ビープラウド社長のブログ

株式会社ビープラウドの社長が、日々の思いなどを綴っていきます。

受託の会社が調達せずに自社サービスを立ち上げ事業として成立するまでの企画・開発・サポート・マーケティング:ヴェルク田向さん〜BPStudy#120 その1

2017年8月31日にBPStudy#120が開催されました。

2007年9月に第1回を開催し、毎月1回のペースで開催してきていますので、丸10年の節目となる開催です。

第1部は株式会社ヴェルク代表取締役社長の田向さんに発表頂きました。

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ヴェルクさんは、受託開発とサービス開発を両立していて、サービスとしてはboardという、請求書や見積書などの書類作成、受発注、請求・入金などの業務管理、売上やキャッシュフロー予測などの経営分析のためのクラウドサービスを運営しています。

the-board.jp

boardはリリース3年で有料の顧客が900社を超え、順調にサービスが伸ばしているということもあり、そのノウハウをお話いただきたいと思い、お声がけしました。

boardはビープラウドも3年前からboardを使わせていただき、ユーザー事例も掲載いただいています。

the-board.jp

田向さんの発表資料は以下です。(はてなブックマークが2017年9月16時点で883!

あらためて資料を拝見し、私に刺さったポイントをまとめてみました。

事業戦略

  • いろいろ方法があるなかで、重要なのは、やり方ではなくどうやるか
  • リソースは限られているので、やることは本当に重要なもの、自分たちが強いものに絞る
  • 知名度が無いので、圧倒的なサポートで差別化。お試しした人に続けて使ってもらう
  • サービス成長が遅いと事業継続が厳しいのでは?→受託事業があり、外からのプレッシャーがないので収益化を急ぐ必要はなかった(当初は売上の座布団になれば良い程度で考えていた)
  • 他のサービスと比べて「明らかに良い」ではないと売れない。多くの人は「ちょっと良い」程度だと有名な方を選ぶ
  • 月額、980〜5980円なので、訪問したら赤字。依頼があってもお断りしている。来社、Google Hangoutなどリモートでの面談はやっている。個別相談会でフォロー
  • 開発ロードマップは好評。ユーザーとの信頼を構築する方法の一つ
  • 力を入れない、後回しにするとした分野はゼロではなく、少しずつ地道な活動をして経験値を貯めておく

企画

  • 限られたリソースの中ではドッグフーティングできる分野を選択することは重要
  • 競合を参考にしていては差別化できない
  • スモールスタートというが、スモールすぎると前に進まない。バランスは重要
  • 自分が素人の分野に時間をかけるのはリスク
  • 売れないものをコストをかけてつくってしまうリスクを下げるため、社内用α版(自社の業務がまわるか)、クローズドβ(知り合いを中心に外部に使ってもらう)、パブリックβ(十分な完成度)と進めた
  • 無駄なものをつくらないために、競合は見ない。つくる機能を吟味する。あったらいいねレベルはつくれない
  • ユーザーの声は改善の源泉だが、大きな声に左右されない軸は必要

開発

  • 独自UIの実装は時間が掛かるので頑張らない(まずはbootstrap、JQueryの世界で)
  • 時間をかけるのは、業務フィット感やユーザ視点での完成度
  • 多機能ではなく完成度を高める
  • 自動テストは事業成立がわからない段階では力を入れない。事業として成立したら、安定した継続開発のために力を入れる
  • 初期の頃は機能実装が優先で、3年目くらいからリファクタリングなどの改善に時間を割けるようになった
  • セキュリティは専門ではないので、お金で解決。WAF=Scutum、IDS・IPS=DeepSecurity、セキュリティテスト=VAddy
  • 他のメンバーが開発に入った時、同じ完成度でリリースするためには、開発スケジュールは倍は想定する。時間がかかることが問題ではなく、想定しておくことが重要

サポート

  • 開発者がサポートに関わるのはつらいこともあるがおすすめ。使いにくい機能をつくらないようになる、肌で優先度の強弱を感じられる、30分で実装ができることで問合せが減るような改善に気づけるなどのメリットがある
  • 問い合わせ対応はintercomを使ったチャットサポートのみ。メールが来てもチャットに誘導している
  • サポートは即レスで一発で正しい回答が重要。それしかない。
  • ヘルプを充実して、簡単に説明後、ヘルプへ誘導している(効率向上、自分で調べてくれるようになる)。ヘルプが不十分な場合は、その場で追記して回答、その場で改善する。
  • チャットだからといって、五月雨式にメッセージを送らない(ユーザーも問合せ後、他の業務に移っていることがほとんど)

PR・マーケティング

  • サービス名のユニークさ重要。「board」という名前で当初はSEOで苦労した。「請求書」というキーワードでも差別化しにくい
  • メディア露出がうまくいかない場合、事例インタビュー、ブログなど地道な活動で知ってもらう
  • サービスを使いたくて登録した会員に、メルマガは送りたくない。メルマガの手間を開発にあてたい
  • 過度な表現はしない。ギャップにがっかりさせることになり逆効果。信頼感を落とす
  • 初期ユーザーの獲得。開発中からTwitterでつぶやいて身の回りの人に、何か作っていると知ってもらう

感想

田向さんは「自分たちは、資金調達をしメディア露出も採用もうまくできているスタートアップとは違うので、自分たちのやり方を選んだ」とおっしゃってますが、スタートアップでも大企業でも、本来リソースは有限です。

たとえ資金が潤沢でメディア露出や採用がうまくいっている企業でも、その上にあぐらをかき、戦略を研ぎ澄ませずにムダな動きをしていては、数年で淘汰されるでしょう。

自分たちを見つめ自社にあったかたちで、地に足をつけて着実に事業を伸ばしていくスタンスは、多くの企業に参考になるでしょう。

田向さん、ありがとうございました!

DDD AllianceのLTで登壇しました

2017年8月30日(水)にDDD AllianceのLT(時間10分)で登壇しました。

ddd-alliance.connpass.com

以下が発表資料です。

LTのきっかけ

LTのきっかけは現場で役立つシステム設計の原則 〜変更を楽で安全にするオブジェクト指向の実践技法の書評をブログで書いたことです。

shacho.beproud.jp

はてなブックマークが500を超え、そのタイミングで書籍の売上も伸びたそう(私のブログからも2日間で70冊売れました)なので、DDD Alliance運営の高崎さんからお声がかかりました。

LTの内容

「現場で役立つシステム設計の原則Night!」という全体テーマなので、オブジェクト指向に関係することで内容を検討し、UMLを中心とした図解の効果について話すことにしました*1

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プログラマーは図解が苦手?

プログラマーはプログラムを書くのは得意ですが、図解は苦手な人が多いと感じます。

やればできるのかも知れませんが、文章で情報を表現する人がほとんどです。

テキスト以外はキーボードに打ち込むのが面倒くさいのかも知れません。

図解の効果

プロジェクト(特にシステム開発プロジェクト)における図解の代表的な効果は、以下の3つです。

  • コミュニケーションコストの削減
  • ミス発見の可能性の向上
  • 設計の向上
コミュニケーションコストの削減

1枚の図は1024の単語に値する*2という言葉にあるように、図には多くの情報を盛り込めますし、ひと目で情報の全体像を伝えることができます。

ひと目で理解できるということは、理解する側のコストを削減することであり、プロジェクト全体のコスト削減につながります。

読み手の負担が削減されることで、読み手から積極的なフィードバックが得られます。逆に負担が大きい場合は、読み手は理解することをあきらめてしまうことが多く、フィードバックも得にくくなります。

情報伝達は伝達する側が手抜きをすることで、理解する側のコストがあがります。複数人に情報を伝達する場合、その後にかかるコストは膨大になります。

文章は読み手が頭のなかで情報構造を組み立てながら内容を理解する必要があります。

図はすでに情報構造が組み立てられていますので、情報構造の組み立てをスキップすることができ、内容の理解から始めることができます。

ミス発見の可能性の向上

図は全体を俯瞰でき、視点を移動しやすいので、違和感を感じる部分に気づきやすくなります。図はプロジェクトのたたき台に最適で、プロジェクト全体の品質アップに役立つでしょう。

設計力の向上

図が複雑になりすぎているときは、設計が複雑になっているサインです。作成した図を「もっとシンプルにできないか?」という視点で見直すことで、改善点に気づくことができます。常にシンプルに図を洗練させるように心がけることで、設計力が向上します。

図解ができるようになった理由

私も最初から図解ができたわけではありません。

なぜ、できるようになったのか。

それは型を覚えたからです。

型とはUML(Unified Modeling Language:統一モデリング言語)のことです。私の経験上、システムに関係することがらの80%はUML表現できます。

どのようにマスターしたのか

私は16〜7年前から「自分の頭の中を表現するには、UMLのどのモデルを使えばよいか」と考えていました。そのように日頃の仕事で図をつくり、プロジェクトメンバーと共有し、フィードバックを得ているうちにUMLをマスターしていきました。

図解ファーストを心がける

心がけていたのは、文章に図をつけるのではなく、図に文章をつけるということです。

図のなかに文字をいれるときは、文章ではなく単語や単文で表現することで、読み手が図を直感的に理解できるようにします。

UMLはオワコン?

UMLがメディアなどに話題にのぼらないからといって、UMLが役に立たないわけではありません。オブジェクト指向はソフトウェア開発に関わらず、現実世界を捉えるのに有効な考え方です。

オブジェクト指向で捉えた世界をモデルで表現するためのツールがUMLです。オブジェクト指向が有効だとしたら、UMLも有効なはずです。

ドキュメントのメンテナンス問題

ドキュメントや図を作成すると、開発していく中で、保守されなくなるという問題があります。

そのため、ソースコードをいちばん重要なドキュメントとして扱うべきという考えがあります。

これはある面では正しいですが、これだけだと片手落ちです。

機能単位のドキュメントはソースコードで十分な場合が多く、機能単位で図をつくりすぎてしまうと、ドキュメントがメンテナンスされないという問題に陥ります。

一方、システム全体をソースコードで理解するのには時間がかかりますし、スキルにも依存します。

システム全体の理解を共有するには、図解で俯瞰したドキュメントが必要でしょう。

RUP(Rational Unified Process)に「アーキテクチャー中心」という考えがありましたが、アーキテクチャーの一貫性を保つためには、ソースコードではなく図によるドキュメントが理解共有の助けになるでしょう。

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最後に

今回LTの機会をいただき、オブジェクト指向、UML、図解についてあらためて考えてまとめる良い機会になりました。

図を情報を表現できると、コミュニケーションコストの削減につながります。

図解により、情報共有ができるひとはプロジェクトの中で価値ある役割を果たしているといえます。

いままで、図をあまり作成してこなかったというひとは、ノートに簡単な図を書くことから始めてみてはいかがでしょうか。

図の作成は、型を覚えて場数をこなせば書くのが速くなりますし、ビジネスや開発において大きな武器になることでしょう。

*1:本来は書評をLTで話すという趣旨だったようですが、私は「書評を書いた人のLT」と認識し、書籍に関係することならフリーに話して良いと考え、このテーマになりました。他の方は書評について話していました

*2:ソフトウェア要求

ソフトウェア要求

ソフトウェア要求

より

PyCon JP 2017に参加しました

2017年9月7日〜10日に開催された、PyCon JP 2017 に参加しました。

pycon.jp

スポンサー

チュートリアルスポンサー

初日の9月7日に「明日から使えるプログラミング入門 〜Pythonを右腕にしよう〜」というテーマで、ビープラウドメンバー4人でチュートリアルを開催しました(企画には10人以上のメンバーが関わっています)。

チュートリアルは、弊社サービスのオンラインPython学習プラットフォームのPyQをベースに進行しました。

昼には、私も参加者の皆様とランチをご一緒させていただき、お互いに自己紹介や参加動機などを話しました。

ランチを一緒に食べたせいか、午後は、質問などの活発なやりとりが生まれていました。

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パトロンスポンサー

今年からパトロンスポンサーの名前も、掲示されました。 f:id:haru860:20170908093936j:plain

自分の名前が掲示されているのは、特別感があって嬉しかったです。

(この幕の前で、はしゃいでる写真を誰かに撮影してもらったと思いますので、探したいと思います。)

追記:見つかりました!撮影:@natsu_bm

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シルバースポンサー

ビープラウドは、2011年のPyCon JP mini から、PyCon JP 2011PyCon JP 2012PyCon APAC 2013PyCon JP 2014PyCon JP 2015PyCon JP 2016PyCon JP 2017と、全てスポンサーをしています。

PyCon JP miniから、2017年までずっとスポンサーを続けているのは、株式会社Nexediとビープラウドのみです。スポンサーを続けていられることは、ひそかに誇りに思っています。

ブース

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企業ブースでは、おもにPyQについて、来場者に説明しました。

PyConの前日に、機械学習、データ分析などのコンテンツをリリースしました。

このコンテンツをリリースしたおかげか、多くの方にブースに来ていただき、休憩時間も取りにくいほどでした。

そして、製品のアイデアについて、さまざまなフィードバックをいただきました。

また、昨年よりも企業ブース同士の交流が多かったように思います。

PyQチームのブログでも、当日のレポートがあがっています。 blog.pyq.jp

セッション

今年は、ビープラウドから4人が登壇しました。4〜5倍の倍率での当選と聞いていますので、なかなかの当選率と思われます。それぞれ参加しましたが、日頃の成果を活かした密度の濃い発表だったと思います。*1

www.slideshare.net

www.slideshare.net

slideship.com

資料:Pythonをとりまく並行/非同期の話

最後に

チュートリアル、カンファレンス1日目、2日目、Party 、ウェルダンパーティーと参加させて頂き、さまざまな方々と、お話させていただきました。

また、ビープラウドメンバーも生き生きと活動していました。

ここ数年の活動が実を結んできた感覚もあり、充実したカンファレンスとなりました。

このような価値を感じられるのも、スタッフの皆様方のおかげです。

ビープラウドとしても、PyCon などのコミュニティにこれからも貢献できればとおもいます。

スタッフの皆様方、本当にありがとうございました。

*1:BPPR(BeProud Public Relations) :ビープラウドの社内制度。イベントでの発表でビープラウドを宣伝した場合、次のことが適用される(1)イベント参加時間を出勤扱いとする(2)イベント参加費(交通費を除く)の補助(2017年9月現在)

プログラミングを学ぶとなにがよいのか〜流山高校で講義してきました

2017年8月25日に、千葉県立流山高校で講義をさせていただきました。

あと数年で社会に出る生徒達が、進路を考える際に少しでも役立つようにと、内容を考えました。

以下は、講義の資料です。

全体の流れ

人が取り組むべきこと(キャリア、やりたいこと)は、以下の式で考えられます。

機会(ニーズ)強み(シーズ)= 取り組むべきこと(キャリア、やりたいこと)

生徒たちが、自分のやりたいことをみつけるためのヒントを得られるように、講義はこの式に従い進めました。

機会(ニーズ)を捉える

取り組むべきことを考えるには、時代のニーズを捉える必要があります。自分がやりたいと思っても、世の中から求められていなかったら、収入を得られません。

お金のために仕事をする訳ではないとはいえ、収入が得られないということは、取り組んでいることが、その時代や世の中では価値がないとも考えられます。

受講生は、日頃プログラミングを学んでいる生徒たちだったので、プログラマーをテーマの中心として、プログラマーに対するニーズや、現代の世の中の流れ、プログラマーの仕事について、以下のようなお話をしました。

  • プログラマーが世の中で必要とされている
  • 時代の大きな流れ

    • 日本が人口減少の時代=人間の代わりが必要な社会(ロボット、AI)
    • 第4次産業革命(AI・機械学習の発展)
    • スマホ・タブレットなどの普及による情報爆発
    • すぐに始められる社会
  • プログラマーの仕事とは

強み(シーズ)を見つける

世の中のニーズに応えて仕事をしているだけでは、自分の持ち味を発揮できず仕事も長続きしません。自分をおさえ続けた結果、燃え尽きてしまうこともありえます。

世の中に価値を生み出し続ける仕事をするには、自分は何が強いのか?自分の性格は?自分の好きなことは何か?などを模索しながら、自分が取り組むべきことを考えます。

それが仕事をする幸せにもつながります。

なぜ勉強するのか

「学生の本分は勉強」といいますが、そもそも人はなぜ勉強するのでしょうか。

「良い学校に入るため」「良い会社に入ってやりたいことをやるため」などが理由として考えられます。

「人はなぜ勉強するのか」という書籍がありますが、講義ではこの書籍の内容をかんたんに説明しました。

説明した内容を、以下に抜粋します。

(P.26)

「自分探し」の勉強*1を続けるうちにやがて機が熟すと不思議なことが起こります。それは、自分のかけがえのない尊い持ち味を見つけてそれを鍛錬し、卓越した状態にまで高める「卓越性の追求」の志と、人々みんなの公共の幸せのために進んで役割取得をする「普遍的な自己実現」の志とが、わが志において一つに結びつくことです。これを「立志」といいます。

(P.27)

つまり立志とは、自分の持ち味を発揮することが世の中の人々のために役立つという自分独特の道を見つけ、その道に志すほかならないのです。だから立志とは自分の人生をデザインすることなのです。

(P.29)

「自分探し」の勉強をして自分の尊い持ち味がわかり、その持ち味を発揮して人々の幸福に役立つ道を見つけて「公なるもの」への役割取得をなし、生きがいのある人生を送るような人生のデザインをすることこそ、人はなぜ勉強するのか、学ぶのかという問いに対する基本的な答え

「なぜ、勉強するのか」という問いに対する回答を以下にまとめます。

  • 自分探しの勉強

    勉強を通じて、自分の持ち味を見つける。それを卓越した状態にまで高める

  • 立志

    人生のデザイン。持ち味を発揮し、社会での役割をみつけ生きがいのある人生を送る

勉強とは、自分の強みを見つけるためのきっかけであると言えるのではないでしょうか。

チームワークの重要性

スキルさえ身につければ人と話さなくて良い、関わらなくて良いからという理由で、プログラマーを仕事として選択する人がいます。

しかし、この認識は誤りです。

なぜなら、現代の専門知識は高度化し、かつ進化が速いので、成果を出すために必要な専門知識をひとりで全て学ぶことは不可能であり、他の人と仕事をしないと価値や成果をつくりだせないからです。

そのため、価値や成果をつくりだすためには、相乗効果を発揮するためのチームワーク、人との協力が欠かせません。

P・F・ドラッカーの言葉の以下の言葉が、これを現しています。

知識労働者の専門知識はそれだけでは何も生まない。他の専門知識と結合して初めて生産的な存在となる。

自分の価値を高める社会での立ち位置を考える

1つのスキルを身につけたとしても、それだけで一生は生きていけません。

なぜなら、現代は変化の速い複雑な社会だからです。

また、同じようなスキルをもつ人が世の中に多くいる場合、よほどそのジャンルを極めて、レベルが高くない限り一流にはなれません。

加えて弁護士、医師、会計士、経営など専門職の仕事でさえも、AIが代わりを務めることができる事例が生まれてきています。

複雑な社会で価値を生み出すには、単一のスキルだけではなく、複数のスキルや知識、強みを組み合わせて、変化に対応し、価値を創り出す力が必要です。

掛け算で組み合わせたスキルや経験が、その人の「個性」であり、「生きていく力」であるといえるでしょう。

そして、その掛け算で組み合わせた希少性が、社会でのその人の立ち位置となり、価値を高めることでしょう。

続けることの重要性

講義では「これだ」ということを始めたら、ある程度は続けることの重要性を伝えました。

これは、ドラクエの転職にたとえて説明しました。たとえば、戦士が、魔法使いなど他の職業に転職したとしてもレベル2や3ですぐに転職してしまったら、後の戦いで、魔法使いの能力は使えません。

なぜなら、後の戦いでは、自分自身の戦うステージが上っているからです。

つまり、あきらめてしまったものに使った時間そのものがムダになる可能性が高くなります。

1つのことを上達するには、10,000時間が必要と言われています。

学生とはいえ、10,000時間を確保するのは、至難の業です。

「人生の時間は貴重」ということをお伝えしました。

やりたいことを掛け算で考える(ワーク)

最後に、それまでの話を踏まえて以下の式にもとづいて各個人の「やりたいこと」を考えてもらいました。

プログラマーが必要とされている(機会:ニーズ)自分の得意なこと・好きなこと・性格(強み:シーズ)やりたいこと

生徒からは、以下のアイデアが共有されました。

  • プログラミングラジコンが好き = ドローンの仕事
  • プログラミング 映画が好きボランティアが好き = 新興国に映画配信
  • プログラミングAI楽したい性格プログラミングするAIをつくる

どれも感嘆する素晴らしいアイデアでした。是非とも実現してほしいと思います。

最後に

数日後、生徒たちからお礼のコメントをいただきました。

高校生への講義は初めての経験でしたが、私自身、本質的なことを考える機会となり、日頃得がたい貴重な経験をさせていただきました。

お声がけいただいた 秋川能徳先生、ありがとうございました。

*1:人類文化系の各分野各教科科目に全力でぶつかって勉強して自分を試してみることによって、自分のかけがえのない持ち味がどこにあるのかを見つけるための勉強

Pythonistaのコミュニケーションとは?〜みんなのPython勉強会#27で登壇しました

2017年8月9日に開催されたみんなのPython勉強会#27で登壇してきました。

startpython.connpass.com

以下は、発表スライドです。

全体のテーマ

2008年からPythonで仕事をして来て、私が気づいたPythonistaたちのコミュニケーションの特徴や、Pythonの勉強の仕方、そしてアウトプットの重要性などをテーマにお話してきました。

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いくつかのトピックをピックアップしてお伝えします。

Pythonistaのコミュニケーションの特徴

The Zen of Pythonになぞらえて、コミュニケーションの特徴を説明しました。社内にフィードバックしたところ、赤字の反応を得られました。

まずルールを決める

Spcial cases aren’t special enough to break the rules. 特殊であることはルールを破る理由にならない。

あとで何度もルールを説明するのが面倒なので。

ドキュメントを積極的に書く

Explicit is better than implicit. 暗示するより明示する方がいい。

あとで何度も説明するのが面倒なので。説明しなくて良いようにドキュメントにする。

曖昧な発言は諭される

In the face of ambiguity,refuse the temptation to guess. 曖昧なものに出逢ったら、その意味を適当に推測してはいけない。

  • 何度も確認するの面倒なんで明確に言ってほしい
  • 話し手が手抜きしようとした分、聞き手に負荷がかかるだけ
  • コミュニケーションにかかるトータルコストのこと考えてほしい

面倒でムダなことが嫌い、良い意味で怠惰といえるでしょう。

弊社はリモートワークを積極的に導入し( BPRD2.0(BePROUD Remote Day 2.0) - ビープラウド社長のブログ )、チャットツールSlackを使ったコミュニケーションが中心です。

したがって文字ベースのコミュニケーションスキルを高めることによって仕事の効率化され、ムダのないワークスタイルにつながります。

ビープラウドは残業時間が少ない方だと思いますが、このワークスタイルが残業時間削減に一役買っているといえるでしょう。*1

アウトプットする重要性

アウトプットにより、学んだ知識や技術を確かなものにするということをお伝えしました。

アウトプット先として、以下の3つをあげました。

  • ブログなどにアウトプット
  • プロダクト、サイト、ライブラリをつくる
  • 勉強会・カンファレンスで話す

アウトプットする中で、知識を咀嚼してまとめ、自分なりの言葉で説明できるようにする、形式知化の重要性をお伝えしました。

形式知化の恩恵を受けるのは自分

自分の知識を形式知にすることで、最も恩恵を受けるのは自分です。

人に伝えることを意識することで、曖昧な点を調べたりまとめているうちに知識が定着します。

しかし、学んだことや本に書かれていることをそのまま聞き手にアウトプットしたり聞き手に伝えるのでは、あまり意味はありません。

自分の他の知識と組み合わせ、自分なりの言葉で伝えるようにすると、知識を咀嚼でき真の意味で自分の形式知になるでしょう。

ブログを書くためにライティングを学ぶ

ブログを書くために、ライティングを学ぶと効果的ということも最後にお伝えしました。

私はいつもブログを書く頻度が年々減っていて、今年は6月まで1件でした。

しかし、6月6日に落合博満氏の講演を聴講し(練習は嘘をつかない〜落合博満氏講演2017.06.06 参戦記 - ビープラウド社長のブログ)、ブログを再開することを決意しました。

ライティングの書籍として、以下の2冊を読みました。

6分間文章術――想いを伝える教科書

6分間文章術――想いを伝える教科書

売れる文章術

売れる文章術

そして、なんとエンパシーライティングで初めて書いたエントリーが、はてなブックマークでホットエントリー入りしました。

shacho.beproud.jp

気を良くした私は、ブログを書くスピードをアップするため、上記書籍で説明されているエンパシーライティングのオンラインツール「iEmpathy」を使用したところ、文章構成のスピードと質が劇的にアップしました。

また、iEmpathyの画面内の誤字をメールで報告した際にブログの成果をお伝えしたところ、エンパシーライティング開発者の中野巧さんの公式ブログでご紹介いただけました。

iEmpathyを使った具体的な効果は、以下のブログを参照してください。

blog.empathywriting.com

忙しい合間をぬってブログを書くためには、書く時間の短縮が必須です。ブログを書き続けたい方は、ライティングを学ぶことをおすすめします。

最後に

connpass運営が選ぶこのコミュニティがすごいでも紹介しましたが、Start Python Clubさんは、毎回100人以上集まる勢いのあるコミュニティです。

そのコミュニティに参加させて頂き、Python人気の盛り上がりを感じました(噂のビールサーバーも良かったです)。

また、何かの折に発表させて頂けるよう、精進していきたいと思います。

*1:「コミュニケーションの効率化」というと冷たく感じる方もいるかも知れませんが、Pythonistaたちも効率化を目指しながら、コミュニケーションが冷たくならないように配慮しています。

文武両道は二流?〜指導者のあるべき姿とは

夏の甲子園、山口県代表の下関国際高校野球部監督のインタビュー記事がネット上で話題を集めていました。

togetter.com

この記事をもとに、自主性 or 強制?〜指導者のあるべき姿とは(前篇)では、選手を育てる「賢明な監督」について書きました。

後編の今回は「文武両道」をテーマに書きます。

冒頭の記事から、文武両道に関するコメントを抜粋して引用します。

――野球と勉学の両立は無理と?

無理です。『一流』というのは『一つの流れ』。例えば野球ひとつに集中してやるということ。文武両道って響きはいいですけど、絶対逃げてますからね。東大を目指す子が2時間の勉強で受かるのか。10時間勉強しても足りないのに」

――文武両道は二流だと?

「そういうことです。勉強しているときは『いや、僕野球やってますから』となるし、野球やっていたら『勉強が……』となる。“練習2時間で甲子園”って。2時間って試合時間より短い。長くやればいいってことではないけど、うちは1日1000本バットを振っている。1001本目で何か掴むかもしれない。なのに、時間で区切ってしまったら……。」

「学生の本分は勉強」といいます。

しかし人生の一時期に勉強以外のもの、例えば「甲子園」というひとつの目標に向かって努力する時期があっても良いと私は思いますし、部活動で得られるものは多いでしょう。

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以下に、部活動(野球部などスポーツ系に限った話ではありませんが、ここでは主に野球部)で得られるものを3つ説明します。

  • やり抜く力
  • 感謝を土台とした努力する姿勢とポジティブシンキング
  • スポーツマンシップ

やり抜く力を身につけられる

前編でもあげた書籍のやり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につけるでは、子供のGRIT(やり抜く力)を育てるために「課外活動(勉強以外の活動)」を絶対にすべしとしています。

調査では、2年以上頻繁な活動をした子は将来の収入が高いという結果が出たそうです。

逆に、将来の収入と勉強の結果に相関関係は見られませんでした。

書籍では、2年以上頻繁な活動をした子が将来の収入が高い理由を以下のように考察しています。

  • 青年期に何らかの活動をやり通すことは、やり抜く力を要するとともに、やり抜く力を鍛えることにもなる
  • 活動に取り組んでいくうちに、周りの人から多くを学ぶ
  • いろんな経験を重ねるうちに、自分にとって何が重要なのか、その優先順位がわかってくる。そのような中で人格が育まれる
  • 努力を続ければ結果が出ることを学べる

課外活動を通じて、人生に必要な「やり抜く力」を身につけることができます。

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

感謝を土台とした努力する姿勢とポジティブシンキング

サッカー・インテルの長友佑都選手は書籍の上昇思考幸せを感じるために大切なことで、中学時代の顧問井上博先生から「自分づくり」「仲間づくり」「感謝の心」が人としての3本柱になると繰り返し教わったことが自分の出発点になったと述べています。

そして「ひとつひとつのことに感謝の心を忘れずピッチに立って、ボールを蹴らなければならない、そうでなければサッカーを続ける資格はない」と言われ続けたそうです。

自分づくりは、こんな人間になりたいという目標をつくって、それに向かって最大限の努力を続けていくこと。仲間づくりは、その過程において、自分は一人きりの存在だとは考えず、家族や友達といった仲間を大切にしていくこと。そして感謝の心は全ての土台になるものだ。

長友選手は、感謝の心をもっていることで、なんとか恩返しをしようと考えるようになり、それが「努力」や「ポジティブシンキング(前向きな心)」に密接につながり、最終的に競技の結果につながるといいます。

その過程が、選手の人格を育て人生を生きていくための財産になるでしょう。

上昇思考幸せを感じるために大切なこと

上昇思考幸せを感じるために大切なこと

スポーツマンシップを身につけた人材に

野球部出身者はろくなものがいない?

少し前にマツコ・デラックスが、「野球部出身者は十中八九、クソ野郎」 と発言し、話題になりました。

たしかに野球部は、練習が厳しく前世代的なイメージがつきまといます。

桑田真澄氏の「野球道」

なぜ、野球部は前世代的なイメージがつきまとうのでしょうか。

その理由を、元巨人軍の桑田真澄氏が東大と野球部と私――勝つために大切なことは何かの中で説明しています。

強い兵隊育成のための指導

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野球が日本で本格的に始まった頃は、戦争中で国の課題も兵隊を育てることでした。

そのような時代の背景で、兵隊を育てるために「武士道」をもとにした指導が良しとされました。

精神の鍛錬、絶対服従、膨大な練習量を選手に強制する指導です。

それがいまだに根強く残っているのが学生野球だと、桑田氏は述べています。

このような指導を学生時代に受けた人が監督になり、疑問を持たぬまま次世代に引き継いでいるというのが現状なのでしょう。

社会で活躍できる人材の育成のための指導

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それに対し、桑田氏が提唱するのは「スポーツマンシップ」を軸とした野球道です。

ここでの指導は、社会で活躍できる人材の育成を目的としています。

心の調和、練習の質の重視、尊重を価値観として重視します。

野球を通じてスポーツマンシップを身につけた人材になるのであれば、人生の一時期に学業のペースを少しくらい落としても、子供にとっては十分価値があるでしょう。

ただし桑田氏が問題視するように兵隊を育てるための野球、武士道に基づいた指導はまだまだ根強く残っていると思われるので、指導者は選ぶ必要があるでしょう。

東大と野球部と私――勝つために大切なことは何か

東大と野球部と私――勝つために大切なことは何か

「辞める」ことについて

子供が「部活を辞めたい」と言い出したら、親はどのように答えるべきでしょうか。

子供にムリをさせないために「つらいなら辞めて良い」と答えるべきでしょうか。

「辞めたい」といっても、以下のような理由かもしれません。

  • 監督に怒鳴られた(それでムカついた)から
  • 監督やチームに冷たい扱いを受けた(それでムカついた)から
  • 試合で負けて心が折れたから(自分のミスで負けたなど)
  • 朝起きるのがつらい、夜更かしできない、ゲームができない、友達と遊べないのがいやだ

このような理由で辞めてしまったとして、そのまま他のことに取り組んで成果を出せるようになるでしょうか。

GRITでは、子供が自分でやると決めたことは最後までやる、もしくは1〜2年以上続けることがやり抜く力をつけるために必要だといっています。

もちろん辞めても良い場面はありますので、良く話を聴き、見極めることが必要です。

  • 続けると体やメンタルに支障をきたす
  • 他に本当にやりたいことがある

戦略的に文武両道を目指す

一方でスポーツばかりやっていて勉強が苦手になり、そのまま落ちこぼれてしまうのではないかという心配もつきまといます。

そこで私の提案は「戦略的に文武両道を目指す」ことです。

まず「戦略的ではない」文武両道を下図に示します。 f:id:haru860:20170821065418p:plain

野球に一生懸命取り組んでいるときも、すべての科目で優秀な成績を取ろうとしてしまいます。

しかし時間には限りがありますので、野球を取るのか勉強を取るのかどっちつかずになりがちで、中途半端になってしまうおそれがあります。

一方で「戦略的に文武両道を目指す」場合を下図に示します。 f:id:haru860:20170821065404p:plain

野球が終わるまでは「武」優先です。

「武」優先でも野球“だけ”をやるのはリスクがあります。

野球が終わった頃に、勉強に対する苦手意識があっては勉強に取り組めないからです。

そこで、受験で大きなウエイトを占める英語“だけ”や、理系の生徒の場合、数学“だけ”は「良い成績」を取るようにします*1

監督や親も「英語だけは頑張れ、数学だけは頑張れ」と叱咤するのが良いでしょう。 「英語もしくは数学で良い点を取れない場合は部活動を続けてはいけない。他の科目は赤点でなければOK」などというルールを設けておくのも良いでしょう。

うまく重点科目で良い点を取れれば「自分は勉強は苦手」ではなく「勉強すれば良い成績を取れる」という感覚を育てることができるでしょう。

最後に

子供が落ち着いた気持ちで部活などの課外活動に取り組むには、親や指導者が、子供の長い人生を見据えた上で、何に取り組むことが必要かを考え、どっしりと構える必要があります。

勉強のことを心配に思うあまりに、目先の勉強だけをやらせることがあっては子供は不幸になります

もちろんその子が勉強に夢中になれるのであれば、勉強に集中するのも良いでしょう(脳科学者の茂木健一郎さんはそのような子供だったようです)。

子供が何かひとつのことに夢中になって取り組み、その過程で人生を生き抜く力を身につけることが子供にとっては必要なことであり、それを支援することが親や指導者の役目であるといえるでしょう。

*1:数学は理解を積み上げていくため、1回離れてしまうとキャッチアップが難しい。逆に"日本史"は平安時代が分からなくても江戸時代は理解できる

自主性 or 強制?〜指導者のあるべき姿とは

夏の甲子園、山口県代表の下関国際高校野球部監督のインタビュー記事がネット上で話題を集めていました。

togetter.com

この記事に関連して、以下の2回に分けて書きます。

  • 自主性か?強制か?
  • 文武両道か否か?

※後編はこちら

冒頭の記事から、自主性に関するコメントを抜粋して引用します。

――朝5時から練習するそうですが、選手が自主的に?

半強制です。自主的にやるまで待っていたら3年間終わっちゃう。練習が終わって学校を出るのは21時くらい。本当に遅いときは23時くらいまでやることもあります。

――確かに、自主性をうたう進学校は増えています。

そういう学校には、絶対負けたくない。

――選手に任せることはしない?

自主性というのは指導者の逃げ。『やらされている選手がかわいそう』とか言われますけど、意味が分からない。

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やさしい育て方と厳しい育て方

選手に優しくするべきか、厳しくするべきか。

指導者は迷います。

優しくした結果、選手は調子に乗ったり手を抜くかもしれませんし、厳しくすることで関係が悪くなったり選手がやる気をなくすかもしれません。

選手の性格や場面によっても変わってきそうです。

やり抜く力を育てる賢明な育て方

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につけるという書籍で、やり抜く力を伸ばす子供の育て方について説明しています。

「人を育てる」という点で、高校野球の監督と共通するところがありそうです。

GRITでは、子供の育て方として以下の2つのスタンスを示しています。

  • 優しい育て方

    親が子供に無条件の愛情を注ぎ、しっかり手を差し伸べてこそ、粘り強さと情熱を持った子に育つ

  • 厳しい育て方

    子供に「生まれた直後」から自分の力で問題に取り組ませる

書籍では結論としては、優しいか厳しいかの是非ではなく「優しい育て方」と「厳しい育て方」の共通点から「子供への要求が厳しく」「子供への支援を惜しまない」育て方が「賢明な育て方」であるとしています。

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ポイントとしては、厳しい育て方でだけではなく優しい育て方でも「子供への要求が厳しい」という点です。

子供への要求が厳しい親

「子供への要求が厳しい」とはどのような点で厳しいのでしょうか。

GRITでは、以下のような子供がやり抜く力を身につけるのに重要なことは、必ずしも子供に判断を任せず厳しく要求するのが良いとしています。

  • なにをすべきか
  • どれくらい努力すべきか
  • いつならやめてもよいか

支援を惜しまない親

また、優しい育て方に限らず厳しい育て方でも、親が以下のような姿勢で子供を支援するのが良いとしています。

  • いつでも全力で応援するという姿勢を見せ、安心感を与える
  • その子にあった環境をつくる
  • 自尊心を与える。自信を持たせる
  • 愛情深くどっしりと構え、状況に関わらない明るさをもつ

「重要なことにおいては厳格な親」であり、「一貫して子供を応援する暖かい親」でもあるといえるでしょう。

賢明な監督とは

高校野球の監督を、上記のGRITの4象限で考えてみましょう。賢明な監督とはどのような監督でしょうか。

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選手に厳しい要求をする

野球部の活動に合わせて、以下のように照らし合わせました。

  • なにをすべきか=どのような練習をするか
  • どれくらい努力すべきか=練習量
  • いつならやめてもよいか=いつ練習を休むか(部活を辞める/辞めないの判断も含む)

これらの選手の成長にとって重要なことは、子供に判断を任せるのではなく、監督も判断し考えます。

そして選手も考え判断する権利があるというのが、後で述べる独裁的な監督にならないためのポイントです。

選手への支援を惜しまない

監督が、選手への支援を惜しまないためにできることは何でしょうか。

参考となる取り組みを2つ紹介します。

# その1:メンタル面のサポート

高校生は体は大きくなってきますが、精神面は多分に子供です。

一方的に叱りつけたり逆に選手任せで放置したりせずに、選手の気持ちに寄り添った会話が必要です。

いまどきの子のやる気に火をつけるメンタルトレーニング では、石川県の星稜高校などで劇的な成果を出した実績をもとに、選手のやる気と実力を引きだす会話のコツを紹介しています。

  • やる気がない子を前向きにする9つの言い方
  • 自信のない子を勇気づける8つの言い方
  • 不満ばかり口にする子に使命感を与える6つの言い方
  • なかなか行動を起こさない子を動かす8つの言い方
  • ピンチに弱い子のメンタルを強くする8つの言い方

監督が上の立場から一方的に話すのではなく、会話の仕方や言葉の使い方に気をつけることで、モチベーションを持続させ、選手の力を引きだすことができます。

いまどきの子のやる気に火をつけるメンタルトレーニング

いまどきの子のやる気に火をつけるメンタルトレーニング

# その2:野球ノート

野球ノートは、選手と監督・コーチの交換日記のようなものです。

野球ノートには、以下のような効果があります。

  • 選手の将来の目標、なりたい選手像を共有することで一緒に邁進することができる
  • 監督が選手の日々の状態を把握し、選手ごとに成長の道筋を見つけ、適切な指導ができる
  • 監督が、個々の選手ごとに意思を伝えることができる

野球ノートを導入し監督が選手の気持ちや状況を知ることで、心の距離が近い状態で選手のための厳しい練習を課し・指導ができるでしょう。

野球ノートに書いた甲子園

野球ノートに書いた甲子園

野球ノートに書いた甲子園2

野球ノートに書いた甲子園2

野球ノートに書いた甲子園3

野球ノートに書いた甲子園3

野球ノートに書いた甲子園4

野球ノートに書いた甲子園4

野球ノートに書いた甲子園5

野球ノートに書いた甲子園5

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独裁的な監督とは

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独裁的な監督とはどのような監督でしょうか。

  • 選手の目標、気持ち、状態に関わらず指導する
  • 一方的に、選手を厳しい指導に従わせる。
  • 選手が自ら考えて決める権利を与えない

これらの結果、選手の「内発的動機」が奪われ、練習は「やらされる練習」になるでしょう。

厳しい練習を課すことにより選手は鍛えられ、レベルはあがります。

しかし、普段から自主的に考えて野球をしなくなるので、試合でも自分で考えて野球をしなくなり、試合での勝負強さは失われていくでしょう。

※鍛えられているので、ある程度のレベルまではいきます。

寛容な監督とは

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寛容な監督とはどのような監督でしょうか。

  • 練習は選手任せの面が多い
  • 選手は自発性にあふれている
  • 選手を厳しく鍛えることはしない

選手は自主的に練習しますし、それが良い方向に進むこともあるでしょう。いまどきの監督といえるかもしれません。

監督と選手の関係は良いかもしれませんが、選手は鍛えられていないので、真の意味で選手の力を伸ばし切れず、長い目で見て選手のためになっているかというと、そうではないかもしれません。

「自主性に任せる」では若手は伸びない

元中日ドラゴンズ監督の落合博満氏も、選手の自主性に任せることに異を唱えているひとりです。

ことしの7月に出版した落合博満 アドバイス―――指導者に明かす野球の本質は、中日ドラゴンズのGM時代に社会人野球の指導者から受けた質問をもとに、若手を指導する立場の指導者への「アドバイス」をまとめた書籍です。

この書籍の“「自主性に任せる」では若手は伸びない"の章で、以下のように述べています。

自主的に練習に取り組む姿勢はとても大切で、どれくらい取り組むかが将来を左右するといっても過言ではない。ただそれは、克服すべき課題を的確に見極め、正しい方法で練習している場合の話だ。 自主性に任せるという方針は聞こえはいい。しかし、実際に自主的な取り組みだけで着実に成長できる選手など、プロの世界でもほとんど見たことがない。一流と言われる領域に達した選手の大半が、若い頃は徹底的に練習を"やらされ"、そこから考えて練習することを覚えてきた。表現はよくないが、若い選手は強制的に練習させなければいけないと考えている。

落合氏が、若い選手に練習をやらせる理由として、以下の2つを理由にあげています。

  • 自主練習では体力がつかない
  • 練習では徹底的に基本を教え込む必要がある

ベテラン選手であれば正しい練習を知っているので任せても良いが、若手の選手は正しい練習を知らないので選手の将来のことを思うと強制的に練習させるのが良いということです。

落合氏が監督時代に、荒木、井端、そして森野をキャンプで徹底的に鍛え、長く活躍する一流選手に成長させたのは有名な話です。

最後に

賢明な指導者とは、選手の成長を第一に考え厳しい練習を課しながらも、選手の成長をメンタル面や環境面で惜しみなく支援できる指導者であると言えるでしょう。

冒頭の記事の監督が、賢明な監督なのか独裁的な監督なのかは当事者ではないと分かりません。

ただ「自主的にやるまで待っていたら3年間終わっちゃう」という言葉からは、2年4か月という高校野球の選手に与えられた短い時間の中で、選手の実力を伸ばしたいという気持ちが感じられます。

また、選手と関係が悪くなることを恐れず、選手のために厳しく鍛えていく強さを持った監督といえるのではないでしょうか。

後編、文武両道は二流?〜指導者のあるべき姿とは では文武両道について取り上げます。

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

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落合博満 アドバイス―――指導者に明かす野球の本質

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