ビープラウド社長のブログ

株式会社ビープラウドの社長が、日々の思いなどを綴っていきます。

プログラミングを学ぶとなにがよいのか〜流山高校で講義してきました

2017年8月25日に、千葉県立流山高校で講義をさせていただきました。

あと数年で社会に出る生徒達が、進路を考える際に少しでも役立つようにと、内容を考えました。

以下は、講義の資料です。

全体の流れ

人が取り組むべきこと(キャリア、やりたいこと)は、以下の式で考えられます。

機会(ニーズ)強み(シーズ)= 取り組むべきこと(キャリア、やりたいこと)

生徒たちが、自分のやりたいことをみつけるためのヒントを得られるように、講義はこの式に従い進めました。

機会(ニーズ)を捉える

取り組むべきことを考えるには、時代のニーズを捉える必要があります。自分がやりたいと思っても、世の中から求められていなかったら、収入を得られません。

お金のために仕事をする訳ではないとはいえ、収入が得られないということは、取り組んでいることが、その時代や世の中では価値がないとも考えられます。

受講生は、日頃プログラミングを学んでいる生徒たちだったので、プログラマーをテーマの中心として、プログラマーに対するニーズや、現代の世の中の流れ、プログラマーの仕事について、以下のようなお話をしました。

  • プログラマーが世の中で必要とされている
  • 時代の大きな流れ

    • 日本が人口減少の時代=人間の代わりが必要な社会(ロボット、AI)
    • 第4次産業革命(AI・機械学習の発展)
    • スマホ・タブレットなどの普及による情報爆発
    • すぐに始められる社会
  • プログラマーの仕事とは

強み(シーズ)を見つける

世の中のニーズに応えて仕事をしているだけでは、自分の持ち味を発揮できず仕事も長続きしません。自分をおさえ続けた結果、燃え尽きてしまうこともありえます。

世の中に価値を生み出し続ける仕事をするには、自分は何が強いのか?自分の性格は?自分の好きなことは何か?などを模索しながら、自分が取り組むべきことを考えます。

それが仕事をする幸せにもつながります。

なぜ勉強するのか

「学生の本分は勉強」といいますが、そもそも人はなぜ勉強するのでしょうか。

「良い学校に入るため」「良い会社に入ってやりたいことをやるため」などが理由として考えられます。

「人はなぜ勉強するのか」という書籍がありますが、講義ではこの書籍の内容をかんたんに説明しました。

説明した内容を、以下に抜粋します。

(P.26)

「自分探し」の勉強*1を続けるうちにやがて機が熟すと不思議なことが起こります。それは、自分のかけがえのない尊い持ち味を見つけてそれを鍛錬し、卓越した状態にまで高める「卓越性の追求」の志と、人々みんなの公共の幸せのために進んで役割取得をする「普遍的な自己実現」の志とが、わが志において一つに結びつくことです。これを「立志」といいます。

(P.27)

つまり立志とは、自分の持ち味を発揮することが世の中の人々のために役立つという自分独特の道を見つけ、その道に志すほかならないのです。だから立志とは自分の人生をデザインすることなのです。

(P.29)

「自分探し」の勉強をして自分の尊い持ち味がわかり、その持ち味を発揮して人々の幸福に役立つ道を見つけて「公なるもの」への役割取得をなし、生きがいのある人生を送るような人生のデザインをすることこそ、人はなぜ勉強するのか、学ぶのかという問いに対する基本的な答え

「なぜ、勉強するのか」という問いに対する回答を以下にまとめます。

  • 自分探しの勉強

    勉強を通じて、自分の持ち味を見つける。それを卓越した状態にまで高める

  • 立志

    人生のデザイン。持ち味を発揮し、社会での役割をみつけ生きがいのある人生を送る

勉強とは、自分の強みを見つけるためのきっかけであると言えるのではないでしょうか。

チームワークの重要性

スキルさえ身につければ人と話さなくて良い、関わらなくて良いからという理由で、プログラマーを仕事として選択する人がいます。

しかし、この認識は誤りです。

なぜなら、現代の専門知識は高度化し、かつ進化が速いので、成果を出すために必要な専門知識をひとりで全て学ぶことは不可能であり、他の人と仕事をしないと価値や成果をつくりだせないからです。

そのため、価値や成果をつくりだすためには、相乗効果を発揮するためのチームワーク、人との協力が欠かせません。

P・F・ドラッカーの言葉の以下の言葉が、これを現しています。

知識労働者の専門知識はそれだけでは何も生まない。他の専門知識と結合して初めて生産的な存在となる。

自分の価値を高める社会での立ち位置を考える

1つのスキルを身につけたとしても、それだけで一生は生きていけません。

なぜなら、現代は変化の速い複雑な社会だからです。

また、同じようなスキルをもつ人が世の中に多くいる場合、よほどそのジャンルを極めて、レベルが高くない限り一流にはなれません。

加えて弁護士、医師、会計士、経営など専門職の仕事でさえも、AIが代わりを務めることができる事例が生まれてきています。

複雑な社会で価値を生み出すには、単一のスキルだけではなく、複数のスキルや知識、強みを組み合わせて、変化に対応し、価値を創り出す力が必要です。

掛け算で組み合わせたスキルや経験が、その人の「個性」であり、「生きていく力」であるといえるでしょう。

そして、その掛け算で組み合わせた希少性が、社会でのその人の立ち位置となり、価値を高めることでしょう。

続けることの重要性

講義では「これだ」ということを始めたら、ある程度は続けることの重要性を伝えました。

これは、ドラクエの転職にたとえて説明しました。たとえば、戦士が、魔法使いなど他の職業に転職したとしてもレベル2や3ですぐに転職してしまったら、後の戦いで、魔法使いの能力は使えません。

なぜなら、後の戦いでは、自分自身の戦うステージが上っているからです。

つまり、あきらめてしまったものに使った時間そのものがムダになる可能性が高くなります。

1つのことを上達するには、10,000時間が必要と言われています。

学生とはいえ、10,000時間を確保するのは、至難の業です。

「人生の時間は貴重」ということをお伝えしました。

やりたいことを掛け算で考える(ワーク)

最後に、それまでの話を踏まえて以下の式にもとづいて各個人の「やりたいこと」を考えてもらいました。

プログラマーが必要とされている(機会:ニーズ)自分の得意なこと・好きなこと・性格(強み:シーズ)やりたいこと

生徒からは、以下のアイデアが共有されました。

  • プログラミングラジコンが好き = ドローンの仕事
  • プログラミング 映画が好きボランティアが好き = 新興国に映画配信
  • プログラミングAI楽したい性格プログラミングするAIをつくる

どれも感嘆する素晴らしいアイデアでした。是非とも実現してほしいと思います。

最後に

数日後、生徒たちからお礼のコメントをいただきました。

高校生への講義は初めての経験でしたが、私自身、本質的なことを考える機会となり、日頃得がたい貴重な経験をさせていただきました。

お声がけいただいた 秋川能徳先生、ありがとうございました。

*1:人類文化系の各分野各教科科目に全力でぶつかって勉強して自分を試してみることによって、自分のかけがえのない持ち味がどこにあるのかを見つけるための勉強

Pythonistaのコミュニケーションとは?〜みんなのPython勉強会#27で登壇しました

2017年8月9日に開催されたみんなのPython勉強会#27で登壇してきました。

startpython.connpass.com

以下は、発表スライドです。

全体のテーマ

2008年からPythonで仕事をして来て、私が気づいたPythonistaたちのコミュニケーションの特徴や、Pythonの勉強の仕方、そしてアウトプットの重要性などをテーマにお話してきました。

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いくつかのトピックをピックアップしてお伝えします。

Pythonistaのコミュニケーションの特徴

The Zen of Pythonになぞらえて、コミュニケーションの特徴を説明しました。社内にフィードバックしたところ、赤字の反応を得られました。

まずルールを決める

Spcial cases aren’t special enough to break the rules. 特殊であることはルールを破る理由にならない。

あとで何度もルールを説明するのが面倒なので。

ドキュメントを積極的に書く

Explicit is better than implicit. 暗示するより明示する方がいい。

あとで何度も説明するのが面倒なので。説明しなくて良いようにドキュメントにする。

曖昧な発言は諭される

In the face of ambiguity,refuse the temptation to guess. 曖昧なものに出逢ったら、その意味を適当に推測してはいけない。

  • 何度も確認するの面倒なんで明確に言ってほしい
  • 話し手が手抜きしようとした分、聞き手に負荷がかかるだけ
  • コミュニケーションにかかるトータルコストのこと考えてほしい

面倒でムダなことが嫌い、良い意味で怠惰といえるでしょう。

弊社はリモートワークを積極的に導入し( BPRD2.0(BePROUD Remote Day 2.0) - ビープラウド社長のブログ )、チャットツールSlackを使ったコミュニケーションが中心です。

したがって文字ベースのコミュニケーションスキルを高めることによって仕事の効率化され、ムダのないワークスタイルにつながります。

ビープラウドは残業時間が少ない方だと思いますが、このワークスタイルが残業時間削減に一役買っているといえるでしょう。*1

アウトプットする重要性

アウトプットにより、学んだ知識や技術を確かなものにするということをお伝えしました。

アウトプット先として、以下の3つをあげました。

  • ブログなどにアウトプット
  • プロダクト、サイト、ライブラリをつくる
  • 勉強会・カンファレンスで話す

アウトプットする中で、知識を咀嚼してまとめ、自分なりの言葉で説明できるようにする、形式知化の重要性をお伝えしました。

形式知化の恩恵を受けるのは自分

自分の知識を形式知にすることで、最も恩恵を受けるのは自分です。

人に伝えることを意識することで、曖昧な点を調べたりまとめているうちに知識が定着します。

しかし、学んだことや本に書かれていることをそのまま聞き手にアウトプットしたり聞き手に伝えるのでは、あまり意味はありません。

自分の他の知識と組み合わせ、自分なりの言葉で伝えるようにすると、知識を咀嚼でき真の意味で自分の形式知になるでしょう。

ブログを書くためにライティングを学ぶ

ブログを書くために、ライティングを学ぶと効果的ということも最後にお伝えしました。

私はいつもブログを書く頻度が年々減っていて、今年は6月まで1件でした。

しかし、6月6日に落合博満氏の講演を聴講し(練習は嘘をつかない〜落合博満氏講演2017.06.06 参戦記 - ビープラウド社長のブログ)、ブログを再開することを決意しました。

ライティングの書籍として、以下の2冊を読みました。

6分間文章術――想いを伝える教科書

6分間文章術――想いを伝える教科書

売れる文章術

売れる文章術

そして、なんとエンパシーライティングで初めて書いたエントリーが、はてなブックマークでホットエントリー入りしました。

shacho.beproud.jp

気を良くした私は、ブログを書くスピードをアップするため、上記書籍で説明されているエンパシーライティングのオンラインツール「iEmpathy」を使用したところ、文章構成のスピードと質が劇的にアップしました。

また、iEmpathyの画面内の誤字をメールで報告した際にブログの成果をお伝えしたところ、エンパシーライティング開発者の中野巧さんの公式ブログでご紹介いただけました。

iEmpathyを使った具体的な効果は、以下のブログを参照してください。

blog.empathywriting.com

忙しい合間をぬってブログを書くためには、書く時間の短縮が必須です。ブログを書き続けたい方は、ライティングを学ぶことをおすすめします。

最後に

connpass運営が選ぶこのコミュニティがすごいでも紹介しましたが、Start Python Clubさんは、毎回100人以上集まる勢いのあるコミュニティです。

そのコミュニティに参加させて頂き、Python人気の盛り上がりを感じました(噂のビールサーバーも良かったです)。

また、何かの折に発表させて頂けるよう、精進していきたいと思います。

*1:「コミュニケーションの効率化」というと冷たく感じる方もいるかも知れませんが、Pythonistaたちも効率化を目指しながら、コミュニケーションが冷たくならないように配慮しています。

文武両道は二流?〜指導者のあるべき姿とは

夏の甲子園、山口県代表の下関国際高校野球部監督のインタビュー記事がネット上で話題を集めていました。

togetter.com

この記事をもとに、自主性 or 強制?〜指導者のあるべき姿とは(前篇)では、選手を育てる「賢明な監督」について書きました。

後編の今回は「文武両道」をテーマに書きます。

冒頭の記事から、文武両道に関するコメントを抜粋して引用します。

――野球と勉学の両立は無理と?

無理です。『一流』というのは『一つの流れ』。例えば野球ひとつに集中してやるということ。文武両道って響きはいいですけど、絶対逃げてますからね。東大を目指す子が2時間の勉強で受かるのか。10時間勉強しても足りないのに」

――文武両道は二流だと?

「そういうことです。勉強しているときは『いや、僕野球やってますから』となるし、野球やっていたら『勉強が……』となる。“練習2時間で甲子園”って。2時間って試合時間より短い。長くやればいいってことではないけど、うちは1日1000本バットを振っている。1001本目で何か掴むかもしれない。なのに、時間で区切ってしまったら……。」

「学生の本分は勉強」といいます。

しかし人生の一時期に勉強以外のもの、例えば「甲子園」というひとつの目標に向かって努力する時期があっても良いと私は思いますし、部活動で得られるものは多いでしょう。

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以下に、部活動(野球部などスポーツ系に限った話ではありませんが、ここでは主に野球部)で得られるものを3つ説明します。

  • やり抜く力
  • 感謝を土台とした努力する姿勢とポジティブシンキング
  • スポーツマンシップ

やり抜く力を身につけられる

前編でもあげた書籍のやり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につけるでは、子供のGRIT(やり抜く力)を育てるために「課外活動(勉強以外の活動)」を絶対にすべしとしています。

調査では、2年以上頻繁な活動をした子は将来の収入が高いという結果が出たそうです。

逆に、将来の収入と勉強の結果に相関関係は見られませんでした。

書籍では、2年以上頻繁な活動をした子が将来の収入が高い理由を以下のように考察しています。

  • 青年期に何らかの活動をやり通すことは、やり抜く力を要するとともに、やり抜く力を鍛えることにもなる
  • 活動に取り組んでいくうちに、周りの人から多くを学ぶ
  • いろんな経験を重ねるうちに、自分にとって何が重要なのか、その優先順位がわかってくる。そのような中で人格が育まれる
  • 努力を続ければ結果が出ることを学べる

課外活動を通じて、人生に必要な「やり抜く力」を身につけることができます。

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

感謝を土台とした努力する姿勢とポジティブシンキング

サッカー・インテルの長友佑都選手は書籍の上昇思考幸せを感じるために大切なことで、中学時代の顧問井上博先生から「自分づくり」「仲間づくり」「感謝の心」が人としての3本柱になると繰り返し教わったことが自分の出発点になったと述べています。

そして「ひとつひとつのことに感謝の心を忘れずピッチに立って、ボールを蹴らなければならない、そうでなければサッカーを続ける資格はない」と言われ続けたそうです。

自分づくりは、こんな人間になりたいという目標をつくって、それに向かって最大限の努力を続けていくこと。仲間づくりは、その過程において、自分は一人きりの存在だとは考えず、家族や友達といった仲間を大切にしていくこと。そして感謝の心は全ての土台になるものだ。

長友選手は、感謝の心をもっていることで、なんとか恩返しをしようと考えるようになり、それが「努力」や「ポジティブシンキング(前向きな心)」に密接につながり、最終的に競技の結果につながるといいます。

その過程が、選手の人格を育て人生を生きていくための財産になるでしょう。

上昇思考幸せを感じるために大切なこと

上昇思考幸せを感じるために大切なこと

スポーツマンシップを身につけた人材に

野球部出身者はろくなものがいない?

少し前にマツコ・デラックスが、「野球部出身者は十中八九、クソ野郎」 と発言し、話題になりました。

たしかに野球部は、練習が厳しく前世代的なイメージがつきまといます。

桑田真澄氏の「野球道」

なぜ、野球部は前世代的なイメージがつきまとうのでしょうか。

その理由を、元巨人軍の桑田真澄氏が東大と野球部と私――勝つために大切なことは何かの中で説明しています。

強い兵隊育成のための指導

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野球が日本で本格的に始まった頃は、戦争中で国の課題も兵隊を育てることでした。

そのような時代の背景で、兵隊を育てるために「武士道」をもとにした指導が良しとされました。

精神の鍛錬、絶対服従、膨大な練習量を選手に強制する指導です。

それがいまだに根強く残っているのが学生野球だと、桑田氏は述べています。

このような指導を学生時代に受けた人が監督になり、疑問を持たぬまま次世代に引き継いでいるというのが現状なのでしょう。

社会で活躍できる人材の育成のための指導

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それに対し、桑田氏が提唱するのは「スポーツマンシップ」を軸とした野球道です。

ここでの指導は、社会で活躍できる人材の育成を目的としています。

心の調和、練習の質の重視、尊重を価値観として重視します。

野球を通じてスポーツマンシップを身につけた人材になるのであれば、人生の一時期に学業のペースを少しくらい落としても、子供にとっては十分価値があるでしょう。

ただし桑田氏が問題視するように兵隊を育てるための野球、武士道に基づいた指導はまだまだ根強く残っていると思われるので、指導者は選ぶ必要があるでしょう。

東大と野球部と私――勝つために大切なことは何か

東大と野球部と私――勝つために大切なことは何か

「辞める」ことについて

子供が「部活を辞めたい」と言い出したら、親はどのように答えるべきでしょうか。

子供にムリをさせないために「つらいなら辞めて良い」と答えるべきでしょうか。

「辞めたい」といっても、以下のような理由かもしれません。

  • 監督に怒鳴られた(それでムカついた)から
  • 監督やチームに冷たい扱いを受けた(それでムカついた)から
  • 試合で負けて心が折れたから(自分のミスで負けたなど)
  • 朝起きるのがつらい、夜更かしできない、ゲームができない、友達と遊べないのがいやだ

このような理由で辞めてしまったとして、そのまま他のことに取り組んで成果を出せるようになるでしょうか。

GRITでは、子供が自分でやると決めたことは最後までやる、もしくは1〜2年以上続けることがやり抜く力をつけるために必要だといっています。

もちろん辞めても良い場面はありますので、良く話を聴き、見極めることが必要です。

  • 続けると体やメンタルに支障をきたす
  • 他に本当にやりたいことがある

戦略的に文武両道を目指す

一方でスポーツばかりやっていて勉強が苦手になり、そのまま落ちこぼれてしまうのではないかという心配もつきまといます。

そこで私の提案は「戦略的に文武両道を目指す」ことです。

まず「戦略的ではない」文武両道を下図に示します。 f:id:haru860:20170821065418p:plain

野球に一生懸命取り組んでいるときも、すべての科目で優秀な成績を取ろうとしてしまいます。

しかし時間には限りがありますので、野球を取るのか勉強を取るのかどっちつかずになりがちで、中途半端になってしまうおそれがあります。

一方で「戦略的に文武両道を目指す」場合を下図に示します。 f:id:haru860:20170821065404p:plain

野球が終わるまでは「武」優先です。

「武」優先でも野球“だけ”をやるのはリスクがあります。

野球が終わった頃に、勉強に対する苦手意識があっては勉強に取り組めないからです。

そこで、受験で大きなウエイトを占める英語“だけ”や、理系の生徒の場合、数学“だけ”は「良い成績」を取るようにします*1

監督や親も「英語だけは頑張れ、数学だけは頑張れ」と叱咤するのが良いでしょう。 「英語もしくは数学で良い点を取れない場合は部活動を続けてはいけない。他の科目は赤点でなければOK」などというルールを設けておくのも良いでしょう。

うまく重点科目で良い点を取れれば「自分は勉強は苦手」ではなく「勉強すれば良い成績を取れる」という感覚を育てることができるでしょう。

最後に

子供が落ち着いた気持ちで部活などの課外活動に取り組むには、親や指導者が、子供の長い人生を見据えた上で、何に取り組むことが必要かを考え、どっしりと構える必要があります。

勉強のことを心配に思うあまりに、目先の勉強だけをやらせることがあっては子供は不幸になります

もちろんその子が勉強に夢中になれるのであれば、勉強に集中するのも良いでしょう(脳科学者の茂木健一郎さんはそのような子供だったようです)。

子供が何かひとつのことに夢中になって取り組み、その過程で人生を生き抜く力を身につけることが子供にとっては必要なことであり、それを支援することが親や指導者の役目であるといえるでしょう。

*1:数学は理解を積み上げていくため、1回離れてしまうとキャッチアップが難しい。逆に"日本史"は平安時代が分からなくても江戸時代は理解できる

自主性 or 強制?〜指導者のあるべき姿とは

夏の甲子園、山口県代表の下関国際高校野球部監督のインタビュー記事がネット上で話題を集めていました。

togetter.com

この記事に関連して、以下の2回に分けて書きます。

  • 自主性か?強制か?
  • 文武両道か否か?

※後編はこちら

冒頭の記事から、自主性に関するコメントを抜粋して引用します。

――朝5時から練習するそうですが、選手が自主的に?

半強制です。自主的にやるまで待っていたら3年間終わっちゃう。練習が終わって学校を出るのは21時くらい。本当に遅いときは23時くらいまでやることもあります。

――確かに、自主性をうたう進学校は増えています。

そういう学校には、絶対負けたくない。

――選手に任せることはしない?

自主性というのは指導者の逃げ。『やらされている選手がかわいそう』とか言われますけど、意味が分からない。

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やさしい育て方と厳しい育て方

選手に優しくするべきか、厳しくするべきか。

指導者は迷います。

優しくした結果、選手は調子に乗ったり手を抜くかもしれませんし、厳しくすることで関係が悪くなったり選手がやる気をなくすかもしれません。

選手の性格や場面によっても変わってきそうです。

やり抜く力を育てる賢明な育て方

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につけるという書籍で、やり抜く力を伸ばす子供の育て方について説明しています。

「人を育てる」という点で、高校野球の監督と共通するところがありそうです。

GRITでは、子供の育て方として以下の2つのスタンスを示しています。

  • 優しい育て方

    親が子供に無条件の愛情を注ぎ、しっかり手を差し伸べてこそ、粘り強さと情熱を持った子に育つ

  • 厳しい育て方

    子供に「生まれた直後」から自分の力で問題に取り組ませる

書籍では結論としては、優しいか厳しいかの是非ではなく「優しい育て方」と「厳しい育て方」の共通点から「子供への要求が厳しく」「子供への支援を惜しまない」育て方が「賢明な育て方」であるとしています。

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ポイントとしては、厳しい育て方でだけではなく優しい育て方でも「子供への要求が厳しい」という点です。

子供への要求が厳しい親

「子供への要求が厳しい」とはどのような点で厳しいのでしょうか。

GRITでは、以下のような子供がやり抜く力を身につけるのに重要なことは、必ずしも子供に判断を任せず厳しく要求するのが良いとしています。

  • なにをすべきか
  • どれくらい努力すべきか
  • いつならやめてもよいか

支援を惜しまない親

また、優しい育て方に限らず厳しい育て方でも、親が以下のような姿勢で子供を支援するのが良いとしています。

  • いつでも全力で応援するという姿勢を見せ、安心感を与える
  • その子にあった環境をつくる
  • 自尊心を与える。自信を持たせる
  • 愛情深くどっしりと構え、状況に関わらない明るさをもつ

「重要なことにおいては厳格な親」であり、「一貫して子供を応援する暖かい親」でもあるといえるでしょう。

賢明な監督とは

高校野球の監督を、上記のGRITの4象限で考えてみましょう。賢明な監督とはどのような監督でしょうか。

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選手に厳しい要求をする

野球部の活動に合わせて、以下のように照らし合わせました。

  • なにをすべきか=どのような練習をするか
  • どれくらい努力すべきか=練習量
  • いつならやめてもよいか=いつ練習を休むか(部活を辞める/辞めないの判断も含む)

これらの選手の成長にとって重要なことは、子供に判断を任せるのではなく、監督も判断し考えます。

そして選手も考え判断する権利があるというのが、後で述べる独裁的な監督にならないためのポイントです。

選手への支援を惜しまない

監督が、選手への支援を惜しまないためにできることは何でしょうか。

参考となる取り組みを2つ紹介します。

# その1:メンタル面のサポート

高校生は体は大きくなってきますが、精神面は多分に子供です。

一方的に叱りつけたり逆に選手任せで放置したりせずに、選手の気持ちに寄り添った会話が必要です。

いまどきの子のやる気に火をつけるメンタルトレーニング では、石川県の星稜高校などで劇的な成果を出した実績をもとに、選手のやる気と実力を引きだす会話のコツを紹介しています。

  • やる気がない子を前向きにする9つの言い方
  • 自信のない子を勇気づける8つの言い方
  • 不満ばかり口にする子に使命感を与える6つの言い方
  • なかなか行動を起こさない子を動かす8つの言い方
  • ピンチに弱い子のメンタルを強くする8つの言い方

監督が上の立場から一方的に話すのではなく、会話の仕方や言葉の使い方に気をつけることで、モチベーションを持続させ、選手の力を引きだすことができます。

いまどきの子のやる気に火をつけるメンタルトレーニング

いまどきの子のやる気に火をつけるメンタルトレーニング

# その2:野球ノート

野球ノートは、選手と監督・コーチの交換日記のようなものです。

野球ノートには、以下のような効果があります。

  • 選手の将来の目標、なりたい選手像を共有することで一緒に邁進することができる
  • 監督が選手の日々の状態を把握し、選手ごとに成長の道筋を見つけ、適切な指導ができる
  • 監督が、個々の選手ごとに意思を伝えることができる

野球ノートを導入し監督が選手の気持ちや状況を知ることで、心の距離が近い状態で選手のための厳しい練習を課し・指導ができるでしょう。

野球ノートに書いた甲子園

野球ノートに書いた甲子園

野球ノートに書いた甲子園2

野球ノートに書いた甲子園2

野球ノートに書いた甲子園3

野球ノートに書いた甲子園3

野球ノートに書いた甲子園4

野球ノートに書いた甲子園4

野球ノートに書いた甲子園5

野球ノートに書いた甲子園5

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独裁的な監督とは

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独裁的な監督とはどのような監督でしょうか。

  • 選手の目標、気持ち、状態に関わらず指導する
  • 一方的に、選手を厳しい指導に従わせる。
  • 選手が自ら考えて決める権利を与えない

これらの結果、選手の「内発的動機」が奪われ、練習は「やらされる練習」になるでしょう。

厳しい練習を課すことにより選手は鍛えられ、レベルはあがります。

しかし、普段から自主的に考えて野球をしなくなるので、試合でも自分で考えて野球をしなくなり、試合での勝負強さは失われていくでしょう。

※鍛えられているので、ある程度のレベルまではいきます。

寛容な監督とは

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寛容な監督とはどのような監督でしょうか。

  • 練習は選手任せの面が多い
  • 選手は自発性にあふれている
  • 選手を厳しく鍛えることはしない

選手は自主的に練習しますし、それが良い方向に進むこともあるでしょう。いまどきの監督といえるかもしれません。

監督と選手の関係は良いかもしれませんが、選手は鍛えられていないので、真の意味で選手の力を伸ばし切れず、長い目で見て選手のためになっているかというと、そうではないかもしれません。

「自主性に任せる」では若手は伸びない

元中日ドラゴンズ監督の落合博満氏も、選手の自主性に任せることに異を唱えているひとりです。

ことしの7月に出版した落合博満 アドバイス―――指導者に明かす野球の本質は、中日ドラゴンズのGM時代に社会人野球の指導者から受けた質問をもとに、若手を指導する立場の指導者への「アドバイス」をまとめた書籍です。

この書籍の“「自主性に任せる」では若手は伸びない"の章で、以下のように述べています。

自主的に練習に取り組む姿勢はとても大切で、どれくらい取り組むかが将来を左右するといっても過言ではない。ただそれは、克服すべき課題を的確に見極め、正しい方法で練習している場合の話だ。 自主性に任せるという方針は聞こえはいい。しかし、実際に自主的な取り組みだけで着実に成長できる選手など、プロの世界でもほとんど見たことがない。一流と言われる領域に達した選手の大半が、若い頃は徹底的に練習を"やらされ"、そこから考えて練習することを覚えてきた。表現はよくないが、若い選手は強制的に練習させなければいけないと考えている。

落合氏が、若い選手に練習をやらせる理由として、以下の2つを理由にあげています。

  • 自主練習では体力がつかない
  • 練習では徹底的に基本を教え込む必要がある

ベテラン選手であれば正しい練習を知っているので任せても良いが、若手の選手は正しい練習を知らないので選手の将来のことを思うと強制的に練習させるのが良いということです。

落合氏が監督時代に、荒木、井端、そして森野をキャンプで徹底的に鍛え、長く活躍する一流選手に成長させたのは有名な話です。

最後に

賢明な指導者とは、選手の成長を第一に考え厳しい練習を課しながらも、選手の成長をメンタル面や環境面で惜しみなく支援できる指導者であると言えるでしょう。

冒頭の記事の監督が、賢明な監督なのか独裁的な監督なのかは当事者ではないと分かりません。

ただ「自主的にやるまで待っていたら3年間終わっちゃう」という言葉からは、2年4か月という高校野球の選手に与えられた短い時間の中で、選手の実力を伸ばしたいという気持ちが感じられます。

また、選手と関係が悪くなることを恐れず、選手のために厳しく鍛えていく強さを持った監督といえるのではないでしょうか。

後編、文武両道は二流?〜指導者のあるべき姿とは では文武両道について取り上げます。

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

落合博満 アドバイス―――指導者に明かす野球の本質

落合博満 アドバイス―――指導者に明かす野球の本質

「いちばんやさしいPythonの教本」は、Pythonicなプログラミング入門書

8月10日に「いちばんやさしいPythonの教本」が出版されました。

いちばんやさしいPythonの教本 人気講師が教える基礎からサーバサイド開発まで (「いちばんやさしい教本」シリーズ)

書籍は、ビープラウドのメンバー、鈴木たかのり(@takanory)、杉谷弥月の2人で執筆しました。

レビューには、私も含めて以下のメンバーが参加しています。

社内レビュアー
ヘルプコラミスト

読者対象者

以下の方々が対象です。

  • プログラミングを始めたい
  • Pythonを学びたい

内容構成

書籍は10章構成です。

内容は、以下のように大きく5つに分かれています。

【1】プログラミング入門

プログラミングを始める方向けの内容です。プログラミングとは何か、どのように動作しているのかをPythonを使って丁寧に説明しています。

  • 1章 Pythonを学ぶ準備をしよう
  • 2章 コマンドプロンプトに慣れよう
  • 3章 基礎を学びながらプログラムを作成しよう
【2】Pythonの基本文法

最も基本的かつ頻繁に使用する文法について説明しています。

  • 4章 繰り返しと条件分岐を学ぼう
  • 5章 辞書とファイルの扱いを学ぼう
【3】はじめてのアプリケーション開発

対話型のbotをつくりながら、Pythonのライブラリの使い方を学びます。

  • 6章 会話botを作ろう
  • 7章 ライブラリを使いこなそう
  • 8章サードパーティ製パッケージを使いこなそう
【4】はじめてのWebアプリケーション開発

8章までつくったbotをWebアプリケーション化します。Webアプリケーションの基礎を学びます。

  • 9章 Webアプリケーションを作成しよう
【5】Pythonのさらなる学び方

Pythonをさらに学ぶための、情報源となる書籍、サイト、コミュニティを紹介しています。

  • 10章 さらに知識を身につけるための学び方

この書籍で読者が得られるもの

短時間でスイスイと読めて理解できる

この書籍では、プログラミングを始めたばかりの方が、プログラミングをスムーズに理解し、速習できることを1番の目的としています。

書籍を読むときに、分からない用語があったり、専門用語が当たり前に使われていると、その時点で読者の理解が止まってしまいます。

この書籍では、読者がプログラミングを理解する妨げにならないよう、内容構成、サンプル、図、説明の仕方にいたるまで、時間をかけて精査しています。

Pythonicな書籍

書籍では、わかりやすい文章を書くことは当たり前のことです。

なので、あえてここで書くことではないかも知れませんが、チーム内では以下のようなことを気をつけて内容を精査しました。

  • 説明文章が冗長になっていないか。短く説明できないか

    文章が長いと、脳内メモリを使ってしまい、理解しにくくなる

  • 説明、用語が曖昧になっていないか。明示的に説明できているか

    説明、用語が曖昧で暗示的だと、脳内で他の知識との突き合わせ確認が入り、理解が止まる

  • 用語に表記のブレがないか

    表記にブレがある場合、脳内で他の知識との突き合わせ確認が入り、理解が止まる

気づいてみると、これら気をつけていたことは「Zen of Python*1 に書かれている内容そのものです。

  • Explicit is better than implicit.

    暗示するより明示するほうがいい

  • Readability counts.

    読みやすいことは善である

  • Simple is better than complex.

    複雑であるよりは平易であるほうがいい

  • There should be one-- and preferably only one --obvious way to do it.

    たったひとつの冴えたやりかたがあるはずだ

これらをチームで繰り返した結果、簡潔で明示的な表現を良しとするPythonのように、読む人にとって理解しやすいPythonic(Pythonらしい)な書籍に仕上がりました。

また、書籍が全ページカラーなので、読者の直感的な理解の助けになるでしょう。

つまづきやすい概念も挫折せずに学べる

学びの段差をなるべく低くするように内容を練り、構成しています。

初心者向けの書籍は、基本的な内容を並べれば書籍になるわけではありません。

執筆時は、以下の作業の繰り返しです。

  • 概念や専門用語を、理解できる小さな単位に細かく分割
  • 伝わりやすい平易な表現を探す
  • 表現をつなげて文章にする
  • 何度も読み、理解しやすいかどうか反芻する

どのように説明したらプログラミングを始めたばかりの方が、つまづかずにプログラミングの概念を理解できるのか。

そのノウハウは、弊社の研修: BePROUD Pythonトレーニングや、弊社サービスのPytnonオンライン学習プラットフォームPyQで、Pythonプログラミング初心者向けのコンテンツを作成したり、教える経験の中で培われています。執筆者だけでなく、上記のレビュアーもPython研修の講師、PyQのコンテンツ作成を担当しています。

初めてプログラミングを学ぶ方も、日々忙しく時間がない中で、プログラミングを学ぼうと思い立った方がほとんだと思います。

そのような忙しい時間の中で、学んだ時間がムダにならないよう、挫折せずに学ぶことができる弊社のノウハウがこの書籍には盛り込まれています。

読み終えたあと、次のステップにスムーズに進みやすい

5章までで基本文法を学んだあとは、対話型のbotに機能を追加していくカタチで、Pythonの使い方を学んでいきます(6〜9章)。

対話型のbotのサンプルでは、この書籍で学び終えた人が、自分でアプリケーションをつくるという次のステップをイメージしやすいよう、実践的な内容を意識しています。

6〜9章を学ぶことで以下のこともあわせて知ることができます。

  • アプリケーションに機能を徐々に追加していく流れ
  • つくったアプリケーションをWebアプリケーション化する方法

Pythonは、それ単体でさまざまなことが実現できるライブラリが幅広く揃っていることで、バッテリー同梱(batteries included)と呼ばれています。

Pythonと同じくこの書籍も、プログラミングの基本、Pythonの基本文法、アプリケーション開発、Webのサーバーサイド開発まで、幅広く同梱されていますので、この一冊で応用できる基礎が身につきます

オンラインPython学習プラットフォームPyQとのコラボレーション

書籍には、PyQ 用のキャンペーンコードが記載されています。

PyQへの会員登録時にキャンペーンコードを入力していただくと「いちばんやさしいPython教本」で学んだ内容がオンライン上で、プログラムを動かしながら学習することができます。(基礎文法のコンテンツも学習可能)

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最後に

「いちばんやさしいPythonの教本」を読みやすく学びやすい内容に仕上げるために、原稿が印刷所に入る数時間前までチームメンバーで粘り、内容を精査しました。

執筆陣・レビュワーにとっても満足のいく書籍に仕上がりましたので、ぜひ手にとって頂ければと思います。

プログラミングは、体で憶えるというスポーツのような側面もあります。

この書籍では、シンプルながら実践的なプログラムのサンプルを用意しています。

ぜひ、実際に手を動かしながら、プログラミングを楽しく学んでください。

いちばんやさしいPythonの教本 人気講師が教える基礎からサーバサイド開発まで (「いちばんやさしい教本」シリーズ)

いちばんやさしいPythonの教本 人気講師が教える基礎からサーバサイド開発まで (「いちばんやさしい教本」シリーズ)

  • 作者: 鈴木たかのり,杉谷弥月,株式会社ビープラウド
  • 出版社/メーカー: インプレス
  • 発売日: 2017/08/10
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*1:Zen of Pythonとは、Pythonの思想をまとめた文章です。「import this」とPythonのプロンプトに打ち込むことにより表示されます。

「強み」はどのように活かすか〜匠MethodにおけるSWOT分析活用の考察(匠塾 2017年8月開催まとめ、その2)

2017年8月10日の匠塾*1の各人の発表時に「自分の強みは、モデルのどこに書けば良いのですか?*2」という質問がありました。

わたしは答えを2つ考えました。

f:id:haru860:20170815181013j:plain

答え1

価値デザインモデルの「コンセプト」に強みの要素を入れると良いでしょう。

コンセプトは「ビジョンを実現するための構想」「ビジョンを実現するための戦略的要素」なので、「強みを活かして何をするか」という観点を入れたコンセプトを入れてみるのが良さそうです。

価値分析モデルの「手段」(=要求分析ツリーの業務要求)に記述できますが、埋もれてしまう可能性もあります。

答え2

匠Methodの「組織モデル」に「SWOT分析シート」*3がありますので、これを使いましょう。

自分の答えに対して生まれた問い

二つ目の答えとして「SWOT分析シート」をあげたものの「SWOT分析を匠Methodでどのように活用するのか?」については、その場で答えはありませんでした。

匠塾の後、山の日と土日のあいだに私なりに考えた*4ので、今日は「匠MethodにおけるSWOT分析の活用」をテーマに書きます。

SWOT分析とは

WikiPadiaには以下のように書かれています。

SWOT分析(-ぶんせき、SWOT analysis)とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人のプロジェクトやベンチャービジネスなどにおいて、外部環境や内部環境を強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の4つのカテゴリーで要因分析し、事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法の一つである。

つまりSWOT分析は「経営戦略を策定するための方法」ということです。

SWOT分析で戦略を策定してはいけない

戦略を策定するための方法を紹介しておいて「SWOT分析で戦略を策定してはいけないとはなにごとだ!」と思うかも知れません。

その理由を説明します。

まず、SWOT分析について説明します。SWOT分析を下図に示します。 f:id:haru860:20170815120447p:plain

SWOT分析のプロセス

上図のようにSWOT分析は、以下の3つのステップで進めます。

ステップ1 SWOT分析

自社や自社の製品・サービスの強み、弱み、機会、脅威をマトリックスに記載します。

ステップ2 TOWS分析

TOWS分析は、クロスSWOT分析とも呼ばれ、「TOWS」の名は「SWOT」を逆さまにしたのが由来です。

以下の4つの組み合わせの視点から、施策案を検討します。

  • 強み☓機会→積極姿勢の施策
  • 弱み☓機会→弱点強化の施策
  • 強み☓脅威→差別化の施策
  • 弱み☓脅威→防衛/撤退の施策
ステップ3 戦略策定

TOWS分析をもとに、何をどのような順番で実行していくか、戦略を策定します。

SWOT分析で戦略策定の何がいけないのか?

SWOT分析は、古くからある手法で一見理にかなってそうですし、実際SWOT/TOWS分析をやってみると、良さそうな施策のアイデアが浮かんできます。

何がいけないのでしょうか。

それは「人の感性の不在」です。

関わる人(ステークホルダー)がどのように感じて、どのように嬉しいか

その視点がSWOT分析から生まれてきた施策には欠けています。

「モノ」「カネ」「情報」「人(リソースとしての人)」をうまく組み合わせただけの「論理的な理屈だけの施策」になっているのです。

「理屈だけでは人は動かない」といいますが、「論理的・合理的なだけの施策」では人は動きませんし、無理やり動かしてもモチベーションが低いので失敗します。

実際に「論理的・合理的なだけの施策」で、失敗した事例をコンサルタントが赤裸々に書いた書籍があります。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

大手コンサルティングファームを渡り歩いてきた実力派コンサルタントが、「戦略計画」「最適化プロセス」「業績管理システム」などの戦略論・システムを振りかざして、企業を何度も崩壊させてきた過ちを告白した書籍です。

この書籍を読むと「論理的・合理的なだけの施策」がいかに失敗するかが分かるでしょう。

さまざまな戦略理論と匠Methodの違い

匠Methodと、昔から数多くある戦略理論の違いはなんでしょうか。

昔から数多くある戦略理論が戦略という「論理」だけにフォーカスをあてているものが多いのに対し、匠Methodは、関わる人(ステークホルダー)の感性、嬉しいことに、フォーカスをあてているということです。

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人の感性(嬉しいこと)にフォーカスをあてる効果

企画・戦略策定の段階から、ステークホルダーの嬉しいことに共感することで、以下の効果が生まれます。

  • 強引に説得するのではなく、その人が納得するための話がしやすくなる
  • 自分たちの利益だけを追求するのではなく全体最適を考えているので、協力者が増える
  • 多くのステークホルダーに共感したことによる広い視野の獲得。広い視野から生まれる的確な判断と行動

匠の夏祭り2017のセカンドファクトリー大関さんの事例は、当初IT活用の視点だけでうまく進まなかったプロジェクトが、価値分析モデルを使い、地元の人(徳島県)などのステークホルダーに共感し、広い視野を獲得したことで、協力者が増えプロジェクトが成功した良い事例です。

経営者・リーダーにとっていちばん大切なこと

あるとき、かつて経営の神様といわれたパナソニック創業者の松下幸之助に「経営者にいちばん大切なことを一つ挙げるとするとなんですか?」とあるコンサルタントが質問したそうです。いつもは質問に間髪入れずに回答する松下幸之助が数分考え込んだ結果、「一つではないといけませんか。二つではだめですか?」と言い出しました。

確認後の最終的な回答は二つでした。「人間観を確立すること。宇宙の哲理を把握すること」です(ほんとうは失敗続きだった「経営の神様」 P120より)。

ほんとうは失敗続きだった「経営の神様」

ほんとうは失敗続きだった「経営の神様」

匠Methodの感性と人間観の確立

匠Methodで「人はどのような時に嬉しく、価値を感じるのか」という感性を明確にイメージするには「人間とはこういうものだ」という的確な観点を持っている必要があるでしょう。この観点が人間観です。

匠Methodの論理と宇宙の哲理の把握

ビジネスを考えるときには、ビジネスモデル、つまり、ヒト、モノ、カネ、情報が、どのような論理、理屈で動くかを考える必要があります。

ビジネスモデルは生態系そのものであり、生態系の論理、理屈を深く考え、本質を掴むことは、宇宙の哲理ともつながりそうです

まとめると以下のようになります。

  • 感性:人は何を嬉しいと思い、価値を感じるのか?(「人間観の確立」により深く考察できる)
  • 論理:ビジネスはどのように動くのか?(「宇宙の哲理の把握」により深く考察できる)

究極をいうと、この2つをいかに極めるかで匠Methodをつかって創造されるものが変わってくるでしょう。

「宇宙の哲理の把握」のために、システム思考について学んでおくのもおすすめです。

世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方

世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方

匠MethodにおけるSWOT分析の使い方

それでは、SWOT分析は匠Methodでどのように使えばよいのでしょうか。

結論をいうと、施策のアイデア(施策案)を出すためです(下図参照)。

f:id:haru860:20170815132516p:plain

ここで生まれた施策案が、匠Methodの基本モデル(ステークホルダーモデル、価値デザインモデル、価値分析モデル、要求分析ツリー)のインプットとして活躍します。

SWOT/TOWS分析から生まれた施策案は、3つの使い方が考えられます。

  • 価値分析モデルの「手段」
  • 価値デザインモデルの「ビジョン」「コンセプト」
  • プロジェクト企画案
(1)価値分析モデルの「手段」

TOWS分析の施策案をそのまま、価値分析モデルの手段に使います。

価値分析モデルを作っている際、施策のアイデアがなかなか出にくい場面があります。

漠然と施策のアイデアを考えるよりも、SWOT/TOWS分析から生まれた施策案は鋭い視点をもつでしょう。

(2)価値デザインモデルの「ビジョン」「コンセプト」

以下の記事にも書きましたが、施策案を段階的に抽象化し、価値デザインモデルのビジョン、コンセプトに昇華させる使い方です。

shacho.beproud.jp

A,B,C と生まれた施策を「A+B+C→X」と思考をジャンプできるかがポイントです。A+B+Cのままだと現状の延長線上を未来を描くことになります。

(3)プロジェクト企画案

施策案が、そのままプロジェクトの企画案になる場合もあります。

例えば、弊社運営のPyQをTOWS分析で考えると「Pythonにおいての実績・ブランド」という強みと「プログラマー需要の上昇」という機会があり、「オンラインPython学習プラットフォームのPyQをつくる」という施策が生まれ、それが、プロジェクトの企画案になります。

Pythonにおいての実績・ブランド(強み)☓プログラマー需要の上昇(機会)= PyQ

SWOT/TOWS分析の具体的な進めかた

SWOT分析

まずは、SWOT分析の進め方です。以下のサイトを参考にさせていただきました(いろいろサイトを見ましたが一番まとまっていました)。

www.s-naga.jp

強みのリストアップ

企業の強み・弱みは、以下の視点から考えます。

  • 財務の視点
  • 顧客の視点
  • 業務プロセスの視点
  • 人材と変革の視点
# コアコンピタンス経営

2000年頃、コアコンピタンス経営が一世を風靡しました。その後、経営戦略理論としては廃れてしまったのですが、企業の強みを考えるための視点としては、まだ使える気がします。

WikiPediaによると、コア・コンピタンスは次の3つの条件を満たす自社能力のことです。

  • 顧客に何らかの利益をもたらす自社能力
  • 競合相手に真似されにくい自社能力
  • 複数の商品・市場に推進できる自社能力

匠Methodの「シーズ」にも該当し、再考の余地がある理論と思われます。

# 個人の才能・強み

キャリアデザインの場合は、以下の書籍のWebツール「ストレングスファインダー2.0」を使って、自分の才能を抽出し、そこを起点に強みを考えていくのも良いでしょう。

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0

この書籍によると、才能とは、「無意識に繰り返される思考、感情、行動のパターン」であり、知識(学習と経験によって知り得た真理と教訓)と技術(行動のための手段)が組み合わさることにより、強み(常に完璧に近い成果を生み出す能力)になるとのことです。

ちなみに、私の才能は以下の5つでした。

弱みのリストアップ

強みと一緒に弱味もリストアップします。

リストアップした項目を「強みなのか弱みなのか」という議論を始めてしまうと、延々と終わりません。

それは、周りの環境によって、強みにも弱みにもなることがあるからです。

たとえば「会社が小さい」は、会社が小さくて有利な場面・環境もあれば、不利な場面・環境もあるということです。

チームの思考が、攻め重視の場合「強み」に、守り重視の場合「弱み」に入れておきましょう。

(攻め重視も守り重視も決まってない場合は、楽観的に「攻め」に入れておきましょう)

機会・脅威のリストアップ

機会と脅威のリストアップする際、外部環境を捉えるための観点をあげておきます。

# マクロ外部環境

PESTと呼ばれる4つの観点です。

  • Politics(政治)
  • Economy(経済)
  • Society(社会)
  • Technology(技術)
# ミクロ外部環境

3Cと呼ばれる3つの観点です。

  • 顧客
  • 自社
  • 競合

業界内の外部環境として、5Forcesと呼ばれる5つの観点です。

  • 新規参入
  • 既存競合
  • 売り手圧力
  • 買い手圧力
  • 代替品の脅威
# イノベーションの7つの機会

P.F.ドラッカーの「イノベーションの7つの機会」を観点として、機会(チャンス)を観察するのも良いでしょう。

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】

イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】

書籍に書かれているのは、以下の7つです。

1. 予期せぬことの生起。予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事。

2. ギャップの存在。現実にあるものと、かくあるべきものとのギャップ。

3. ニーズの存在(プロセス・ニーズ、労働力ニーズ、知識ニーズ)

4. 産業構造の変化

5. 人口構造の変化

6. 認識の変化、すなわち、ものの見方、感じ方、考え方の変化

7. 新しい知識の出現

イノベーションを生み出すことは、どの企業にとっても必要なことです。この7つの機会を観察し、自分たちにとっての機会(チャンス)を見いだしましょう。

強み☓機会→積極姿勢の施策

強みに対して、外部環境の機会が訪れているので、積極的な施策を考えます。

弱み☓機会→弱点強化の施策

自社の弱点を補強し、リスクを下げるための守りの施策を考えます。

品質面、財務面、法律面などの施策になるでしょう。

強み☓脅威→差別化の施策

脅威を遠ざけて立ち位置を築くための、差別化の施策を考えます。

差別化を考える上で、参考になる2つの書籍を紹介します。

ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

「ストーリーとしての競争戦略」は、いかに他社と差別化し、模倣されにくい製品・サービスをつくるかという視点を学べます。

この書籍はPyQを企画時にチームメンバーで読み、とても参考になりました。

[新版]ブルー・オーシャン戦略―――競争のない世界を創造する (Harvard Business Review Press)

[新版]ブルー・オーシャン戦略―――競争のない世界を創造する (Harvard Business Review Press)

ブルーオーシャン戦略は、低コスト化と高付加価値化という相反することを両立させ、バリューイノベーションを起こすという考え方です。

  • 「減らす」「取り除く」ことによる低コスト化
  • 「増やす」「付け加える」ことによる顧客価値向上
弱み☓脅威→防衛/撤退の施策

戦争は殿(しんがり)が一番難しく、勝ち戦よりも負け戦が難しいと言われるように、撤退戦略は、事業戦略でも最も難しいといわれます。

撤退の機会を逃すと大きな損失を生みます。そのような観点で、防衛/撤退の施策を検討します。

まとめ

私は、古今東西で生まれるさまざまな戦略論が使えないといっているわけではありません。

戦略論は論理という面で秀逸であるものが多く、施策を生み出すために重宝できるでしょう。

しかし、論理だけでは片手落ちで、人の感性と論理が組み合わさってこそ、戦略が絵に描いた餅にならず、人を動かし価値を創り出す戦略になります。

これからもさまざまな戦略論や経営論が生まれてくるかと思いますが、「その戦略理論は、人の感性の面にフォーカスしているか?」という視点で見てみるのも良いでしょう。

こうなってくると、組織モデルにある「BSC匠戦略マップ」も気になるところです。

新たな知見が得られないか、情報にあたり再考したいところです。

キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード

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  • 作者: ロバート・S・キャプラン,デビッド・P・ノートン,櫻井通晴
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*1:毎月開催されている招待制の匠メソッドを学ぶ会です。株式会社アクティアCOO 高崎健太郎さんを塾長とする有志によって開催されています

*2:発表していた人は自分のキャリアデザインに取り組んでいました

*3:匠Business Place 萩本順三さんのAjile Japan2017 のスライド:AgileJapan 2017 ビジネスアジャイル 匠Methodとスクラムの25スライド目参照

*4:私なりの考えなので、匠Methodのコンサルティングガイドなどに書かれている公式のものではありません。参考程度でお願いします。

エレベータピッチのつくりかた(匠塾 2017年8月開催まとめ、その1)

2017年8月10日に匠塾*1に参加してきました。

私は「匠Methodでつくったモデルをエレベータピッチで説明するには」というテーマのチーム(通称ヘンタイチーム)に参加しました。

エレベータピッチを使う場面

エレベータピッチは、会社で地位の高い人や投資家にエレベータの中で20〜30秒でプレゼンすることなので、自分にはそのような機会がないと思う人は多いかもしれません。

一方、初対面の会話は、どの人にもあります。

仕事で取引先の人と初めて話す、社内で他部署の人と話す、社外の勉強会の懇親会などです。

そのとき、自分は日頃何に取り組んでいるかを、簡潔に伝えるためにエレベータピッチは効果的です。

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私が匠塾で参加したチームでは、以下のようにエレベータピッチについてまとめました。

エレベータピッチの目的

エレベータピッチの目的は、以下を短時間で達成することです。

  • それいいね!と言ってもらえること
  • もっと話を聞かせてよ」と次の機会につなげること(印象に残ること)

エレベータピッチの構成要素

エレベータピッチは、以下の(1)〜(4)を伝えます。時間があれば(5)を伝えると、納得感、説得力が加わります。

  • (1)私はどうしたい?(ずばりひとことで)
  • (2)私が〜することで
  • (3)その結果、誰が
  • (4)〜のベネフィットを得ます

    • サブベネフィット
    • メインベネフィット
  • (5)実現を裏付ける裏付け・証拠・エビデンス・バックグランド

匠Methodとのマッピング

同じチームだった関満徳さん が下図を書いてくれました。 f:id:haru860:20170813111108p:plain

これをもとに、昨年匠道場*2で実施したワーク(テーマ:もし自分が秋田県知事に立候補するなら)をマッピングしたのが下図です。

f:id:haru860:20170813110925p:plain

マッピングのポイント

チームでは、以下のようなポイントを検討しました。

(1)私はどうしたい?(ずばりひとことで)

なるべく短い時間でズバッと伝えるためには、キャッチコピーの方が意味が凝縮されているということで、キャッチコピーを使うことにしました。

決めたキャッチコピーを「エレベータピッチで使えるものになっているか?」という視点でチェックしてみることで、洗練させていくことができるでしょう。

※ビジョンは、エレベータピッチのあと、2回目以降にじっくり話す場面で伝えるということになりました。もちろん、ビジョンを使っても簡潔に伝わる場合は、ビジョンを使ってもOKです。

(2)私が〜することで

価値デザインモデルの「コンセプト」を使うことになりました。

コンセプトは「ビジョンを実現するための構想」「ビジョンを実現するための戦略的要素」ということで、行動的な要素が入ってきます。

価値分析モデルの手段=業務要求から選ぶことも可能ですが、具体的すぎる場合が多いので、コンセプトから選ぶのが良いと思われます。

※要求分析ツリー上でコンセプトと、業務要求はつながってきます。業務要求を見つけてからコンセプトに遡っていくのも良いでしょう。業務要求とコンセプトがツリー上でつながらない場合は、コンセプトの見直しが必要です。

(3)その結果、誰が

価値分析モデルに並べたステークホルダーから、もっとも重要なステークホルダーを選びます。

(4)〜のベネフィットを得ます

(3)のステークホルダーが、どのようなベネフィットを得るかを2つ説明します。

# メインベネフィット

最も優先度が高いベネフィット(嬉しいこと)を伝えます。明確さを増すために、具体的な目標や期限を伝えます。ゴール記述書の「何を、いつまでに、どうする」を使うことにしました。

# サブベネフィット

2番目に優先度が高いベネフィットを伝えます。メインベネフィットに相反するベネフィットを上げられるとなお良いでしょう。相反するベネフィットを伝えると「なぜ、そんなことができるの?(詳しく知りたい)」と興味をひくことが出来ます。

相反するベネフィットを考える際には、ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則の「「ORの抑圧」をはねのけ「ANDの才能」を活かす*3」が参考になるでしょう。

書籍では、相反するものとして以下の例があげられています。

  • 変化と安定
  • 慎重と大胆
  • 低コストと高品質
  • 創造的な自主性と徹底した管理
  • 未来への投資と目先の利益
  • 綿密な計画による進歩と臨機応変に模索しながらの進歩

野球などのスポーツでいえば「育てながら勝つ」が該当するでしょう。

一見、矛盾していることを同時に成し遂げることによって、平凡さを抜け出し、印象に残りやすくなります

AなのにB」という発想法は、キャッチーなタイトル・テーマを生み出す時にも有効なので憶えておくと良いでしょう。

  • 中学生なのに、将棋でデビューから30連勝
  • 学年で成績がビリなのに東大に合格
  • 脚が遅いのにエースストライカー
  • 育成選手出身なのに、侍Japan入り
  • 県でトップの進学校なのに甲子園出場
  • FAや移籍で主力選手が抜けていくのに優勝
  • 小さなチーム、大きな仕事

最後にビジョナリー・カンパニーで紹介されている言葉をお伝えしておきます。

一流の知性と言えるかどうかは、二つの相反する考え方を同時に受け入れながら、それぞれの機能を発揮させる能力があるかどうかで判断される

「Andの才能」を伸ばし、価値あるものを世の中に創り出しましょう。

# メリットとベネフィットの違い

メリットとベネフィットの違いは、よく言われていることなので、簡単に書いておきます。

  • メリット:ウリ・特徴
  • ベネフィット:「メリット」によりもたらされる嬉しいこと(体験・変化)

ベネフィットが正確に伝わっているか?」「メリットではなく、ベネフィットを伝えているか?」という視点でエレベータピッチをチェックしてみるとよいでしょう。

(5)実現を裏付ける裏付け・証拠・エビデンス・バックグランド

エレベータピッチを20秒〜30秒で伝えたあとに、さらに時間の余裕があれば、なぜエレベータピッチで説明したことが実現できるのかを説明します。

これにより「なるほど」と思わせ、エレベータピッチの言葉に信頼性をもたせる効果があります。

具体的には、以下のような内容です。

  • 今までの実績(導入実績、顧客数、事例となる顧客など)
  • 経歴
  • 実験、検証の結果
  • 実現するためのリソース(方法論・メソッド、営業力、技術力など)

最後に:自分のエレベータピッチを用意しておこう

冒頭でもお伝えしたように、自分のキャリア、仕事、事業について、初対面のひとに説明する場面は、意外と多くあります。

そのような場面で、簡潔に効果的に話せるように、匠Methodで、自分のキャリア、仕事、事業についてモデルをつくり、自分のエレベータピッチを用意しておくのはいかがでしょうか。

初対面で話した相手の印象に残り、予想もしなかった展開が待っているかもしれません。

匠塾について

匠塾は招待制の勉強会です。匠メソッドに興味があり、匠塾に参加してみたい人は、にFBメッセージでお声がけください。

「ORの抑圧、Andの才能」について書かれた書籍はこちら

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

匠Methodについて書かれた書籍はこちら

匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜

匠Method: 〜新たな価値観でプロジェクトをデザインするために〜

*1:毎月開催されている招待制の匠メソッドを学ぶ会です。株式会社アクティアCOO 高崎健太郎さんを塾長とする有志によって開催されています

*2:匠メソッドのライセンスを購入している企業の社員のみが参加できる月1回開催されている匠メソッドの勉強会

*3:「ORの抑圧」とは逆説的な考え方は簡単に受け入れず、一見矛盾する考え方は同時に追求できないとする理性的な見方。「ANDの才能」とは、さまざまな側面の両極にあるものを同時に追求する能力。AかBのどちらかを選ぶのではなく、AとBの両方を手に入れる方法を見つけ出す見方。