平成の終焉とともに引退してしまうのか。プロ野球開幕前日に松坂大輔の復活物語について話しました。

IT勉強会支援プラットフォームconnpassからみた IoT

IoT ALGYAN3周年「IoT祭り2018」(2018年4月7日)

時代を変える技術として注目を集めるIoT。connpass上でも盛んにIoTの勉強会が開かれています。IT勉強会支援のプラットフォーマーの立場から、IoTの勉強会の開催状況、盛り上がりについて説明しました。

匠Methodを学んで私のここが変わった

BPStudy#129(2018年5月30日)

私は2013年から本格的に匠Methodを学び、connpassやPyQなどの製品開発、そして自分のキャリアデザインなどに活用しています。匠Methodを活用してどのように自分が変わったか、どのような成果が出たかを説明しました。

匠Methodをサポートする事業開発に役立つ書籍たちを紹介します

匠塾大LT大会(2018年6月14日)

人の思考はすべてインプット→処理(思考)→アウトプットという仕組みで成り立っています。このことから良いアウトプットの元になるのはインプットであることが分かります。

匠Methodを使った製品開発で良いアウトプットをために役立った書籍を紹介しました。

カイゼン・ジャーニーとお金のおいしい関係

BPStudy#130(2018年6月21日)

書籍カイゼン・ジャーニーで貫かれている考えは「越境」です。「越境」にも種類があります。仕事における「越境」の3パターンを説明しました。

※2017年の発表まとめはこちらです。

「Pythonプロフェッショナルプログラミング 第3版」は、10年の取り組みの集大成

2018年6月12日にビープラウドのメンバーで執筆した「Pythonプロフェッショナルプログラミング 第3版」が出版されます。

Pythonプロフェッショナルプログラミング第3版

Pythonプロフェッショナルプログラミング第3版

第1版が2012年3月26日、第2版が2015年2月27日、第3版が2018年6月12日の発売で、約3年おきに版を重ねてきました。

最新技術に合わせてバージョンアップ

IT技術は日々バージョンアップされ、数年もすれば技術の構成やベストプラクティスも変わってきます。

技術の進歩に合わせて、書籍も第3版としてバージョンアップしました。

主な改訂内容は以下のとおりです。

  • Python2.7.6→Python3.6.4
  • Ubuntu14.04 LTS→Ubuntu16.04 LTS
  • Webアプリケーション(2章) サンプルアプリケーションを「乗りログ」という新たなアプリケーションに変更
  • ソースコード管理(6章) Mercurial→Git/GitHub
  • Pythonパッケージの利用と開発への適用(9章):manylinux, Dockerの活用
  • 継続的インテグレーション(10章):Jenkins→Circle CI
  • テスト(13章) :テストの見積もりについて説明追加
  • 開発環境のセットアップ(Appendix):Vagrant、ネットワーク設定、ファイル同期、環境のバックアップなどの説明を追加
  • プログラマーのための機械学習(15章) を新たに追加

上記以外にも全面的に内容を見直し、細かい修正を加えています。

機械学習の章を新たに追加

ビープラウドでは、2017年から機械学習・データ分析系のシステムも受託開発しています(2017〜2018年の実績は6案件(2018年6月時点))。

機械学習のプロジェクトというと、データサイエンティストやドメインエキスパートといった役割が浮かびますが、ビープラウドではWeb開発を担当していたプログラマーも、機械学習のプロジェクトに携わっています*1

機械学習の実プロジェクトから得たノウハウ、主にプロジェクトの進め方や考え方を「プログラマーのための機械学習」の章として追加したのも第3版の大きな特徴のひとつです。

「プロフェッショナル」というタイトルの意味

プログラマーになるためには、まずプログラミングの文法から学び始めます。

しかし仕事として実際のプロジェクトにプログラマーとして参加するには、プログラミングの文法を学んだだけでは良い仕事はできません。

なぜならプロジェクトにはQCD(Quality:品質、Cost:費用、Delivery:納期)の制約があるからです。

実プロジェクトにおいてQCDの制約の中で、職業としてのプログラマー(以下、プロフェッショナル・プログラマー)としての役割を果たすには、プログラミング以外にも、開発環境、エディターの使い方、ソースコード管理、ドキュメント、テスト、デバッグ、設計、サーバーインフラ、パフォーマンス、ライブラリ、ミドルウェア、継続的インテグレーション、課題管理、レビュー、チームでの仕事の進め方などさまざまな知識を持ち、活用する必要があります。

プロフェッショナル・プログラマーは、プログラミングだけではなく周辺技術を活用できてはじめてプロジェクトのQCDを守れるという、ある意味厳しい環境で仕事をしているといえるでしょう(だからこそナレッジワーカーとしてのプログラマーの仕事の価値があります)。

プログラミング言語Pythonに特化し、プロフェッショナル・プログラマーにとって実プロジェクトで必要な知識・スキルのベストプラクティスをまとめたのが「Pythonプロフェッショナルプログラミング」です。

さまざまな技術についてまとめていますので、書籍は488ページ(全15章+Appendix)にも及んでいます。

また会社のサイトトップには以下のように会社のミッションが書かれています。

株式会社ビープラウドはソフトウェア開発のプロフェッショナルチームです。 日々研鑽した知識・技術・創造力とチーム力で、アイデアをカタチにし、価値を創り出します。

ここでの「プロフェッショナル」は、職業という意味だけではなく、以下のような意味も込められています*2

  • 専門家のこと。ある分野について、専門的知識・技術を有しているひと
  • そのことに対して厳しい姿勢で臨み、かつ、第三者がそれを認める行為を実行している人

この「プロフェッショナル」への思いが、書籍のタイトルにも込められていることも加えておきます。

本書の土台になっているもの

ビープラウドでは、2008年4月にPythonを開発のメイン言語に定めました。

それ以来10年間にわたり、90以上のプロジェクトでPythonを採用し、開発実績を積み、技術やノウハウを洗練してきました。

ビープラウドの技術者たちの会話を聞いていると、さまざまな技術の比較やよしあし、技術動向、技術の経緯など「よく知っているなぁ」と感心することが多々あります。

これらの知識は「より良い仕事をしたい」「自分のスキルをアップしたい」「技術が好き」という意志がベースにあり、多くの時間を使って追求した結果です。

技術者のすべての行動には理由が必要です。

「なぜその技術を使うのか?」「なぜそのように技術を使うのか」

理由を突き詰め、積み上げた先にあるのが価値を創り出す安定したシステムです

日々多くの時間を使い追求した技術を土台に「なぜその技術を使うのか?」「なぜそのように技術を使うのか」が随所に説明されている点も本書の見どころのひとつです。

PyQとのコラボレーション

ビープラウドで運営しているオンラインPython学習プラットフォームのPyQで、書籍とのコラボ問題を用意しました(コラボ問題は無料です。クレジットカードの登録が必要で、書籍内にキャンペーンコードが記載されていますので画面で入力してください)。

第2章で新たに用意したサンプルWebアプリケーションの「乗りログ」を開発する問題です。

「乗りログ」を作ろう

書籍で読んだことを、PyQで実際に手を動かしプログラミングし動かすことで、理解を深めることができます

ご自分で環境を用意するよりも早くアプリケーションを試すことができますので、是非トライしてみてください。

pyq.jp

最後に

Pythonを採用して丸10年という節目に、ビープラウドのノウハウ・知識を書籍としてまとめてくれた会社メンバー(11名)、書籍をレビューしてくれた社内メンバー(16名)、そして社外から唯一レビューに参加してくれた @aodag に感謝します。

そして本書の出版に尽力してくださった秀和システムの平野孝幸さんに感謝します。

「Pythonプロフェッショナルプログラミング 第3版」は「Pythonによる開発のイマを知るのに最適である」と自信をもっておすすめできる書籍に仕上がりました。是非お手にとってお読みください。

Pythonプロフェッショナルプログラミング第3版

Pythonプロフェッショナルプログラミング第3版

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*1:機械学習の顧問としてサイボウズ・ラボの西尾泰和さんに2017年から参画していただき、機械学習を勉強したエンジニアが西尾さんにアドバイスを受けながら手を動かすというカタチでプロジェクトを進めている。勉強と実践のギャップを埋める効果を狙った取り組み(参考URL)

*2: Wikipediaより

決断力を磨くために私が日々考えていること〜羽生善治氏講演「決断力を磨く」に参加しました

2018年4月25日に静岡県の沼津市で開催された、羽生善治さんの講演に参加しました。

講演のテーマは「決断力を磨く」です。

羽生さんの話は18時40分頃から始まり、約1時間20分でした。

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講演内容は、報知新聞のサイトでまとめられています*1

www.hochi.co.jp

羽生善治さんについて

羽生善治さんは昨年竜王に返り咲き、永世7冠となりました。

2018年3月には順位戦A級を勝ち抜き、現在は佐藤天彦名人との名人戦に挑戦中です(2018年5月8日現在1勝1敗)。

棋士はどのように手を決断しているか

羽生さんの話で印象に残ったのは、棋士がどのように指す手を決断するときに、直観で2、3手を選ぶ→ロジック(手を読む)→大局観で選択するという思考の過程を経ているという話です。

1.直観で2,3手を選ぶ

まずは、今までの集大成をもとに、直観で1秒にも満たない時間で2,3手を選ぶ

2.選んだ2、3手の先を読む

選んだのは2、3手でも手の組み合わせは掛け算なのですぐに読むべき手のパターンが爆発する(10手先は3の10乗で6万弱のケース)

3.大局観で手を選択する

大局的な視点で戦略的、抽象的に手を選択する

仕事に必要な決断力

経営の仕事に限らず、日々の仕事では正解が存在することはほとんどありません。

そのため、自分が「正解である」という手を決断する必要があります。

この決断が速ければ仕事は速く進行し、選択した手が正解であれば望ましい結果がもたらされます。

指してみて結果が現れないと正解かどうかがわからないのは、将棋も仕事も一緒です。

私は経営者として日頃から決断の機会も頻繁に訪れます。

私が心がけているのは、なるべく即決することです。

なぜなら私がすぐに判断すれば周りの人がすぐに動き出すことができ、会社やプロジェクトのスピードに直結するからです。

このエントリーでは羽生さんに触発され、決断力を磨くために私が日々心がけていることをまとめます。

仕事のドメインについて勉強・研究し続ける

羽生さんは「まず、直観で2,3手を選ぶ」とおっしゃいましたが、その元になるのは「今までの集大成」です。

集大成とは、棋士で言えば定石や手筋の研究、対戦の経験などです。

一般的な仕事でいえば対象ドメインの勉強や実践経験といえるでしょう。

これらが直観のインプット(材料)になります。

この材料が不足していると、誤った手を選択してしまうことも多くなり、思考も迷宮入りします。

決断力を磨くためには仕事のドメインについて常に学び続け、判断材料を仕入れ洗練させる必要があります。

価値観を育てる

決断するには判断基準が必要です。

判断基準がないと、毎回1から考えなくてはなりません。

判断基準の元となる自分なりの価値観を育て、自分の中で運用されていれば決断は速くなります。

開発者としての価値観を育てたい場合は、まずアジャイル開発の考え方を学ぶと良いでしょう。

最近では開発者に限らず、アジャイル開発の考え方で行動する組織として「アジャイルエンタープライズ(アジャイル企業)」という考え方もあります。

アジャイルエンタープライズ (Object Oriented SELECTION)

アジャイルエンタープライズ (Object Oriented SELECTION)

さまざまな人の考えを知る

人の考え方や、仕事の理論、仕事の方法は無数にあります。

それらは時代とともに変わっていくもので、数は無限に増えていきます。

自分の価値観とは違うことを言う人に対して「なぜそのようなことを言うのか」が分からないという場面は多々あります。

しかし読書などで自分とは違う価値観や考え方、理論も知っておくと理解できたりします。

そのように材料を増やしておくことで、一緒に仕事をする人の背景や考え方も踏まえると新しい手が見えてくることがあります。

直観で行動した結果を判断ロジックにフィードバックする

自分の直観が正しかったかどうか結果をもとに振り返り、判断ロジックを再構築することも必要です。

振り返りにより、どのようなときに自分は選択を間違えるのか、即決を一旦止めたほうが良いのか、直観が当たるのかが分かるようになってきます。

私は仕事以外の場面でも、日頃から直感を磨くようにしています。

shacho.beproud.jp

立ち止まる習慣をつける

勉強をし、自分なりの判断基準を持ち、経験が豊富になってくると、素早く判断できるようになります。

しかし同じ思考回路を繰り返していると、いつしか時代や周りの環境が変わったときも同じ思考回路で判断してしまいます。

同じ思考回路(プログラム)で、同じ出力(判断)を繰り返す状況となり、いつしか時代の変化についていけず偏屈な老害になりかねません。

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決断するべき課題が現れたら、一旦判断を保留し、自分と違う視座(他人の視座)で考えてみたりすることによって新しい思考を得ることが出来ます。U理論でいうと以下の図になります。

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これを日々習慣づけると、思考回路を日々再プログラミングしてアップデートし続けることができ、思慮深い人になれるのではないでしょうか。

大局観で選択する

大局観とはなんでしょうか。WikiPediaには以下のように書かれています。

ボードゲームに置いて、部分的なせめぎ合いにとらわれずに、全体の形の良し悪しを見極め、自分が今どの程度有利不利にあるのか、堅く安全策をとるか、勝負に出るかなどの判断を行う能力のこと。 大局観に優れると、駒がぶつかっていない場所から意表を突く攻めを行うなど、長期的かつ全体的な視野のもと手を進めることが可能となる。

大局観で判断するのと対象的なのは「ベタ読み」で判断することです。

ベタ読みとは目の前の駒の状況を元にひとつひとつ読んでいくことです。これを全てに適用していたら時間はいくらあっても足りません。

匠Methodの要求分析ツリーでいうと、ビジョンや目的レベルに照らし合わせて判断するのが「大局観で判断する」、IT要求、活動レベルだけを見て判断するのが「ベタ読みで判断する」に該当するのではないでしょうか。

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物事を判断する時に「ビジョンに合っているか」「そもそもどのような価値があるのか」という大局的、抽象的、戦略的視点で常に考えることで取捨選択が速くなります。ビジョンから外れていたり、価値が生まれないアイデアはすぐに捨てることができるからです。

このような思考をメタ認知というそうです(弊社メンバーに教えてもらいました)。

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メタ思考トレーニング (PHPビジネス新書)

メタ思考トレーニング (PHPビジネス新書)

まとめ

羽生善治さんの「決断力を磨く」というテーマの講演をもとに、自分が経営者として決断するために日々考えていることをまとめてみました。

羽生さんのように長い間活躍できるように、経営者として名人クラスに決断力を磨き上げていきたいと思います。

*1:記事がいつまで残っているかはわかりません

「匠Method活用法」を読んで、製品、会社、個人に必要なブランディングアプローチを学ぼう

匠Methodの書籍の第2弾となるビジネス価値を創出する「匠Method」活用法が2018年4月20日に発売されました。

ビジネス価値を創出する「匠Method」活用法

ビジネス価値を創出する「匠Method」活用法

本書の構成

本書は以下の構成です。

  • 1章:匠Methodを生み出す過程

    匠Methodの開発者である萩本順三さんが匠Methodにたどり着くまでにどのように過程を歩んできたのかが語られている

  • 2〜4章:匠Methodの基本的説明

    モデルのサンプルを用いながら匠Methodの基本について説明

  • 5〜8章:匠Methodを拡張したArchBRANDINGというブランディングアプローチの説明

2016年12月に出版された匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜との主な構成の違いは、匠Methodに至るまでの過程と、ブランディングについて重点的に説明されていることです。

2〜4章で匠Methodの基本モデルについて分かりやすく説明されていますが、匠Methodについてさらに知りたい人は、前著の匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜を読まれることをおすすめします。

匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜

匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜

匠Methodに至るまでの道

萩本さんは27歳でソフトウェアエンジニアのキャリアをスタートし「複雑多様化した社会やビジネスをまとめてより良い方向へ導くための手法をつくるべきである」という使命を持ち、そのための方法論(メソッド)をつくりあげてきました。

萩本さんはソフトウェア工学を学ぶ中でオブジェクト指向に出会いました。そしてオブジェクト指向をベースに人の認知・心、戦略、価値を見える化しカタチにする方向へと方法論(メソッド)を発展させていきます。その取り組みは20年以上の実践や研究の歳月を経て進化し、匠Methodとして実を結んでいます。

このような匠Methodの成り立ちや背景を知ることで、匠Methodを構成する要素を表面的ではなく立体的に理解し、活用できるようになるでしょう。

ArchBRANDINGというブランディング手法

本書の特徴の2つ目は匠Methodを拡張したArchBRANDINGというブランディング・アプローチの説明に重点が置かれている点です。

ブランドを高めるメリット

製品や会社、そして個人にもブランドがあったほうが何かとメリットがあることはぼんやりと分かっていることでしょう。ブランドを高めるメリットは何でしょうか。

まず、ブランド力がない場合が以下の図です。

f:id:haru860:20180505151632p:plain

ブランドがないので、外向きに力を使い働きかける必要があり、活動に必要な、人、モノ、カネ、情報を得るためにお金をかけたり、時間を使わざるを得ない状況です。また価格も下げざるを得ないかもしれません。

この状態で活動を続けていくと、いつかは力尽きてしまうかもしれません。

一方、以下の図はブランド力が高い場合です。

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活動に必要な、人、モノ、カネ、情報が自然と集まってくる状態です。自然に集まってくるので内部にお金や時間を使うことができます。

このような状態で、お金やリソースをかけて外にアプローチしていくと相乗効果でブランドが広がっていくことでしょう。

ブランドをつくるには

上記のような状態が組織や製品・サービス、そして個人にとって理想的ですが、どのようにしてブランドをつくりあげればよいのでしょうか。

まずはホームページやランディングページをつくったり、ブランドのロゴをつくるかもしれません。

また、日々の開発やマーケティング、カスタマーサポートなどの活動はブランド力を高めることに直結しているでしょうか。

このようにブランドをつくるといっても、なかなか方法が思い浮かびません。

匠Methodを拡張したArchBRANDINGは、ブランディングのためのプロセスを提示しています。

ArchBRANDINGでは、ブランディングに必要な要素として、以下の3つを上げています。

  • Concept(意志):脳

    企業や組織の関係者で共有化されて、文章や体系として「見える化」されている考え

  • Design(表現):顔

    ブランドの価値を示す言葉や形状、表出された具体的な考え

  • Action(活動):手足

    ブランド戦略や企業戦略を「見える化」していく具体的な活動

そしてこれらをつなぐのが、ArchBRANDING:神経・血管です。

本書では、1つの人格をもったヒトのように一貫したブランディング戦略を進めるための考え方とプロセスを説明しています。

意志のあるブランドの威力

本書では「プロダクトのブランディングサイクル」として、以下の3つをあげています。

  • 宣言型ブランディング(自分たちの意志をブランディング:企画・開発期)
  • ユーザー体験型ブランディング(ユーザー体験をストーリーとしてブランディング:発展期)
  • 活動蓄積型ブランディング(自分たちの強みとする活動をブランディング:成熟期)

書籍「リーンブランディング」の著者は、多くの優れたスタートアップがブランディングできずに世の中に知られず廃れていったのと同時に「単純なMVP(実用最小限の製品)しかなくても深い意味の込められたブランド」をもったスタートアップが注目を集め、事業を軌道に乗せて成功した事例を数多く見たといいます。

「単純なMVP(実用最小限の製品)しかなくても深い意味の込められたブランド」をもったスタートアップとは、ここでいう「宣言型ブランディング」をしたスタートアップであるといえるでしょう*1

本書では、自動車業界のコンセプトカーの事例をもとに「宣言型ブランディング」の重要性について説明しています。

「匠Method活用法」とあわせて読みたい

リーンブランディング ―リーンスタートアップによるブランド構築 (THE LEAN SERIES)

リーンブランディング ―リーンスタートアップによるブランド構築 (THE LEAN SERIES)

  • 作者: ローラ・ブッシェ,堤孝志,飯野将人,エリック・リース,児島修
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2016/08/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (3件) を見る

私の匠Method活用について

私はconnpassPyQなどの製品開発や、受託開発の企画フェーズ、そして自身のキャリアデザインに匠Methodを活用しています。

匠Methodを学び始めたきっかけは、2012年4月27日のBPStudy#57で著者の萩本順三さんにお話いただいたとき*2に、匠Methodを知ったことです。

いままで製品企画についてさまざまな手法を調べましたが、匠Methodはアイデアをカタチにするという点で唯一無二の手法であると確信しています。

場合に応じて他の手法*3も使いますがそれは部分的な使い方であり、プロジェクトのアーキテクチャー、羅針盤として機能しているのは匠Methodで作成したモデルです。

匠Methodを学ぶ場である匠道場*4には、2013年1月から毎月参加し、継続して匠Methodを学んでいます。

私は匠道場が2018年4月までに64回されたうち、63回参加しています*5

この参加率の高さから、私の匠Methodへの確信は伝わると思います。

また、カタチにするという点での手法の確かさは、オブジェクト指向をベースにシステム開発から発展してきた匠Methodの起源に由来するものだと思います。

まとめ

よい製品やサービスをつくっただけでは世の中に広まりません。それは会社などの組織や人においても同様です。

良いものをつくった人、そしてチームにはその価値を世の中に広く伝え、その価値で良い方向に世界を変えていく使命があります。

そのときに核となるのがブランディングです。

匠Methodでは「内の価値と外の価値の両立が重要」という考え方があります。

よいものをつくった段階は「内の価値」ができた段階です。

匠Method(ArchBRANDING)によって「外の価値=見せる価値」を見える化し、活動までつなげていくことで「価値を世の中に広め、良い方向に世界を変えていく」使命を果たせるようになるのではないでしょうか。

そのようなブランディングをしたいチーム、組織、個人に本書をおすすめします。

ビジネス価値を創出する「匠Method」活用法

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あわせて読みたい

匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜

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*1:「宣言」するタイミングですが、MVP(実用最小限の製品)が出来たくらいのタイミングが良いでしょう。それより早いとまだ方向性も定まっていないことも多いからです。

*2:直接の知り合いではありませんでしたが、浅見智晴さんにご紹介いただき、お話いただきました。依頼させていただいたのは、Publickeyに掲載された記事「Top DevOps / アジャイル開発 特許庁の基幹システムはなぜ失敗したのか。元内閣官房GPMO補佐官、萩本順三氏の述懐」を読んだのがきっかけです。

*3:ビジネスモデルキャンバス、バリュープロポジションデザイン、カスタマージャーニー、UXブループリントなど

*4:匠道場とは、匠Methodのライセンスを購入している企業の社員が参加できる匠Methodを学ぶ場。2013年1月から毎月1回開催されている

*5:不参加は2013年3月の第3回開催のみ

「カイゼン・ジャーニー」はアジャイル開発への誘いの書

界隈で話題の「カイゼン・ジャーニー」を読みました。

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

書籍の概要(ストーリー)

「カイゼン・ジャーニー」の主人公は、江島という20代の若手エンジニア。

忙しく混乱した日々の仕事を懸命にこなす毎日。

そんな開発現場や会社の体制に不満を抱えてはいるものの、状況を変える何かを自分でできているわけではない。

そのような日常から話(ジャーニー:比較的長めの旅行)はスタートします。

社外勉強会での出会いをきっかけに、主人公が行動を起こしていくストーリーです。

おすすめしたい人

  • 仕事で成長したいエンジニア
  • いまどきのアジャイル開発を学びたい人
  • アジャイル開発導入を検討している/取り組んでいる開発プロジェクトのリーダー
  • エンジニアの気持ちを知りたい人
  • 自社の勉強会を開催している人/開催を検討している人

本書の特徴

「カイゼン・ジャーニー」を読んで感じた特徴を紹介します。

現場あるあるが面白い

プロダクトの開発や受託開発に限らず、システム開発の現場では日々さまざまな問題や事件が起こります。

そのような現場で良く起こることを、飲み会のネタで話したりします。

本書ではそのような既視感のある場面が次々と登場し「あー、あるある」と思いながら読み進めました。

そのような開発現場で発生する問題を主人公の江島がどのように解決していくのか。

それが本書の見どころの一つです。

こういう人いるいるが面白い

本書はストーリー仕立てなので、さまざまな登場人物が登場します。

開発現場にもさまざまな職種な人がいますし、人のタイプや特徴もさまざまです。

本書では「あー、こういう人いるいる」と思えるような人たちが登場します。

自分だったらこのような人たちとどのようにコミュニケーションするだろうとイメージしながら読みました。

アジャイル開発、チーム開発のさまざまなプラクティスを学べる

本書ではアジャイル開発、チーム開発、リーダーシップに必要な手法や考え方がストーリーの中に散りばめられています。

タスクボード朝会KPT事実・意見・対策重要と緊急のマトリックスWIP制限(緊急割り込みレーン)素朴理論建設的相互作用学習する組織(氷山モデル)スクラムスプリントプランニングスプリントボードインセプションデッキゴールデンサークル組織の成功循環モデルWorking Agreementドラッカー風エクササイズファイブフィンガースプリントレビュークネビンフレームワークリファインメント狩野モデルむきなおり星取表(スキルマップ)モブプログラミング、モブワーク、バリューストリームマッピングECRSカンバンポストモーテムタイムラインふりかえり感謝のアクティビティタックマンモデルリーダーズインテグレーションモダンアジャイルアジャイルな見積もりと計画づくりプランニングポーカーリリースプランニングパーキンソンの法則CCPM(Critical Chain Project Management)YWTスクラム・オブ・スクラムアーキテクチャーと組織構造(コンウェイの法則)デイリーカクテルパーティーユーザーストーリーギャレットの5段階仮説キャンバスユーザーストーリーマッピングMVP(Minimum Viable Product)ユーザーインタビューSL理論ハンガーフライト

いまどきのアジャイル開発の考え方、手法、そして現場で役立つ理論が並んでいて、眺めるだけでもワクワクするようなキーワードが並んでいます。

自分の状況と照らしあわせて使えそうな手法や理論をさらに深掘りして調べてみると、いま自分が抱えている問題を解決する糸口になるかもしれません。

上記のプラクティスをストーリーの中で学べるので、活用場面のイメージがつきやすいのも本書の特徴です。

貫かれている価値観:越境

仕事の目的は価値を実現することです。

アジャイル開発もユーザー価値の実現が目的です。

しかしユーザー価値を実現するためにプロジェクトやをスタートしても、目の前の仕事に取り組んでいくと仕事を遂行することに必死になり、視野が狭くなります。

視野が狭くなると、仕事自体が目的化します。

プログラマーでいうと目の前のプログラミングタスクを完遂していれば、自分の仕事はこなしているというように考えることです。

プログラマーの仕事はプログラミングすることではなく、ユーザー価値を実現することです。

価値を実現しないプログラムをいくらつくっても、その仕事には意味がありません。

人の性質として、自分の安全な領域「コンフォートゾーン」をつくり留まろうとします。

コンフォートゾーンの周りには「境界」がうまれます。

この境界内に留まると視野が狭くなり、ユーザー価値を実現する行動から遠のいていきます。

本書のストーリーでは、この「境界」を「越境」するという考え方が貫かれています。

越境するには勇気が必要です。

越境すると一時的な混乱が生まれ、失敗のリスクも高まります。

仕事では一度境界を越境しても、また新たな境界が生まれその境界をまた越境するということの繰り返しです。

主人公の江島が「越境」を繰り返し成長していく姿を、ハラハラしながら読みました。

最後に

3月で仕事が山積みです(今も)。

しかし本書を読み始めるとすぐに次が読みたくなり、一気に読み終わりました。

本書はシステム開発の現場の情景がリアルに描かれていて、かつ最新のアジャイル開発のプラクティスが学べます。

カイゼン・ジャーニーは、エンジニアに限らず、IT、システム開発に関わる人すべてにおすすめの書籍です。

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで