ビープラウド社長のブログ

株式会社ビープラウドの社長が、日々の思いなどを綴っていきます。

PyCon JP2015 基調講演の裏側

私は昨年末の社内納会で、会社が10年目を迎えるにあたり、ビープラウドのビジョン、ミッション、価値観を、創立日の2015年5月23日までに公開すると宣言しました。

そして、1月末のBPCamp(社内旅行)でのワークショップによる社内意識の調査、創立以来の取り組みの振り返り、2006年からの自分のブログの全エントリーの読み直しなどをしたうえで、考えをまとめ、5月23日にブログに公開しました。

shacho.beproud.jp

年始からずっと取り組んでいたので無事エントリーを公開し「少しゆっくりしよう」と思っていました。

それも束の間、PyCon JP 2015プログラムチームからの連絡を頂いたのは、その8日後の5月31日でした。

「Possibilities of Python」というテーマで基調講演をということでしたが、何を話したら役立てるのか、私にはすぐには浮かびませんでした。

私よりも適任がいるのではということが頭をよぎりましたが、年末の社内納会で、自分のコンフォートゾーン(自分のぬるま湯)から抜け出てコンフォートゾーンを広げようと、会社メンバーの前で話したのを思い出し、メールを読んで1時間後には、担当させて頂きますと返事をしました。

PyCon JPの2日目の基調講演。2日目は10月11日なので準備期間は約4か月です。

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インプット

何を話そうかということがわからなかったので、アウトプットのためには、インプットということで、本を読むことに決めました。

読んだ書籍は以下の3種類。

  1. 自分の人生の血肉になった書籍
  2. 家の本棚や、電子書籍で積読されている書籍
  3. 1と2を読んでいるうちに発見した新たな書籍

最終的には、1は30冊、2は30冊、3は10冊程度は読んだと思います。

その中でも、一番役に立ったのは、2の積読されていた書籍でした。

積読されていた書籍を読んでいると、なぜ早く読まなかったのかと思える本が次々と現れました。

そこには多くの発見があり、とても驚いたのを憶えています。

スケジュールとしては、6月7月と8月上旬はインプットに徹しました。

早くかたちにして楽になりたいという気持ちも片隅にはありました。

そこをこらえて、インプットした情報を寝かせることで化学反応を起こし、良いアウトプットが出てくるのを待ったのです。

中途半端な状態で書き始め、その中途半端なアウトプットにとらわれ、本当に話すべきことが表現できないことを回避するためでもありました。

そして、このインプットにより、積読もだいぶ解消されるという嬉しい効果も出ました。

転機

転機が訪れたのは、8月12日でした。

昨年のPyCon JP2014の基調講演をされたサイボウズラボの西尾さんに別件の用事もあり、話を伺いに移転したばかりの日本橋のオフィスに伺いました。

伺う前に、西尾さんのブログや、スライドなどを拝見し、KJ法について書かれているのを発見しました。

KJ法については言葉は知っていましたが、はっきりと考え方については把握していませんでした。

事前知識を仕入れておきたいと思い、川喜田二郎さんの書籍を読んでみました。

発想法 改版 - 創造性開発のために (中公新書)

発想法 改版 - 創造性開発のために (中公新書)

1967年の出版、なんと今から48年前の書籍です。

そこには、演繹法(インダクション)でもなく、帰納法(デダクション)でもない、もやもやとした情報群から明確な概念を引っぱり出す発想法(アブダクション)が書かれていました。そこには、場数や経験を頼りにするのではなく、個人が創造性を発揮し、チームで衆知を集めるための体系的な方法/考え方が書かれていて、今の時代にも通じる発想法に驚愕しました。

西尾さんに伺うと、「コーディングを支える技術」を執筆された時にもKJ法を使い、内容を導き出していったそうです。

コーディングを支える技術 ~成り立ちから学ぶプログラミング作法 (WEB+DB PRESS plus)

コーディングを支える技術 ~成り立ちから学ぶプログラミング作法 (WEB+DB PRESS plus)

また、KJ法をやっていくなかで紙切れづくりというプロセス(アイデアを付箋紙に、1行見出しで書いて行く)がありますが、そのコツについて教えて頂きました。

  • たとえば100枚とノルマを決めて、アイデアを付箋紙に書いていく
  • 枚数のノルマを決め、現在の枚数をカウントすることで、ブレストの進捗度が分かる
  • 同じ内容の付箋紙を書いてもOK。複数回出てくるものは重要ということ

西尾さんとは、KJ法だけではなく、U理論という共通の言語もあり、お話し頂いたのは1時間でしたが、それ以上に感じられるほどの密度の濃いお話でした。

この西尾さんのお話を伺い、私もKJ法で基調講演の内容を構成してみようと決めました。

アウトプット

私の作戦としては、8/21まではインプットに専念。

8/22(土)にちょっとした電車の移動があるので、その車中で付箋に書き出しを開始し、8月末までに一気にまとめ、スライドのドラフト版をつくるというものでした。

付箋に書き出し、そして、それを電子化してKJ法(もどき)でまとめたものが以下です。

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古典的な書籍ですが、以下の書籍は、スライド構成をまとめる上で、あらためて大変役立ちました。

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

ピラミッド原則、冒頭部の構成方法、帰納法、演繹法、などロジカルで伝わりやすいスライド構成を検討する上で、とても重宝しています。

その後、9月のシルバーウィーク5連休中はスライドの構成を研ぎすませ、最終的に提出したのは、シルバーウィーク最終日の 9/23の23時過ぎ。

原稿のドラフトを提出したのは、9/30の夜でした。

当日までの準備

9/30に原稿のドラフトを提出してからは、10日間、毎日1日1回、1時間ほど時間をとって、声を出してスライドを読む練習をしました。

声を出して読んでみると、つっかえたり、話しにくい箇所が出てきます。

その話しにくい箇所は、論理的にも思わしくなかったり、伝わりにくかったりする箇所です。

それらの箇所を書き直しては、スライドの精度を上げて行きました。

何かの発表をするときは、1回でも実際に読み上げてみることです。それだけで発表、スライドの質がだいぶ向上します。

当日

基調講演は朝の10時からなので、9時に到着し同時通訳の方々と内容について打ち合わせをしました。

私の懸念点としては、同時通訳と私の話すスピードのバランスでした。

私の話が速すぎて、同時通訳が追いつかなくならないように、ゆっくりと話すように練習してきました。

「同時通訳が話終わってから、次の文章を読めば良いですか?」と質問した所、同時通訳レシーバーをつけているとそれが気になるので、つけない方がよいということで、レシーバーはつけずに話すことになりました。

その代わり、スライドの変わり目や話の変わり目は、少し間をあけてくれると助かるとのこと。

同時通訳の方々との打ち合わせも終わり、壇上に向かい、プロジェクターとの接続テスト。

スライドの表紙だけではなく、他のページも画面に映して切れていないことを確認。準備万端。

本番

定刻になり、スタッフの方に私のプロフィールが紹介され、壇上にあがりました。

当日の内容は、Togetter でまとめて頂いています。

togetter.com

万全の準備をしていたので、心は落ち着いていました。

冒頭で、「Do you Like Python?」という質問をしました。

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もはやPythonを使うのは当たり前になっている人に「Pythonが好きだ、Pythonを使いたい」という根源的な気持ちを呼び起こしてもらうためです。

壇上から見ている限り、ほぼ、全員が手を挙げてくれました。

相当数の人たちが「当たり前だろう。Pythonが好きだぜ」というにこやかな顔をしていて、ほっとしました。

そのあとの自己紹介で、なぜだか2回ほど言葉の発音がおかしくなり「あっ、緊張してるな」と自分で認識できました。

しかし、それを認識できたおかげでそのあとは、落ち着いて話せたので一安心でした。

講演にあたっての心配ごとは、英語同時通訳よりも自分が話すスピードが突っ走り過ぎないことです。

だいぶゆっくりと話したので、堅めな口調になってしまったかも知れません。

しかし、@shimizukawa のつぶやきによると、それくらいのペースでも結構早口で訳されていたとのこと。やはりちょうどよかったのかもしれません。

基調講演の最後のメッセージとしては、「技術に感動しよう」ということで締めくくりました。

プログラミングを始めていた頃は、自分のプログラムが動いた時に「おー、動いた」と感動していたのが、いつのまにかそのような気持ちも忘れてしまいがちです。

そのような人に、もう一度、プログラミングを始めたときの感動を思い出してもらうと同時に、そのあとの技術セッションでまた違う気持ちで話を聴けるようになるとおもったからです。

最後に

このような機会がなかったら、いままでの取り組みや、考えをまとめるということは、おそらくしなかったと思います。

エンジニアの方は、今回のように話せる場があったり、そのような機会が訪れたら積極的にその機会を活用するのが良いでしょう。

それが自分の中に眠っている暗黙知を、輝く形式知として世に出す絶好の機会となります。

PyCon JPプログラムチームの方々には、大きな機会をいただき、本当に感謝しております。

そして、担当の齋藤さん、とてもお世話になりました!ありがとうございます。

PyCon という素晴らしいコミュニティ。また、何かお手伝いできることがありましたら、協力させてください。

発表スライド

www.slideshare.net

BPRD2.0 その後

6月1日に、BPRD(BeProud Remote Day:リモート勤務の日)を、従来の週1日から週5日に拡大しました。

ブログでも公開( BPRD2.0 )したところ、いろいろな方から反響を頂きました。

社内で、困っていることが起きていないか、問題は発生していないかのアンケートを取りましたので、公開しておきます。

アンケート結果

Q. BPRDの制度をどのくらい利用しましたか?

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  • 15回以上 3.8% → 週に4,5回
  • 10〜15回 7.7% → 週に2,3回
  • 6〜10回 11.5% → 週に2回
  • 1〜5回 53.8% → 週に1回
  • 0回 23.1%

Q. BPRDの拡大で良かったことはなんですか?

時間の有効利用、精神的余裕

  • 朝ゆっくりできる
  • 洗濯など家事する余裕ができる
  • 宅配を受け取りやすい
  • ギリギリまで寝る事ができて電車に乗らずに済む
  • 日中に済ませなければならない私用を週に複数回行えること
  • 通勤時間がなくなったこと
  • 午前ミーティング、午後自宅などで電車混雑時間帯以外の帰宅が可能になりストレスが減ったように思う

仕事のしやすさ

  • 家のほうが静かなので集中できる
  • 騒音や空調などがコントロールしやすくなった
  • 総じて集中しやすい環境を作りやすい
  • 自宅の方が集中できないかなと思ったが、なれるとそうでもないと思う
  • メンバーが都合に合わせて自由にのびのび働いていた
  • オフィスに人が少なくて快適
  • オフィスが気持ち涼しい日がある

経済的余裕

  • 自炊しやすくて財布に優しい
  • お昼ぎりぎり自炊が可能で、食費の低減が可能になった。

体調・健康面

  • 出勤が減ったぶん楽になった
  • 体調が安定しやすくなった

家族

  • 家族の体調が悪い時に午後BPRDや午後休などを組み合わせてより柔軟に対応できるようになった

制度の使いやすさ向上

  • 平日BPRDを使用した週でも週末に作業入った時に利用できたこと
  • BPRD2.0 をいつでも使えるというのが 精神的余裕に繋がりそうな気がします。 実際には自分のBPRD使用率が 制度導入前と同じで BPRD2.0前とあまり変わらないです。
  • とくに週何回の制限を気にする必要がなかったので、気軽にBPRDできるようになった
  • 今週は、○曜日にBPRDしたいから今日はやめておこう、ということを考えなくてもよくなった
  • 週のどの日にするか考える時間が減りました(したい時・できる時にすればよい)
  • いつでも取れるという気楽さがあった。余計な制限(週一回)みたいな面倒くさいことを気にしなくていい。「金曜日にRDしたくなるかもだから火曜日は出社しとこうかな?」とかを考えなくても済む

Q. BPRD拡大で困ったことは何ですか?

  • 家から出なくなりがちなので、運動不足になりがち。気分転換ができずに、ずっと仕事をしている気分になる

Q. 改善した方がよいこと

  • 複数の案件に関わっている場合に、それぞれの部屋でBPRD宣言してそのログをぺたぺた貼るのが手間だった
  • リモート会議用の設備、ノウハウが充実するとよいのかなと思う。 スピーカーハウンリング対策、防音など。
  • 各人がどこにいるかわかりにくいので昼休憩とか休憩とかとる時に出社してても案件部屋で宣言したほうがよい
  • remoteで仕事してる人とは案件でつながりがないと、つながりが持てなくなってきたので全員出社日&17時以降はアルコールと食事をだしたゆるい集まり(BPStyle以外)みたいなことを一ヶ月に一度ほどやるのは有りだと思います
  • 個人としては、通勤を0にするのは気分的にも体力的にもよくないと思ったので、週に1〜2日は出勤する形か、午前中は自宅作業、午後は出社、のような働き方がいいな、と思いはじめている

Q. 今後はどれくらい使いますか?

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  • 53.8% たまに使う
  • 26.9% ちょくちょく使う
  • 11.5% ガンガン使う
  • 7.7% たぶん使わない

所見

制度使用状況

オフィスをみていると、60%くらいは出社しているというイメージでした。

週1回程度が53.8%、週2回程度が11.5%(合計65.3%)を占めているように、通勤とリモート勤務のバランスを取るという使い方になりそうです。

生まれた効果

以下のように様々なものがありました。

  • 時間の有効利用、精神的余裕
  • 仕事のしやすさ
  • 経済的余裕
  • 体調・健康面の余裕・向上
  • 家族
  • 制度の使いやすさ向上

制度の拡張によって、さまざまな価値が生まれたということが言えるのではないでしょうか。

デメリット

一方、生まれたデメリットとしては、運動不足になりがち、ずっと仕事をしている気分になるというものがありました。

こちらはチームや個人で時間をしっかり区切って仕事をする、通勤時間が無くなり、余裕が生まれた時間を運動にあてるなどの工夫が必要そうです。

今後について

短期的には問題が無くても、長期的に問題が発生する可能性があるので、引き続きうまく運用されているかを観察する必要がありそうです。

考えられるものは以下のようなものがあります。

  • コミュニケーション不足による認識のずれによる会社全体のアウトプット、品質の低下
  • 社内の仕事以外の人とのコミュニケーションが取りにくいため、知り合いが増えない
  • 動かないことによる不健康。精神面への影響

【関連】フリーアドレスの導入による社内環境の有効利用

リモート作業の割合が増えるにあたって、社内の席の有効活用を検討しました。

フリーアドレス制についてアンケートを取った所、相当数の「フリーアドレスでも良い」という回答を得たので、フリーアドレス制を今週から導入しています(15席)。

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BPRD2.0の本当の目的

仕事の場所、時間の使い方、チームとの関わり方、仕事の成果・生み出す価値、自分の体調管理、家庭、プライベートの時間... など。

これらにはすべて時間が関わります。

その時間の使い方について、自分たちで考え、バランスをとり、主体的に選択し、行動できる幅を大きくすることが、この制度の本当の目的です。

「オフィスに行かないといけないからオフィスで仕事をする」のではなく「自分で選択してオフィスで仕事をする」ということになります。

また、自分たちにさまざまなメリットが生まれている制度ですから、制度が存続するように、自分たちで協力し、工夫し、問題が発生しないように行動し、制度を洗練化させ、育てていく必要があります。

そのように日頃から主体的に行動してもらうことが狙いですが、ひきつづき経過を観察したいとおもいます。

PyConJP 2015の基調講演で登壇します

今年の10月に東京で開催されるPyCon JP 2015の基調講演(keynote)で登壇させて頂くことになりました。

pycon.jp

PyConJPについては、公式サイトの説明を引用させていただきます。

PyCon(Python Conference)は世界中で開催されており、2012年は2,000名以上が参加する PyCon US をはじめ、世界30箇所以上で開催されています。 PyCon JP は2011年から毎年開催しており、PyCon JP 2014では545名の参加者を集め、アメリカ、ヨーロッパに次ぐ世界最大規模のカンファレンスとなっています。

基調講演のお話は、2週間前に頂きました。

そのとき、まず私によぎったのは「自分にできるだろうか」「自分以外にも適切な人がいるのではないだろうか」という不安でした。

しかし、しばらく考えているうちに浮かんできたのが、2014年末のビープラウド社内納会のシーンです。

以下は、その時に使ったスライドの抜粋です。

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私は納会の場で、会社メンバーたちに、次のことを伝えました。

  • 新しい役割や仕事を任されるときは、誰しも不安になる
  • 不安になるのは人の性質として仕方のないことだが、新しい役割や仕事を任されるときはコンフォートゾーンから思い切って抜け出して取り組んでみてほしい
  • 人が何かの役割・仕事を任せる時は、その人ならやれるという算段があるから任せるもので、意外とやれてしまうものである
  • 思い切って取り組めば自身の能力も伸び、社会で活躍できる場面も増える。それは自分が社会で生きていく力を高めることでもある

「コンフォートゾーンを抜けよう」と自分でいった手前、この基調講演の話にのぞまない訳にはいきません。

(こういうのをブーメランというのでしょう)

「準備万端の人にチャンスが訪れることを幸運と呼ぶ」ということばもあります。

今回の基調講演のお話は、ビープラウドとそのメンバーの日々の取り組みにより、巡りめぐって訪れたチャンス(=幸運)かもしれません。

そう考え、私なりの最善を尽くそうとおもいます。

BPRD2.0(BePROUD Remote Day 2.0)

6月1日から、社内に「BPRD2.0」という制度を導入します。

BPRDとは、BePROUD Remore Day(読み:ビーピーアールディー) の略で、ビープラウドで仕事をするひとたち全員(社員、アルバイト、パートナーの人たち)がリモート環境で仕事ができるという制度です。

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2014年4月1日に週1日ということで施行したのですが、2015年6月1日から週5日とすることを決めました。

週5日ということは、全ての日をリモート(自宅に限らずどこでも)で仕事が可能ということです。

いままでは、週1回どこで仕事をしても良かったのが(逆にいうと週4日は会社に出勤する)、全ての日に対して仕事をする場所を自分で選択できるということです。

この制度変更の目的。

それは、仕事をする人たちがより主体的になるということです。

この制度を運用するためには、セルフマネジメントメンバー同士の協力が必要になります。

場所はどこにいようが、変わらず成果を出すというセルフマネジメント

そしてチームとして成果を出していくための、メンバー同士の協力、コミュニケーション。

個人の自立(セルフマネジメント)と、チームメンバー同士の協力を自然にやれるようになることを、この制度変更(1.0→2.0)の目的とします。

そして、当初からのBPRDの目的を以下にあげておきます( http://shacho.beproud.jp/entry/2014/04/07/105655 より)

1. 通勤時間を削減し、より仕事に集中できる環境とする

週5回の通勤回数を減らし、首都圏の通勤ラッシュで体力が失われる回数を少なくすることで、体調を維持・回復しやすくなり、より仕事に集中し、価値を生み出すことができるようになる。

2. 会社メンバーの自由時間の増加

BPRDの日は、通勤時間がなくなることにより平日の自由な時間が増える。そのため家族サービスや自分の趣味など、プライベートの時間に多くの時間を使えるようになる。

3. 企業の危機管理レベルのアップ

日頃からリモート環境でのチーム仕事に慣れておくことで、台風など荒天によって交通機関が乱れた時や、インフルエンザの社内での流行時など、会社全体として正常な勤務が困難な時にも、通常に近いかたちで営業できるようになる。

いままで、週1日のBPRDを1年2か月やってきましたが、会社側からもなにかいうこともなく、メンバー間で自然に運用し、成果も出してくれました。

週5日リモート仕事OKというのは会社としてはやや大胆なトライかとおもいますが、きっとこのトライをビープラウドで仕事をしている人たちはあっさりと達成してくれると思います。

会社にどのような変化が現れるのか、楽しみにしています。

※BPRD2.0は私の独断ではなく、ビープラウドで2012年12月から継続的実施されている「BPカイゼン」というメンバー全員が参加できる会社改善プロジェクトによって決定されたものです。会社は「コミュニティとしての会社」という面もあり、顔を合わせてのコミュニケーション、信頼関係の構築という面も重要視した上での決定となっています。

ビープラウドで仕事をする人の基本的価値観

  • 自由であるからこそ、自らをマネジメントし、生産性を高めるための習慣を身につけること
  • よりよい仕事の仕方や働き方を、常識にとらわれず、日々工夫し実践していくこと

ビープラウド経営の基本的価値観

  • 従業員を徹底的に信頼すること

10年目を迎えました&ビープラウドのミッション、ビジョンと価値観

2015年5月23日で、ビープラウドが設立して10年目を迎えました。

今まで関わって頂いたお客様、そしてビープラウドの活動に参画してくれたメンバー、ビープラウドに関わって頂いた方々に深く感謝いたします

私は自分の経営者としての人生を、大きく2つのフェーズに分けようと考えました。

1stフェーズは下積み(修行期)の10年。

2ndフェーズは下積み(修行期)を元に成果を出していく10年です。

会社をつくって丸9年なので、下積みの期間はあと1年あります。

下積み期間が終わっても、やることは変わらないとおもいますが、下積み期間を明確にもつことで、以下の効果があったとおもいます。

  • 結果に一喜一憂せずじっくり取り組めた。うまくいかなくてもあせらず、うまくいっても調子に乗らなかった。
  • 経営者としての実力をつけるための勉強にじっくり取り組めた
  • 無理に目標をつくったり方向づけしたりせず、流れに任せることで、会社の強み、文化、個性が、いるひとたちの個性の中から自然に生まれて来た

特に3番目については昨年末の社内勉強会(BPStyle)で「今までの取り組みの中から自分たちの価値観をはっきりさせて、次の10年の行動につなげて行きましょう」という話を私から会社メンバーにしました。

そのために、今年の1月に開催したBPCamp(山梨の石和温泉への旅行)では、独自に作成した8つのワークシートによる2時間ほどのワークに会社全員で取り組んでもらい、皆の価値観や考えなどを集めさせてもらいました。

そのワークシートを読み直したり、過去の会社の取り組みを思い返したり、自分のブログを全部読み返したり、さまざまな本を読みつつ、会社のミッション、ビジョン、価値観についてあらためて考え、草案(β版)をつくりました。

"草案(β版)を"というのは、これは私がまずつくったものであるからです。

これから1年をかけて、皆の意見(直接聞く意見、間接的に聞く意見、日々の活動などから)を入れつつ、また自分もさらに勉強を重ね、次の10年に向けて育てていきたいと思います。

以下が、草案です。

まず、会社の理念・ミッションから。

ビープラウドの理念・ミッション

IT技術(開発方法・設計技法・実装技術・応用技術およびそれらの活用方法)について日々絶えず研鑽し、 成長すること。 そして、そのたゆまぬ研鑽の結果である高度な知識、技術、創造力を用いて、ITサービス、ITシステム・プロダクトの開発においてアイデアをカタチにすることに誇りをもち、カタチにすることで価値を生み出し、生み出した価値により人を幸せにし、社会に貢献すること

これから仕事をするひとは、自分が身につけた知識・スキルをもとに、世の中に経済的、社会的価値を生み出していきます。知識は価値を生み出す資産です。その資産をもち続けるには、常に謙虚に学び続けることでしょう。

学び、磨き続けた知識は時間をかけた分、奥行き、深みを増していきます。

情報は世の中に行き渡っているとはいえ、知識は自ら学び、自分の中に蓄積し、磨き、身につけていくものです。

そのようにして身につけた知識は、世の中に大きな価値を生み出していく原動力になりますし、これからますますそのような時代になっていきます。

そのように研鑽していくことは、1人1人が自立した人間として生きて行く力をつけることでもあり、そのような自立した人たちが集まっていることは会社の強みにもなります。

ビープラウドはひとりひとりが研鑽した知識をもとにし、それをあわせることで価値を世の中に提供して行くことをミッションとし、社会における存在意義としたいと考えています。

次がビジョンです。これは将来のありたい姿、目指したい姿です。

ビープラウドのビジョン

「世界中のエンジニア・デザイナーが憧れるIT企業」

イメージとしては、エンジニアやデザイナーが、自分の力をのびのびと発揮して仕事ができ、世の中のエンジニアやデザイナーからも、一度は仕事をしてみたい・入りたいと思われるような会社です。仕事をしているひとたちは、ビープラウドで仕事をしていることに誇りを持ち、また自分自身にも誇りをもっていることでしょう。

ビープラウド(BePROUD)という社名もこのようなイメージに由来しています。

shacho.beproud.jp

ミッション、ビジョンの次は、価値観です。

一緒に仕事をする上で、価値観はとても重要ですので、ある程度明確にしておく必要があります。

ジャンルごとにそれぞれ7つずつになりました。

ビープラウドの基本的価値観

  • 楽しく、遊び心、ユーモアがあり、穏やかな環境をよしとする
  • フラットで敬意をもった人間関係をよしとする。そこには偉い人間や上下関係は存在せず、あるのは役割のみである
  • よい環境は与えられるのではなく、自ら参加し、改善し、つくりあげていくこと
  • 自分たちの良い取り組みは、世の中に知らせ、社会に広げ、世界を変えていくこと
  • 良い取り組みは継続すること
  • IT業界・コミュニティに会社として貢献すること
  • 会社は学校である。仕事をつうじて自分をつくり、仕事をつうじてお互いに信頼できる生涯の仲間をつくること

ビープラウドで仕事をする人の基本的価値観

  • 日々、技術に感動し、技術を楽しみ、技術をリスペクトする心をもちつづけること
  • 専門知識・技術・スキルから価値を生み出すイノベーションに取り組むこと
  • プロフェショナルとしての自由意志をもとに、役割に責任をもち、仕事には真摯に没頭して取り組むこと
  • 自由であるからこそ、自らをマネジメントし、生産性を高めるための習慣を身につけること
  • 知識は他の人の知識と協働して成果を生み出す。協力し、教え合い、切磋琢磨することでさらなる価値や知識を生み出すこと
  • よりよい仕事の仕方や働き方を、常識にとらわれず、日々工夫し実践していくこと
  • 知識・技術・経験はアウトプットして共有し、会社そして世の中の形式知・資産とするようにつとめること

ビープラウド経営の基本的価値観

  • 会社を社会から信頼されるひとつの人格を持った存在に育てることを第一義とすること
  • 会社は社会からの預かりものである。会社のために従業員がいるのではなく、従業員のために会社がある。会社のために顧客がいるのではなく、顧客のために会社がある。
  • 従業員が内発的な自由意志のもとに仕事に没頭し、生産性を高められるよう、最大限の投資、サポートをし、良きスポンサーとなること
  • 従業員を徹底的に信頼すること。余計なルールをつくらないこと
  • 会社と従業員は、Win-Winの関係を保つこと
  • 文化はつくるものではなく、生まれるものである
  • 役割を果たしてくれた人に対し報酬を支払うこと

10年目を迎えるビープラウドを、何卒よろしくお願いします。

ゾーンのススメ

ビープラウドのあるメンバーに個別に紹介した書籍をブログでも紹介しておこうとおもう。

ゾーンに入る技術 Forest2545新書

ゾーンに入る技術 Forest2545新書

ゾーンとはスポーツでいうと、例えば元巨人軍の川上哲治さんのように「ボールが止まって見えた」という状態。

仕事でいえば、取り組み始め気づいたら2時間経っていて、1日かかると思っていた仕事が終わってしまったなどの極度の集中状態がもたらす特殊な感覚のことである。

このように、なにごとでも没頭して取り組むことは、人の感覚・気持ちに幸せをもたらすといわれている。

この書籍では、ゾーンに入るための脳の働きを2つ説明している。

1つは認知脳

周りの状況を観察し、認知し、意味付けしていく脳。

もう1つは、ライフスキル脳

周りの状況にとらわれず、自分を集中状態(フロー、ゾーン)に持って行くための脳のはたらきである。

子供のときは、認知脳もライフスキル脳も育ってないので、本能から遊びなどに集中し、没頭し、楽しむことができる。

しかし大人になると、色々な経験をしたり、知識を得ていく中で、周りで起こっていることを認知し始め、認知脳が強くなる。

それにとらわれるほど、自分は揺らぎ、集中・没頭してものごとに取り組むことができなくなる。

その結果、仕事に集中・没頭し得られる楽しみ・幸せ・充実度(=人の本能)が次第に失われていく。

これは、たとえば、以下のようなケースに見られる。

ある会社に転職する。当初は、その会社の状況を認知していないし、周りの人が優秀にみえる。周りがみえていないので、仕事に集中でき、満足感を感じながら仕事をすることができる。しかし、その会社で日々働いていくうちに次第に周りがみえてくる。人の粗(あら)や欠点にも気づき、組織の悪いところもみえてくる。その結果、周りの状況にとらわれはじめ、不満を持ち、文句を言い、言い訳をつくり、環境のせいにして、自分のペースが乱れ、ネガティブになっていく。

これは人が本来持っている認知脳によるものだから仕方がないが、関わる誰にとっても幸せな状況ではない。

では、このようなネガティブな状況に陥らないためにはどうしたらよいだろうか。

ここでだいじなのが、ライフスキル脳である。

ライフスキルとは、周りの状況にとらわれず、集中状態に入ることで、仕事を楽しみ、成果を出し、自ら幸せになっていくための思考、考え方のスキルである。

スキルは「才能」「天性」「人格」などではないので、取り組み次第で誰でも身につけることができる。

書籍で紹介されている、集中するためのライフスキルをまとめておく(自分のためにも)。

  • 自らの内面から湧き出る内発的動機から仕事をすると集中できる

    • 得意よりも好きを大事にして考える
    • 自らやると決める
    • 不安や恐怖から来る外発的動機では集中できない(やらされている感覚では集中できない)
  • 自分に自信をもつと集中できる

    • まずは自分に自信を持つ(自分を信頼する -「Trust Myself」)
    • 「成果が出てはじめて自信が持てる」というのは、認知脳の働き
  • 一生懸命取り組むと集中できる

    • 大人になると「一生懸命取り組むことは、しんどいことだ(だからほどほどに手を抜こう)」と勘違いして力を抜くようになる。
    • 人の本能は、目の前のことに一生懸命取り組み、集中・没頭することで、楽しさと充実感を得て、幸福を感じることができる

      「楽」でないけど「楽しい」という状態(by @tokibito 2011年4月の和歌山高専の講義にて。→ わかやま新報の新聞記事の見出しにもなった。(記事は社内に極秘に保存) )

      楽じゃないけど楽しい道 - ビープラウド社長のブログ

  • 「今を生きる」と集中できる

    • 過去を後悔したり、未来を不安におもうと、集中できない
  • 自分がコントロールできないことは、頭の中から洗い出してしまうと、集中できる(ウォッシュアウト思考)

  • 準備をしておくと集中できる(プリペアリング思考)
  • 多様性・相違点を、容認できると集中できる(ディファレント思考)

    • 認知脳を使って、あれは「正しい」、あれは「誤り」と認知する正誤思考は、その判断にとらわれてしまうので集中できない
  • 周りに与えると集中できる

    • 相手が喜ぶと、自分も喜べる。その結果集中できる
  • 周りに敬意をもつと集中できる(リスペクト思考)

    • リスペクトをすると、思いやりというパワーが生まれ、集中できる。
    • あの人は、リスペクトに値する、あの人は値しないというのは認知脳の働きで、自分の心を相手に依存してしまっている
  • 周りに感謝すると集中できる

    • これは感謝に値する、これは感謝に値しないというのは認知脳の働き。感謝の心がないと人は文句をいい始める。文句を言い始めると集中できない。
  • 人を応援すると集中できる

    • スポーツチームを応援すると、自分にもパワーが生まれるのと同じ原理

ホワイトカラーと呼ばれる知識労働者(特にエンジニア、デザイナーなど)はこの自ら集中していくスキルにより、フローやゾーンに入り、成果を出していく考え方・スキルを身につけることをおすすめしたい。それが自分の人生の幸せ・充実度・成果につながるからである。それがひいては自分の周りをも幸せにすることになるだろう。

一方、会社としては、ビープラウドメンバーが集中し没頭できることで幸せを感じられながら仕事を出来る環境を日々整え、改善していきたいと思う。

演説のススメ

ビープラウドでは、BPStudyという勉強会を毎月開催している。

BPStudyに限らず、IT業界(特にWeb業界)では、勉強会やLT(ライトニングトーク:短時間のプレゼンテーション) が盛んで、個人が自分の考え、ノウハウ、知識を、自社に限らず社外の人に話せる機会が多く用意されている。

個人が話す機会があるということは、IT業界(特にWeb業界)の大きな特徴であると私はおもう。

このような場があるメリットは、以下のものが考えられる。

  • 他社、他のエンジニアの事例、考え方、取り組みを知ることができる
  • 実際のところ、どうなのかということを知ることができる
  • 悪いものは伝わりやすいので、業界内で自浄作用が働きやすい

福沢諭吉の「学問のススメ」の中に「演説のススメ」という一節があるので以下に紹介する。

「演説」というのは、英語で「スピイチ(speech)」といって、大勢の人を集めて説を述べ、席上にて自分の思うところを人に伝える方法である。わが国では、むかしからそのような方法があることを聞かない。

(〜略)

西洋諸国では、この演説が非常に盛んで、(〜略)わずか十数名の人が集まれば、必ずその会について、あるいは会の趣旨について、あるいは平生の持論を、あるいは即席の思いつきを説いて、集まった人に披露する風習がある。

(〜略)

演説をすると、その内容の重要さはひとまずおき、口頭でしゃべるということ事態に、おのずからおもしろみが出てくる。たとえば、文章にすれば、たいして意味がないようなものでも、口で言葉にすれば、理解もしやすく、人の心を動かすものがあるのだ。

Amazon.co.jp: 学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書): 福澤 諭吉, 斎藤 孝: 本 より引用

この一節は、明治7年(1874年)に書かれたものである。

西洋では演説の習慣があるが、日本ではそのような習慣はない。自分の持論を人に伝えるために、演説をしてみてはどうかという趣旨である。

次に演説が、会社に与える影響について考えてみたい。

「タテ社会の人間関係」(1966年出版)という、日本の社会構造を考察した書籍がある。

内容をざっくりと紹介する。

  • 日本の会社は、会社に閉じた「タテ」社会により構成されている。
  • 日本の会社に属する従業員は、職種別組合的な「ヨコ」の同類とのつながりがないから、情報も入らないし、同類の援助も得られない
  • 職種よりも会社という場(枠)が、大きな役割をもっている
  • 「タテ」社会は「家」である。「家族」であり、そのつながりは深い。親分がいて、子分がいる。
  • 論理よりも感情が優先される
  • 追い越しは禁止(良い人、良い考えでも、上の立場を脅かす者は排除される)

「タテ社会」は「タテ」のルールさえ守っていれば、家族の長である親分がその立場を守ってくれるので、ある面では居心地が良く、楽かもしれない。

しかし「タテ社会」では、組織は永続するものという無意識の楽観を前提としている。

年功序列賃金など、将来よいことがあるから今を我慢する。

今を我慢すれば、未来に良いことがあると考えているということは、未来においても組織は続いていくことを前提としている。

その前提のうえに起こるのは平和ぼけである。

平和ぼけに浸かると、日々の関心は社外に対してどのような製品やサービスを提供するかではなく、社内の人間関係に向いていく。

そして自分の立場を守るために、無意識に現状にとどまろうとし、変化を恐れるようになる。

「タテ社会」では、そのルールや人間関係を守っていれば、ムラの中での個人の立場は守られる。しかし、ムラを離れた社会で個人が独立することは難しい

ムラに守られた個人では、会社の寿命が短くなった時代では厳しいし、独立できていない個人ばかりの集まりの会社もなおさら厳しいだろう。

福沢諭吉は「学問のススメ」で、開国したばかりの日本の独立、そしてその土台となる個人の独立の必要性を説いた。

自分の持論を「ヨコ社会」に対して伝え、「タテ社会」から意識的に独立する。

その輪が広がり、話に共感した誰かが行動を起こし、「タテ社会」に影響を与える。

会社が変われば、世の中も変わっていく

そのような変化があってもよいのではないだろうか。

IT業界にはその土壌がある。他業界のさきがけになるかもしれない土壌である。

IT業界の人が、自分の思うことを語り、それを聞くために人があつまる。そして行動のきっかけになる。

BPStudyがそのような場のひとつになればよいとおもう。