ビープラウド社長のブログ

株式会社ビープラウドの社長が、日々の思いなどを綴っていきます。

練習は嘘をつかない〜落合博満氏講演2017.06.06 参戦記

元中日ドラゴンズ監督、ゼネラルマネージャー(GM)の落合博満氏の講演会に行ってきました。 (2017年6月6日19時〜、神奈川県民ホール)

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落合博満氏といえば、中日ドラゴンズの監督就任時には「現有戦力を10%底上げすれば優勝できる」と公言し、大きな補強をせず、解雇もせず、就任1年目で優勝を成し遂げた監督です。

中日ファンの私としても、それまで6〜11年の周期で優勝をしていたのが、落合氏就任の8年間で4回の優勝と、黄金時代を体験させてくれた監督としてとても感謝しています。

3年半、GMをやっていた期間は、落合氏のコメントが出ることはほとんどなかったので、とても楽しみに行ってきました。

講演の冒頭。

「GMになり、球団の中のことを知りすぎた。秘密保持契約(NDA)があるので触れたくない。10年くらいしたら、そんなこともあったかなぁと話すかもしれない」

つづいて、100歳まで生きた父親の話、ロッテ時代の歌手デビューのいきさつ(新宿荒木町のふぐ料理屋「アマミヤ」でレコード会社の人に偶然声をかけられた)、稲尾監督解任時の球団批判と取られた話、年俸交渉、トレード、高校、大学、社会人、ドラフトの話、税金の話など。

ここまでで1時間経過。

「そろそろ野球の話をしないと」と落合氏。

話題は当然、6月3日に2000本安打を達成した荒木選手の話から。

本当は最初からこの話をしたかったのでしょう。話すスピードがあがり、スイッチが入りました。

「荒木の2000本安打は自分が一番喜んでいるとおもう。このままでは2000本に到達しないで、荒木が辞めてしまうのではという時期があり、心配していた」とのこと。

以下は、落合氏の怒涛のように続いた野球の話(残り30分のはずが、質疑応答も含めて合計で2時間30分+プレゼント抽選会30分 続きました)をテーマ別にまとめてみました。

練習について

  • 自分が監督時代に一番練習にまじめに取り組んだのは、荒木、井端、森野
  • それ以外の若い選手は全員逃げた。すぐこの場から逃げたいという姿勢だった
  • この世界でうまくなろうという選手は、練習量が違う、目の色が違う。朝から晩まで練習していた
  • 落合時代は若手が育たなかったと言われたが、若手はみんな練習から逃げていた。
  • 野球がうまくなるには、体力勝負。
  • 荒木と(蔵本)ヒデノリは、能力は匹敵するものがあった。
  • ヒデノリは、体力がなかった。だからレギュラーになれなかった。キャンプになると食べれなくなり、1週間でベルト2つ細くなる。そのような体力では1シーズンもたない。
  • 荒木に感謝することは「練習は嘘をつかない」ということを証明してくれたこと
  • ソフトボールの宇津木監督に新井良太と若手に名物の高速ノックをしてもらったことがあるが、「迫ってくるものがなくてダメ」と宇津木監督に言われた。新井良太は本当の意味の体力がなかった。ただし空元気はあった。
  • 現役時代に王貞治さんに「練習は好きか?」と聞かれたことがある。「嫌いです」と答えたら、青少年に悪い影響を与えるからウソでも「好き」とマスコミには答えてくれと言われた
  • ただし、本当は誰よりも練習をやったという自負はある
  • 本当の練習は1人でやる練習。そこにどれだけ時間を使えるか。
  • チームの連携プレーの練習は必要だからやっているだけで、必要なことは練習ではない
  • 今だから練習したと言えるが、周りはライバルなので現役の時は「練習していない」と言っていた。
  • 神主打法は、ひじが背中より後ろに入らないように、動作に遊びを入れながら、時間をかけて練習でつくっていった
  • 人に与えられた時間は少ない。先のことを考えずに、目一杯やること。そうやってみんな生きてきた。選手のユニフォームがどろんこになれば勝つ確率は高かった。試合が終わってきれいなユニフォームの選手が多い時は負けていた。

バッティング理論について

  • バッティングは水もの。答えがない種目。守備、ピッチングには答えがある
  • 感覚と実際の動作は違う。ヒッチとコックという動作があるが、川上哲治さんも自分はヒッチしていないと思っていたが、実際はヒッチしていた
  • みんなヒッチとコックはやってはいけないと否定するが、ヒッチする予備動作はバッティングに必要
  • イチローが苦しんでいる。イチローも年々、この予備動作が小さくなっている。選手は、年齢とともに、スピードに対応するために、若い時より年々動きを小さくする。目が悪くなると前かがみにもなる。それが墓穴を掘ることになる。イチローも動きをまた大きくすれば簡単になおる。
  • 中日の平田も同じ。年々動きを小さくしていて、2ストライクになるとノーステップにしている。考えられない。
  • バッティングで力を入れてよいのは両手の小指だけ、後は支えるだけ。そのように握り、端から力を入れるとバットが走ってくれる

荒木のプレー、バッティング、守備について

  • ファーストのタイロン・ウッズが動かないから、フライもゴロも全部捕れと指示していたが、本当にやっていた
  • 森野がファーストに入って「こんなに楽だとは思わなかった」と言っていた
  • 荒木は性格がまじめすぎる。荒木には「考えるな、適当に」と伝えていたが、それくらいがちょうどよい
  • その性格を反映して、バッティングフォームが堅い。流れるようなスムースさがない。あればもっと早く2000本打てた。一コマ一コマは良いフォームなのかもしれない
  • もっと遊びをもって打てと伝えると「はい」と応えるが、次の瞬間にはフォームは変わってない
  • 人は自分が意識して動作しても、周りからはほとんど分からないほどしか変化できない
  • 大事なのは、どれくらい意識して動作できるかと、それを見てくれる人を探すこと
  • 33本しか本塁打を打っていないが、本当は打てるはず。ナゴヤドームのオールスターで「ホームラン打ってきて良いですか」と荒木に聞かれたので「いいよ」と答えたら、本当に打ってきた。ホームランを狙わないのは自分が生きるために出した答えなのだろう

指導者について

  • 現役時代にさんざん練習して試行錯誤したとしても、引退してから、こうやってればもっとうまくなれたというのが出てくる
  • 良い指導者になりたかったら、引退した後にどれだけ勉強するか
  • 自分の経験を踏まえて選手を指導する時に気をつけるのは、こうするべきだではなく、こういうやり方もあるよという伝え方をすること
  • 例えば、バッティングの呼吸法も吸うのがよいのか、吐くのが良いのか答えは出ていない。それを「吸うのが良い」と言い切ってしまう指導者がいる。それはだめ
  • 指導者はみんな大したことない。指導者で大事なことは、人を上手く使える、活用できる人。一緒に動いてくれる人をいかに見つけるか
  • 監督をやっているときに一緒にやってくれた人たちは素晴らしい人たちだった。だから一緒にやってくれた、中日の森繁和と西武の辻発彦が戦う日本シリーズを観たい

その他

イップス

  • イップスは「ここに投げなければいけない」と意識しすぎると、プロでもなる。
  • あの辺に投げておけば捕ってくれるだろうという信頼感があれば、イップスにはならない。だから支え合いが大事
  • イップスは心の問題というが、技術があったら心は病まない。そして技術をつくるには体力が必要。それが現役と監督時代の答え。

変化球への対応

  • 今の時代、変化球の種類が多い。わざわざ区別しなくても、昔からプロの投手は投げていた。
  • 打てない打者ほど、それらを細かく考えすぎている傾向がある
  • 10種類ある変化球をコンマ何秒で打てるはずがない
  • 右に曲がるか、左に曲がるか、落ちるか、まっすぐか、速いか遅いかくらいでシンプルに考えたほうがよい

バッティングの大事なこと

  • バッティングは上から下に重力に従いバットを振りおろすとシンプルに考える。それなら合わせるだけで力を使え、理にかなっている。
  • 下から上に少しでも振り上げると余計な力を使っている。
  • 上から下にバットを振り下ろし、腰を回転するとレベルスイングになる

今年望んでいたこと、やりたかったこと

  • 荒木の2000本安打
  • 中日森、西武辻の日本シリーズ
  • 野球場で酒を飲みながら野球を観たい。具体的には、プロ野球や高校野球ではなく、東京ドームの都市対抗野球に行って、朝から晩まで3試合、酒を飲みながら観戦したい

最後に

22時を過ぎても話し続ける落合氏に、アナウンサーに時間がないですからと制止されて

「これだけのしゃべりたがりが、良く3年半も黙ってたな」

私の感想・学び

一流になるための練習について

今の仕事に必要な知識だけを学んでいるのは、落合氏に言わせるとチームの連携プレーの練習のようなもので、本当の練習や勉強ではない。

一流になりたいのであれば、自分が描いた一流の姿になるために、人よりも一歩でも二歩でも主体的な練習をする必要がある。

周りの人は優しく、常識的なので「ほどほどに」といってくれるかもしれないが、本当にほどほどにやっていたら、二流三流のままである。 一流になれるかは、いかに主体的な努力、人に見せない練習、勉強をできるかで決まってくる。

本当の練習・勉強とは、自分が描いた一流の姿になるための練習である。

ほどほどにやり、二流、三流のままやっていると、結局つらいのは自分。一流になれば見える景色も違ってくる。

ただし、一流になるための努力は、周りの人が強制できるものではなく、本人が一流をめざして初めて周りは協力・サポートできる。

一流になるための努力は、体力がないとできない。そのために健康で強い体をつくっておくことが必要である。

シンプルに考えることについて

バッティングの大事なこと、変化球への対応、イップスの話から感じられたのは、落合氏が野球をシンプルにわかりやすく捉えようとしていること。一流は、ものごとの真理をシンプルに実感し、理解している。

指導者について

「良い指導者になりたかったら引退した後にどれだけ勉強するか」

人を指導するためには、その人がいかに勉強しているかで説得力、納得感が違ってくる。

またアドバイスするときには「こうするべきだ」ではなく「こういうやり方もあるよという言い方をするべきだ」という点も、心にとめておきたい

落合博満氏、書籍

2015年3月のBaseball Play Study で「俺の心にぐっときた 野球本ベスト5」というテーマで話しましたが、ランキング1位に「落合本」を紹介しました。

以下に落合本の代表的なものを紹介しておきます。

不敗人生

「不敗人生」は、巨人から日本ハムファイターズにFAで移籍した時に書かれた書籍です。日ハムにFA移籍する顛末などについて書かれています。現役時代の鼻っ柱の強さが感じられる書籍です。

不敗人生―43歳からの挑戦

不敗人生―43歳からの挑戦

野球人

「野球人」は現役引退直後に書かれた書籍です。現役時代を振り返るとともに、「もし自分が監督なら」という視点で、将来指導者になることも見据えた話も描かれています。

野球人

野球人

コーチング

「コーチング」は引退後に著した書籍です。指導者としてどうあるべきか、効果的な指導法が落合節で語られています。この書籍の内容が中日監督時代の指導のベースになっていると思われます。

コーチング―言葉と信念の魔術

コーチング―言葉と信念の魔術

バッティングの理屈

「バッティングの理屈」は引退後、監督になる前に週刊ベースボールで連載していたバッティング論を書籍としてまとめたものです。2003年に出版された落合博満の超野球学〈1〉バッティングの理屈落合博満の超野球学〈2〉続・バッティングの理屈が2015年に一冊にまとめられた書籍です。

落合博満 バッティングの理屈―――三冠王が考え抜いた「野球の基本」

落合博満 バッティングの理屈―――三冠王が考え抜いた「野球の基本」

落合博満の超野球学〈2〉続・バッティングの理屈のあとがきに、監督としての所信表明が書かれています。結果は2004年優勝から8年で4回の優勝。

ご承知のとおり、私はプロ球団の監督として、これまでに書いてきたような考え方でチームの舵取りをしていく。当然のことだが、また新たに学ぶことも数多くあるだろう。そういう財産を蓄えて、いつかまた、こうして皆さんと野球を考えていければいいと思っている。まずは、中日ドラゴンズを率い、心を尽くして戦います。野球を愛するみなさんも、自分の目標に向かって全力で頑張ってください(2004年3月 落合博満)

本書を読めば、監督落合博満の思考の原点を発見できることでしょう。

采配

「采配」は、2011年の監督退任時(正確には日本シリーズ前)に出版された書籍です。中日監督時代の8年間、そして選手が一流になるための理論、指導者としてのあり方が述べられています。落合監督の選手への優しさが垣間見られる書籍です。

采配

采配

戦士の休息

「戦士の休息」は、監督退任後、中日のGMになる前に書かれた書籍です。映画論の合間に野球論も語られていて、違った角度から落合節を楽しめます。

戦士の休息

戦士の休息

アドバイス

落合博満 アドバイス―――指導者に明かす野球の本質

落合博満 アドバイス―――指導者に明かす野球の本質

「アドバイス」は、中日のGM退任の年に書かれた書籍です。指導者がどのように選手を育て、チームを導き、勝負に勝つかということについて書かれた書籍です。「勝負論」「練習論」「編成論」「監督論」の4つから構成されています。「優しさ」「厳しさ」「勝負師」などの言葉が浮かんでくる書籍です。

※2017年追加

決断=実行

決断=実行

決断=実行

「決断=実行」は、現役時代、監督時代などを通じてどのような決断をし、実行したかが全体のテーマです。「仕事に取り憑かれろ」「一芸に秀でたければオタクになろう」など仕事への取り組み方も参考になります。

※2018年追加

Baseball Play Studyでは、他にも以下を発表してます。

2017年3月の発表資料です。

2015年3月から2年間経ったので、読むべき野球本情報のアップデートとして新たに10冊紹介してます。

これからも野球からいろいろ学んでいきたいです。

2017年

日曜日の午前中。

ジムで走りながら、NHK杯テレビ将棋トーナメントの対局を最初から最後までみるのが、最近のわたしの流行りです。

わたしにとって印象深い解説があります。

2016年9月11日に放映された丸山忠久九段 vs. 村山慈明NHK杯選手権者(以降村山七段)の深浦康市九段の解説です。

深浦九段は、30歳前後の頃に「勝率7割の深浦」と紹介されていたそうです。

7割は高勝率ですが、深浦さんはその紹介がつらかったそうです。

なぜなら、そのように紹介されるのは、タイトルを取っていないから。

タイトルを取っていれば、タイトル名で呼ばれるからです。

そこで、その現状を打破するために、当時の守り中心の棋風を、おもいきって攻めに意識を変えたところ、タイトルに近づいたそうです。

なぜ深浦九段が自分の若い時の話を出したかというと、村山七段に同じものを感じたからです。

村山七段も、重厚な守り中心の棋風で、勝率は高いが、タイトルには恵まれていなかったそうです。

しかし、前回のNHK杯の村山七段は、違う人の棋譜かと見間違えるほど、積極的な指し手が増えたそうです。

その結果、2015年度のNHK杯テレビ将棋トーナメントをみごと制しました。

深浦九段と村山七段の話で共通するのは、踏み込んだ攻めへの意識。

一流の中でも、一流の実績をあげるためには、踏み込んだ「攻め」の意識が必要。

踏み込んだ攻めへの意識とは、単なる「攻め」に意識を向けるということではなく、

アクセルを踏み込んだ「攻め」の意識をもつということです。

攻めるということは、リスクと背中合わせです。

リスクを負うと「本当にお前にできるの?」「できなかった時の損失はどうするの?」という不安がよぎります。

しかし、そのような葛藤を乗り越えてはじめて新しい自分が現れます。

わたしも、約11年の会社経営の中で、攻めに転じた時期が何回か(おそらく4回)ありました。

今年は再び、攻めの年にします。

壊れても、失敗してもいいという覚悟で。

仕事は楽しいかね?

「仕事は楽しいかね?」という書籍がある。

仕事は楽しいかね?

仕事は楽しいかね?

「仕事は楽しい」を英語にしてみる。

It is fun work.

この表紙のおじさんに「仕事は楽しいかね?」と聞かれたとして、仕事にも、楽しい仕事と楽しくない仕事があると思うかもしれない。

つぎに「仕事を楽しむ」を英語にしてみる。

I enjoy the job.

「仕事を楽しむ」になると、文の主語が「私(I)」に変わる。

私が思うのは、仕事に限らず、なにごとも「私」が「楽しんだ」結果、「楽しい」に変わるのではということである。

ある飲み会に参加したとする。

当初は、楽しいと思えるメンバーではなかったかもしれないが、自らその場を楽しもうと、いろいろ会話をした結果、楽しくなっていく。

その場がもともと楽しいかどうかよりも、その場を楽しめるかどうか。

それにより、その場の楽しさは変わってくる。

経営や開発など、さまざまな仕事も「楽しい」ことばかりではない。

大変な経験もあり、イヤな思いをすることによって、楽しさが失われていくことも、たまにはあるだろう。

仕事や人とのつながり、場を自ら楽しむことによって、楽しさに変えていけるようになれればと思う。

それは「主体的な人生を歩んでいる」といえるのではないだろうか。

独習Python入門〜1日でプログラミングに強くなるを読みました

BPStudyの、#79#91#92#100#103で登壇(登板)して頂き、8月26日の #108でもお話いただく、ござ先輩が「独習Python入門〜1日でプログラミングに強くなる」という書籍を出版されましたので拝読させていただきました。

独習Python入門――1日でプログラミングに強くなる!

独習Python入門――1日でプログラミングに強くなる!

出版のきっかけは、プログラミング初心者の就職前の甥っ子さんがプロフェッショナルを目指すために書いた内容を、出版社に持ち込んだことだそうです。

私のプログラミング入門時代

プロフェッショナルを目指す人のためのプログラミング入門書ということで、まずは、私がプロフェッショナルを目指し始めた頃を思い出すことから始めてみます。

以下に、私がプログラミングを始めた頃に苦しんだことを恥ずかしながらあげてみました。

  • エラーメッセージの意味がわからない。解決できない。進まない。実行すらできない。1日なにやってたのと落ち込む

    例:全角英字/数字の区別がつかず、何度見なおしてもエラーがみつからない(恥)

  • 時間が過ぎ、焦り、心が折れそうになり、自分は向いてないのかと考え始める

  • なぜこんな簡単なことを、こんなめんどくさい方法でやらないといけないんだと、憤りを感じる
  • 学んだ内容をどのように活用して、社会に役立つアプリケーションにすればよいのかわからない

プログラミングは体感し学んでいくもの

書籍を開いたら、まず読んでほしい箇所があります。

それは11章の「学習曲線について」です。

ここには以下の内容が書かれています。

  • プログラミングは体感するもの。体感していくことでしか理解が深まらない
  • 理解が深まるまでは潜伏期間がある
  • プログラミングの学習の最大の敵は、わからない自分に自信をなくしてしまうこと

私は上にも書いたようにプログラミングを始めた素人時代に苦戦し、数年経ってもなかなかプロと呼べるレベルにはならず、焦り、心が折れそうになりながらプログラミングを学び、仕事をしていました。

その時にこの内容を知っていたら、どんなに気持ちを落ち着けてプログラミングに取り組めたことか。

「プログラミングの学習曲線」は、プログラミングを始める方、始めて少し経った方にも是非とも知ってほしいことです。

実況中継シリーズを彷彿させる語り口

この書籍を読んでいて、私は、ふと大学受験の時にお世話になった実況中継シリーズを思い出しました。

実況中継シリーズは、名物講師の実際の講義を書籍にしたものですが、教科書を読むよりも、すいすいと頭に入ったものです。

「独習Python入門」では、プログラムを動かすだけではなく、プログラミングをする上での心構えも、要所に散りばめられています。

  • ネストの深さは闇の深さ
  • プログラミングにおいて、コピーペーストは諸悪の根源!ダメ!絶対っ!!(Don’t Repeat Yourself)
  • エラーを制するものはプログラミングを制す

また文字コードなど、すぐにはプログラミングに関係しないような内容などの場合「ここは今は読まなくて良い、でも知っていると後で役立つ」などと、メリハリをつけて説明していたり、プログラムが実社会で活用される事例を数多く説明し、読者のイメージを湧きやすくさせています。

このように、プログラミングに必要な文法などを説明するだけではなく、さまざまにバリエーションをつけて理解を深めていくスタイルは、教科書というよりも実況中継シリーズを彷彿とさせます。

ステップ・バイ・ステップかつ実践的

学習内容ですが、Pythonの基本的文法、オブジェクト指向、自動テスト、Webアプリケーション(HTML/CSS,JS)と段階を追って説明しています。

基本的文法を段階的に丁寧に説明しつつ、実際の仕事で必要になるであろうオブジェクト指向、自動テスト、Webアプリケーションを説明しています。

オブジェクト指向、自動テスト、Webアプリケーションなどを混乱するから出すのはやめようというよりも、いずれ実践で必要になるのだからと、あえて説明し、プログラミング初心者が混乱しないように配慮してシンプルに説明している箇所は、かなり時間をかけたのではないでしょうか。

(時間をかけて推敲した書籍と、そうではない書籍は見分けがつくものです)

イラストも学習内容をわかりやすく説明しつつ、ほんわかしてて良い感じです。

私は、特にファイル処理のイラスト<ファイルを開いて(open)して、書き込んで(write)、保存(close)>のイラストが気に入りました。

プログラミングを始めた当初、恥ずかしながらファイル処理のイメージが湧かなかったので、そのときの私に見せてあげたいです。

まとめ

プログラミング入門者にこの書籍はおすすめです。

ひたすら文法を説明しているだけの教科書的な入門書は退屈して挫折しがちです。

私にも「昔、この書籍で学んだ」という思い出の書籍がいくつかあります。

「独習Python入門〜1日でプログラミングに強くなる」も、プログラミングでプロフェッショナルを目指したいひとの思い出になる書籍になることでしょう。

ビープラウドが設立されて、丸10年が経ちました

ビープラウドは2006年5月23日設立なので、昨日で丸10年を迎えました。

これまで関わっていただいた多くの方々に、深く感謝いたします。

10年前に、わたしがなぜ会社を始めたか。

それは「新しいなにかを創り出したい」とおもったからです。

「新しいなにか」とは、組織や、製品やサービス、システムやアプリケーション、サイト、方法論や技術、書籍などのコンテンツかもしれませんし、コミュニティや、働き方などであり、またヒトかも知れません。

「新しいなにか」を創り出すためには、以下の3つの条件が必要と私は考えています。

  1. 自由で楽しくリラックスした雰囲気
  2. アイデアをカタチにするスキル・知識・チームワーク
  3. 創造のプロセスを導くリーダー

自由で楽しくリラックスした雰囲気

「創る」ためには、字の通り「創造力」を発揮することが必要です。

創造力を発揮するための条件として、リラックスした、自由な気分でいることがあげられます。

ルールに縛られて窮屈な気持ちであったり、恐れを抱いた気持ちでいたら、新しい発想は生まれてきません。

リラックスし、自由な気分でいてもらうために、会社では、ルールは最低限にし、自由な雰囲気で楽しく、やりたいように仕事をしてもらえるようにつとめてきました。

アイデアをカタチにするスキル・知識・チームワーク

たとえば、製品やサービス、システムやアプリケーション、サイトなどを「創る(開発する)」ためには、設計やプログラミングやデザインなどの技術力やスキル、知識が必要となります。

また、品質やマネジメントなどさまざまなスキルや知識、そしてお互いの力を引きだし、補いあうチームワークも必要となるでしょう。

そして、より良いプロセスで、アイデアをカタチにするには、日々、新しいスキルや技術を学び、磨き、洗練させ、研鑽していく必要があります。

ビープラウドでは、そのようにお互いに研鑽し、学ぶ雰囲気が自然とつくられてきたとおもいます。

創造のプロセスを導くリーダー

自由でリラックスした雰囲気でものごとを発想し、スキル・技術力・チーム力を持っているとして、ブレーンストーミングを繰り返し、プロトタイプ開発を繰り返せば、価値ある「新しいなにか」は創り出せるでしょうか。

私みずからの経験からもノーと言えます。

どのような会社でも時間やお金などのリソースは有限です。

延々とブレーンストーミングやプロトタイプ開発を繰り返しても、力尽きるか、妥協して価値の無いものをつくってしまいます。

アイデアをカタチにし、価値を生み出すには、メンバーのアイデアを引き出し、生まれる価値を明確にし、合意を形成し、行動に向かう活力を生むための地図が必要です。

その地図をメンバーとともに描き、チームを導いていくのが、リーダーの役割であると私は考えています。

そのために私は、要求開発(匠メソッド)という手法を2012年から学んできました。

匠メソッドはすでにconnpassの企画や、受託開発の提案フェーズなどに導入していて、これからも活用していければと思います。

要求開発については、以下のスライドにもまとめていますので御覧ください。(スライドではエンジニアを対象にしていますが、エンジニアに限った話ではありません)

これから

ビープラウドにはスキルがあり、人間的にも魅力的で、真摯に仕事に取り組むひとたちが揃っています。

そのような人たちが、磨いたスキルや技術を活かし、ひとが本来持っている創造力をもって、価値あるものを創りだし、それにより社会に貢献することで、自分の価値を実感できる、そのような場にビープラウドをしていきますので、これからも宜しくお願いします。

Developers Summit(デブサミ) 2016 に「エンジニア・コミュニティで組織は動き出す」というテーマで登壇しました

2月18日に、 Developers Summit(デブサミ) 2016 に登壇させていただきました。

以下は、当日のスライドです。

オファー

2016年1月7日、会社近くで昼ごはんを食べていると、Facebookメッセージが届いた。

翔泳社の鍋島さんからである。

読むとDevelopers Summit 2016 (通称デブサミ)で講演してくださいとのこと。

講演日は約1か月後の2月18日である。

「デブサミ!?」

わたしは10年以上前から、いつかデブサミで話せるようになりたいなぁと思っていた。

デブサミはエンジニアの祭典ともいえるIT業界では有名なイベントである。

まったく予想していなかったオファーに、わたしの瞳孔は開いた。

回答は1月12日を目処にとのことだが、心は決まっていた。

成人の日の3連休にぼんやりと自分の気持ちを確かめ、連休明けに「担当させていただきます」と鍋島さんに回答した。

内容については「コミュニティと会社」という趣旨の依頼だったので、昨年のPyCon JP基調講演の内容を軸にすれば良いとは思ったが、いったんゼロからつくりあげていくことに決めた(結果的に同じ内容になってもよしとする)。

前日

会場(目黒雅叙園)で17時からリハーサル。

時間に余裕をもっていたはずが、あやまってAmazon Japanオフィスのエントランスまで直通エスカレーターで昇っていってしまったりしながら、会場にぎりぎり到着した。

タイムテーブル を確認すると、いつの間にか「満員」と表示されていたので、小さな会場なのだろうと思っていたら、100人以上は入れそうな会場。あらためて緊張の高まりを感じた。

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当日

デブサミ初日の2月18日。9時30分に会場の目黒雅叙園に到着。

わたしが講演をする予定のD会場に向かった。

先発投手は、以前BPStudyお話しいただいたこともある楽天の川口さん。

立ち上がり、朝一でまだ雰囲気が堅いなか、次々とネタを繰り出し、会場の笑いをとる川口さん。

同じ割合でスベりもするが、ネタを繰り出し続ける川口さん。

(自分にはこのスタイルはできないな。自分のスタイルってなんだっけ)

とあらためて考えるきっかけとなった。

自分の出番は17時25分。D会場の一番最後のセッションである。

午後は、スピーカーラウンジで最終調整に入った。

3年ほど前に、日本たばこの浅井浩一さんの講演を聴いたときのこと。

浅井さんが講演の当日朝に、家で講演の準備をしていると「同じようなことを話すのに、なぜ、そんなにぎりぎりまでうんうん考えているの?」と奥さんに聞かれたそうだ。

浅井さんは「せっかく人が聞きに来てくれるのだから、たとえ同じ話でも自分のベストを尽くしたい。だからぎりぎりまで考える」とおっしゃっていた。

そのエピソードを伺って以来、私も社内外かかわらず、人前で話す時には、浅井さんを見習い、ぎりぎりまで話す内容について考え抜くことにしている。

この日も、スライド、話す内容について直前まで考え抜いた。

本番

講演の30分前。

待機していたスピーカーラウンジで案内の方に呼ばれ、会場に移動し、1番前の席に座った。

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15分ほど待ち、定刻になった。

司会の女性に名前をアナウンスされ、会場に紹介された。

わたしはジャケットを脱ぎ捨て、D会場の抑え投手として登板した。

https://twitter.com/jugemsan/status/700235241277919232

ソーシャルメディアに人の写真を許可なくあげるのはうんぬんという暗黙ルールも世の中にはあるので、あえて写真のアップを会場にお願いした。

多くの方に、写真をアップしていただき感謝感謝です。

(着ているユニフォームは中日ドラゴンズ1974-1986 ホームグラウンドモデルです)

ビープラウド?何の会社?あなた誰?という方も多いだろうとおもったので、冒頭で「(ビープラウド自社サービスの) connpassを使った人がある方はいますか?」という質問をした。

会場の7〜8割の人が手を挙げてくれ、これにより、わたしの心は落ち着きを取り戻すことができた。

時間は数分余ったが、あっというまの45分。

もう少し話していたいと思うくらい気持ち良く話すことができた。

最後に

念願叶い、憧れのDevelopers Summit で話すことができました。

チャンスをいただいた翔泳社さま、運営委員の方々、そして鍋島さんにお礼を申し上げます。

また、会場では、スタッフの方のスピーカーへの丁寧な対応、そして気遣いがひしひしと感じられ、私の中で、場への特別感も高まり、ベストを尽くすことができました。

一生の思い出をありがとうございました。

また、2週間前に開催されたデブサミ2016 スピーカーズキックオフパーティーの開催も嬉しかったです。どのような方達が発表するのかを知ることができたのと、スピーカー同士で情報交換をすることができ、当日の雰囲気を把握し発表に役立てることができました。

〜したくないという気持ちを活用する

「テストをしたくない」「同じようなプログラミングを何個もしたくない」「ミーティングをしたくない」「営業をしたくない」さらには「仕事をしたくない」など「〜したくない」と感じることは、仕事に限らず、日常の生活でも良くあることだとおもいます。

そのようなとき、多くの人は「そのようなことでは良くない。頑張ってやらねば」と考え直し、行動を続けることが多いとおもいます。

また、自分以外の人が「〜したくない」と言っているのを聞いて、「〜しないで、成り立つのか。怠けるな(怒)」と言うのは簡単ですし、そのように叱咤・叱責するような気持ちになるのも仕方のないところです。

しかし、それは新しい発想や行動を生む、大きなチャンスを逃していると思います。

ここで「〜したくないと考えるのは良くない」となるのではなく「〜したくないなら、〜しないためにはどうしたらよいか」と考えてみたらどうでしょうか。

たとえば「掃除をしたくない、掃除がめんどうくさい」という気持ちに目を向けたからこそ、ルンバは生まれたのでしょう。

「我慢して掃除をするのが当然だ」と発想していたら、ルンバは生まれなかったでしょう。

また「洗濯をして、脱水槽に移し、脱水をして、洗濯物を干す」というのを面倒くさいと思わず、「そういうものなんだ」と思っていたら、いつのまにか面倒くさいという気持ちも忘れ、日常になっていくでしょう。

そのような気持ちに気づかなかったら、乾燥機付き全自動洗濯機は生まれなかったはずです。

また、システムの開発では、テストデータを大量につくらないといけない場面があります。

まずはそのデータを手作業でつくることになりますが、それを面倒くさいとおもわずに、そういうものだと思って、粛々と作業を続ける人もいるでしょう。

しかし、「面倒くさい、やりたくない」と感じた時に「その手作業のテストデータ作成をやらないためにはどうしたらよいか」と考えられれば、Excelのマクロやプログラムを作成して、自動でデータをつくろうという発想が生まれてくるわけです。

このように「〜したくない」という気持ちに目を向け「〜しないためにはどうしたらよいか?」と考えることによって、新しい発想が生まれ、未来を変えていくことができるのです。

「〜したくない」という気持ちが生まれた時や、そのような言葉を聞いた時は、それを怠惰と決めつけずに、その素直な気持ちや感情に目を向けて認識し、「やりたくないなら、〜しないためにはどうしたらよいか」というように、前向きに視点を変えるような思考習慣はいかがでしょうか。